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8.美奈


土日をはさんでから、月曜日になった。

ななみの風邪は2日間でやっと完治した。


光も本人からメールが来て完治したと聞いた。

昼休みにフミと楽しくお喋りをしていた。


そこに、

一人ちょっとおっとりしたかわいいくて、だいぶ大人しそうな女の子が入ってきた。


彼女は、風早つばさ。去年B組だった人物だ。


「ねえ、フミちゃん」


フミのことを綾海と呼ばない女子がいるなんて、

初めて知った。

フミは別に何のためらいもなく彼女にこう聞いた。


「どうしたの?」


「あ、あの、フミちゃんが弓道部に入るって聞いたの……それで……」


「OK。分かった。ちょっと待ってて」


フミはそう言って、自分の席から一枚紙を持ってきてこう言った。


「はいこれ、入会届けね」


「ありがとう」


風早はそう言って、

フミから紙を貰ってせっせと自分の席に戻った。


ななみは彼女のことが気になったので、フミに聞いた。


「あ~あ、つばさね。幼稚園からずっと一緒で、

ななみより酷い引っ込み症の子。

なれてるあたしにしか基本的に声を掛けてくれないの」


「へぇ~そうなんだ」


ななみはそれを聞いて、風早を見た。

彼女は一人でいつも教室の端に座っている去年の自分とどこか似ているような気がしてきた。


一人ぼっちで誰にも声を掛けられないでいる状況が。それでいて、ずっと休み時間一人ぼっちなのが。


「ねえねえ、フミ」


「なに」


「風早さんも。弓道するなら、仲良くなってたほうがよくない?」


「うん、まあ、そうした方がいいかも」


ななみはそれを聞いて、彼女に声を掛けてみることにした。彼女の横に行って、まず第一声こう掛けてみた。


「もしかして、風早さんも弓道部に入るの?」


「うん」


つばさはそう弱弱しく答えた。

その言葉を聞いてフミがこう言った。


「心配しなくても、大丈夫。あたしの友達だから」


その言葉を聞くと同時に風早は、

ほっと息をついて、ななみの方を向いてこう言った。


「よろしくね」


「よろしく」


ななみはそう彼女に笑顔で答えた。

そして、どことなく気になったので、こう言った。


「何で、入部するの?」


 その答えは直に帰ってきた。


「フミちゃんが入るってきいたから、入ることにしたの」


それを聞いたフミはこう言った。


「つばさ。もしかして、本当にそれが理由なの?」


「うん」


何の曇りもなく風早はそう答えた。

それを聞いて、フミはこう言った。


「ならいいけど、またか。つばさ、改めてよろしくね」


「うん」


つばさはそう元気よく笑みを浮かべて答えた。


「あ、そうだ今日。一応新入部員の確認するらしいから、放課後中学校職員室に集合だって」


フミはそう思い出したかのように言った。ななみはそのことをはじめて知った。

なぜ、フミがこんなことを知っているのだろうかと疑問に思った。


「あと、ななみとつばさには先生のメアド教後で送っとくね」


ななみはそれを聞いた後気になったことをフミに聞いた。


「なんで、フミがいろいろ知ってるの?」


フミはそれを聞いて、こう答えた。


「なんだか、勝ってな話だけど、先生が……

『なんだか、一番しっかりしてそう』

だからって、あたしを部長にしたのよ」


「絵里先生らしい……」


ななみはフミの言葉を聞いて、

どことなく納得できてそう言葉を漏らした。


中学生の時、クラス委員を選ぶ際先生が勝手に、きちんとしてそうな子をクラス委員に選んでいたからだ。


そのことをフミに言うと、横にいたつばさがこう言った。


「先生すごい。フミちゃんは大抜擢だよ」


つばさの言葉を聞いて、フミはこう軽く照れくさそうな仕草をして若干うれしさも隠しながら、こう言った。


「ま、面倒なんだけどね……あはは」


「うれしがってるじゃん。フミ」


ななみはそう言った。

フミはそれを聞いて、ちょっぴり照れくさそうに、ななみをつついた。


「よろこんでなぁ~い」


フミはそう言った。そのやり取りを見ていたつばさはくすりと笑った。


ーーーー


放課後、つばさを加えて中学校職員室に行くと、

すでにあの気の弱そうなあの一年生が一年生がいた。


「あ、あの先輩方……葉山先生見ませんでした?」


「うんうん。みてないよ」


そうフミが言った瞬間だった。

ダンボール箱を二つ重ね運んでくる人がやってきた。


ダンボールで顔が隠れて分からなかったが、

多分女性で足取りはよたよたとしていた。


ななみはそれを見てダンボールを持っている人の近くに来て、こう言った。


「あの、手伝いますよ」


そう言って、ダンボールを持った。

すると絵里先生の声が聞こえてきた。


「あ、やっぱり。ななみぃ~は気がきくね。

ここで置くからゆっくり降ろしてね」


ダンボールをゆっくり降ろした。

そして先生は、集まった人数を見て、こう言った。


「え~ショコタン。一年生は一人だけ」


「はい……この学校に知り合いがいなくて……

ぜんぜん声掛けられませんでした……」


そう、一年のショコタンと呼ばれた彼女はそう答えた。


それを聞いて、先生はため息をついた。

そしてこう言った。


「しょうがないか……

でも、大丈夫。ショコタン。この、ななみぃはオナチュウだから」


 それを聞いて、つばさが首を傾げた。


「オナチュウ?」


つばさの扱いに慣れたフミがこう説明を加えた。


「あ~。あれよ。同じ中学校卒てことよ」


「なるほど」


つばさはそうフンワリとしたような声で答えて納得した。

ななみは、

ショコタンと呼ばれた生徒を見てどこかで見たような気がしてきた。


 ショコタンは一息ついて、ななみの方を向いてこう言った。


「あ、あの……私。海老田祥子です……いろいろお願いします……ななみ先輩」


「せ、先輩……」


ななみはそれを聞いて、

ちょっとドット胸に何か刺さるように感じた。


今まで呼ばれたこともなかったからだ。

自分でもびっくりしてしまった。


でも、

これはきっと必然的にこうなるのだろうと心の中でとめた。


「よろしくね。ショコタン」


ななみがそういうと、ショコタンは笑みを見えた。

それを見ていた。絵里先生がこう言った。


「よかったね。ショコタン。これで第一歩進んだね」


先生はそう言って、ななみとショコタンの間に入り込んで、ショコタンの手を掴んでなぜか、斜め上を指差した。


「もっと上、めざすわよ」


それを見ていた、

フミがオーバーな先生の行動にこう釘を刺した。


「先生。身内で盛り上がらないでください」


先生はその言葉を聞いて、こ言った。


「ごめん、ごめん。フミ。

 じゃあ、部員は学校指定の人数はぎりぎりそろったことだし。みんな、入部届けは持ってきた。


まだなら、あしたまでに……場所もなんだし。教室借りてるから、そこでミーティングでもしよう」


先生はそう言って、ダンボール二つを持っていくように指示して、

つばさとショコタン。フミとななみという人数分けになって、ダンボールを先生が借りた教室まで行った。


教室は、新館にあるボクシングジムの隣の教室だった。


ダンボールを教室において、

4人はぱっと固まってイスに座った。隣からは、しきりにボクシング部の声が聞こえていた。


「えっと、一応。人数は確認したし。みんな、入部届け出して」


そう言ったら、

フミがすっと四枚の入部届けを先生に手渡した。


「手際がいいじゃん。フミ。

じゃあ……フミにななみにショコタンにつばさね……」


 先生はそう言って入部届けを教卓の上において、

自己紹介をした。


「改めての人も、いるかもしれないけど。

あたし、葉山絵里がこの今から発足する。


春ノ宮学園高校弓道部の顧問で先生ね。みんなよろしく」


一通り、ミーティングが終わって、

4人は一緒に教室から出て、帰り道まで一緒だった。


帰りはショコタンこと、

祥子と一緒に帰ることになった。


フミとつばさから別れてからななみは、

ポケットから携帯電話がないのに気が着いた。


ミーティングのときみんなの連絡先を交換して、教室においてきたのだろう。


ななみは、それをショコタンに言うと。


「先輩。この後ちょっと用事があるので。

先に帰りますから。取りに戻っていいですよ」


ななみはそれを聞いて、こう一言いった。


「ごめね。じゃあ。また今度」


ななみはそう言って、足を学校に向けて戻り始めた。


校舎にはもう、紅色に染まっていて急いでる途中、

校舎の端っこでボクシングトランクスを着て、

手にはまだバンテージを巻いている光がいた。


彼は笑顔で一人の女生徒とお喋りをしていた。

その女生徒は美奈だった。


ななみは、きっと幼馴染で仲がいいのだろうと思って、

二人のことに見入ることなく携帯を取りに行った。


携帯は予想どおり、机の上においてあった

らしくそれを絵里先生が気づいて預かっていたらしい。


先生から携帯を受け取ってからななみは学校から帰ることにした。


校舎から出て、

そっとまだ光はいるのだろうかなと思って、

人気のない校舎の端の方を見るとそこには美奈と一緒にまだ光はいた。


2人の雰囲気は今さっきとはどこか違っていて、

緊張感みたいなものが張り詰めていた。


美奈が光の方にそっと顔を近づけた。

そして、彼の唇に美奈の唇が当たった。


その瞬間、ななみははっと息を呑んだ。


舐めるように寒気が通り過ぎて、

背筋を凍らせ積み重ねたものが一気に崩れていくかのように手に持っていた通学カバンが手からすべり落ちて、音をたてると共に時間が止まった。


そして、目の前にいる2人だけが残って、それ以外は一瞬で真っ白になった。


ななみは、その場から逃げるかのように走り出した。

これ以上見たくなかったからだ。


「う、海菜!」


光のそんな声が聞こえた気がした。


でも、ななみは走った。今はもう何も考えたくなかった。

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