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不滅の願い、君への恋  作者: 佐々木六叉路
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第一話

私は、この風景を知っている。


男の子と女の子が2人で遊んでいる。夕方の静かな公園で2人の声が響いている。


すると、少女が忽然(こつぜん)と消えた。先ほどまで少女が乗っていたブランコがまだ動いているのを見て、私は泣きそうだった。


少年は私を見ていった。


「ごめん」


私は答えた。


「好きよ。さようなら」



ぼーっとしたまま両手にコンビニの袋を持って立っていると、俺の顔を覗き込んできた。膝に届きそうなほど長い黒い髪が月の光で照らされて光っている。なにか喋っていたので俺は慌てて琳の方向を見た。


「いま何か言った?」


「ええ。上の空だったから声をかけたのよ。」


「ごめん。俺なんか変だわ。」


「いつもどおりよ。初めて会った時と変わらないわ。それよりなにを聞こうとしたか忘れちゃって・・・」


「そういうところもあるんだね。なんでもできそうな才女って感じなのに。」


「そうね。そう見えるのね。うれしいわ。ところでもう買う物はない?」


嬉しいわ?と思いながら、今思いつく程度の必需品は買ったつもりなので、袋を漁りながら返事をした。


「うん。必要な物のはほとんど買えたかな。」


「なら行きましょ。」


そう言われコンビニの前から歩き出した。しかし会話が続かない。コミュニケーション能力が低いのが相まってか、何を話せばいいのかが分からなかった。それに急に話かけられたからかもしれない。多分そうだと思う。


2日前に高校の入学式があった。そして彼女は横の席、まぁいわゆるお隣さん同士というやつだ。名前を竹ノ神琳(しつのかみりん)と名乗っていた。とても苗字が仰々しいのですぐに覚えていた。「苗字で呼ぶのは長くて大変でしょ?琳でいいわよ。わたしもみさきって呼ぶから。」といって勝手に名前で呼ばれることになった。


「このあとすぐいくの?」


「そうだね。すぐに来いって言われてるし・・・」


「大変ね。いつもお母さまのお世話を?」


「それもあるけど・・・まぁ着替えを持っていくだけだしね。それに母さんに勉強を教えてもらってるんだ。うちの母さんあり得ないくらい天才だから・・・」


「変わらないわね。」


「え?」


「なんでもないわ。ところでスマホ鳴ってるけど大丈夫なのかしら?」


そう言われてスマホをみると12件の不在着信が入っていた。30分おきの自動的にかかってくる電話だが。

そんなこんなであまり続かない会話を何度か繰り返してると自分の家に着いた。両手が塞がっており家のドアがとても開けにくそうにしていたため、開けてあげた。しかし、なぜ俺の生活用品を買いにコンビニに行き、その荷物を琳が持ってくれたのだろうか。ここは男が持つべきではないのか?と考えながら扉を閉め、靴を脱ぎ、リビングに入って行こうとすると琳が少し困ったように聞いてきた。


「ありがとう。お邪魔してもいいのかしら?」


「あぁ。どうぞ。俺はすぐに行かなきゃだから、鍵、玄関にあるから。今度高校であったら返してくれ。」


「え。あのちょっと・・・!」


俺は急いで寝室にある紙袋を取り、家をあとにした。


「みさき!これ忘れて…行っちゃったわ…」


この時母さんの物を落としたが気づかず家を出て行ってしまったのを、バスの中で気づいた。まぁ・・・適当に置いてあった物だしそんな大切な物でもないだろうとおもった。

バスに乗った。母さんが働いているところは研究施設らしく一般人は入れないらしい。証拠に、このバスにも人はいなく、運転手のいない自動運転になっている。窓をみるといつもより大きな月がみえた。こんなに月っておおきかったかな・・・そんなことを思っていると、バスの無機質なアナウンス音声が聞こえてきた。


「次は、終点、国立研究センター原子融合研究室前。車内へのお忘れ物が多くなっております。お忘れ物にご注意ください。」


そしてバスは研究室前の関所についた。僕は立ち上がり、関所にいる警備員のおじさんにこんばんはと、挨拶をして中に入っていく。普通は色々記入したりしなければならないが、来すぎているので顔パスだ。


「久々だなあ!最近来ないから心配しちまったよ!」


そう言うと入館手続きの紙を渡してきた。何度も書いているからスラスラと書くことができる。そして書き終えたものをはいと言いながら渡すと、


「そんじゃ瑞希さんによろしくな!」


そう言われて首に下げる仮のカードを貰った。そろそろ普通のカードを貰ってもいいと思うが家族といえども部外者なので作れないらしい。


中に入ると病院のようなツルツルとした、地面の一本の長い通路が様々な研究室に繋がっている。

母さんの研究室はE-303なので3階に登らなければならない。


エレベーターは入り口の右側に3台あるが、その中の一番右側の1台は「修理中」と書いてある立て看板がぽつんと置いてある。まぁこの研究所は人が少ないくせにエレベーターは3台あるから、1台くらい故障してても困りはしないだろう。


などと考えながらボタンを押すと、エレベーターが1階にちょうどきた。俺はそそくさの乗り込み、3階のボタンを押してすかさず「閉」のボタンを押すとドアを足でガツン!とせき止め、「すいませ〜ん」と言って乗り込んできた。そう母さんではなく、その助手の鮎川 蕾(あゆかわ つぼみ)だ。


「ありゃ…みさきくんじゃない〜!瑞希さんの着替え持って来てくれたの?」


そう言いながら「閉」を押し、エレベーターが動き出した。


「そうです。いつものやつです。」


俺はにこにこしながらそう言った。この人は悪い人ではないのだが、何かを隠してるというか、なにかが引っかかるので幼い頃から苦手だ。


「大変ね〜。あ。瑞希さんは研究室いると思うよ。」


蕾さんがそう言うとチンーといって3階に着いた。


「わかりました。ありがとうございます。」


僕はそう言ってドアが開くと同時にエレベーターを降りた。蕾さんは4階のボタンを押していたから上の階に行ったのだろう。



その時


母さんとその他、研究員と思われる男2人がもう1人の男の研究員と言い争っており、怒号が聞こえてきた。


「魔術が原子レベルで作用するとわかったのは、俺の功績のはずだ!!!なぜ!!!今更になって俺を外すんだ!」


「お、落ち着いて!なぜ…と言われても…上の判断としか…」


母は怒り狂って冷静さを失っている研究員なだめていた。


「お前もか…お前も俺を邪魔するのか…!俺がそんなに邪魔なのか!」


完全に母さんに話しかけるタイミングが悪かった。しかし、研究員が話してる事は俺のいる場所からは聞き取れなかった。


「母さん。」


そう言って俺は母さんに近づいた。

真横でさっきまで怒り狂っていた男が冷静になっていた。


そして


「お前…その手があったか…」


男はそう言うと俺の方を向き、内ポケットに隠し持っていた折り畳みナイフを瞬時に取り出し、俺の目の前から消えた。


母さんの悲鳴が聞こえた。


「きゃあああああああああ。」


俺は何が起こったか分からなかった。目を自分の胸に向けると先程まで男の手にあったナイフが胸に刺さっていた。

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