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 第2話  いざ街へ

 半日ほど歩いただろうか……。

 しばらく森の中をさまよっている。

 体力は持つものの空腹が酷くなってきた。


 最寄りの街目指してんだけど遠いな。

 日も暮れたしそろそろ休憩したいが、ここは安全なのだろうか。


 そんなことを思案していると、前方からガサガサと葉音が近づいてきた。

 なんか来てんな。

 しかも相当速い。

 すると大型の狼が猛スピードで近づいてきた。




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種族:ダイアウルフ

rank:D

【素早い上に力が強い為、近距離での対処が難しい。】

【毛皮や骨から武具が作れる他、食糧にもなり、市場では比較的高価で素材の取引が行われている。】

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 森の中だと余計に素早く感じる。


「〖アイテムボックス〗」


 俺はそう唱え、一振りの剣を取り出した。


 左側に素早く1歩引くと、突っ込んできたダイアウルフはよろけた。


 速いが動きは単純だ。


 俺はその隙に首目掛けて真っ直ぐ剣を振り下ろした。

 

 防御も大したことはねーな。


 骨が砕けるような音と共にダイアウルフの首は切り落とされ、動かなくなった。


 よっしゃ、仕留めた。

 だが喜びは束の間、左右から再びダイアウルフが一体づつ現れた。


 冒険者も楽じゃねーんだな……。

 

 俺は左側のダイアウルフに開いた右手を向ける。


 「〖ファイアスピア〗」


 そう唱えると右手の前で炎が凝縮され、小さな槍の形を模し、直後にダイアウルフの脳天を貫通した。


 ワンパンか……。

 やっぱりこいつは魔法に弱いのか。

 

 あと一体……。


 気を引き締め、後ろを見るとダイアウルフが苦しそうに唸っていた。


 ……ん?

 上を見ると、クロハが真っ黒な霧のようなものを放出していた。

 霧はゆっくりとダイアウルフを包み込み、やがてピタリと動かなくなった。


 〖パラライズ〗で麻痺させ、〖デス〗で即死させるクロハのお得意コンボだ。

 どちらも滅多に当たらない魔法だが、クロハの状態異常はなかなかの命中率を誇る。


「流石だな!」


 だけどやっぱり見た目とのギャップが怖い……。


「ホホーッ」


 剣は持ち歩いといた方が良さそうだな。

 俺は剣をそっと置き、その隣に座った。




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クレイモア

rank:B

【古来から使われていたとされる今は珍しい剣】

【比較的刀身が長く、重い。その重さから放たれる一撃は絶大な威力を誇る。】

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 クレイモアは俺が帝国の倉庫を漁って見つけた剣を鍛冶屋に修復してもらったものだ。

 まさかこんなに良い武器になるとは思わなかった。

 あれ以来バロンも倉庫漁りに行ってたっけ。

 結局なんもなかったらしいけど……。



 さてと、携帯食料もあるけどせっかくだからダイアウルフの肉を焼こう。

 俺は慣れないながらもダイアウルフを解体し、毛皮と骨はアイテムボックスに収納した。


 アイテムボックスは異空間に物を収納できる便利なスキルだ。

 術者によって容量は異なるが俺のは5㎥くらい……小さな小屋が1軒入る程度だな。



 俺は焼けたダイアウルフの肉を食す。

 肉食だからか臭みは少々あるが結構美味いなこれ。


 横に目をやるとクロハも刻んだ肉を嬉しそうに啄んでいる。


 ここで寝るのは少々危険だな。

 寝れないのは惜しいが、このまま街まで直行しよう。

 クロハも夜行性だし行けるだろ。

 

 そうして、俺はひたすらに歩き続けた。







 夜が明ける頃、ようやく街が見えてきた。

 

 流石に疲れたけど、この時間まだ店とか空いてねーだろうな。


 悲観しながら街に入ろうとすると警備らしき男に声をかけられた。

 

「止まれ! 肩に乗せているのは魔物だろう」


 びっくりした。

 こんな時間でも警備はしっかりしてんだな。


「はい、俺テイマーなんです」


「テイマーなのによく一人で森を抜けて来られたな。まあいい、身分証を見せろ。テイマーなら証拠が必要だ」


 なるほど、確かにテイムされてない魔物が連れてこられたら大変だもんな。


 だがここで事件発生だ。俺はテイマーとしての身分証は帝国のものしか持っていない。

 多分これを見せても街に入れてもらえるどころか追い返されるだろう。


 やらかした……え、これ詰んだかな。



「あの、すみません。身分証明書を魔物に取られてしまって……。」


 ダメ元で嘘をつく。


「そうか、なら街には入れられないな」


 最悪だ。

 けどここで引き下がったらまた一睡もせずに歩き続けることになる。


「そこをなんとか、ここに来るのに疲弊し切ってしまって、このままだと俺、死んでしまいます!」


「はぁ……お前が今どういう状況であろうとこれは街の規則だ! 悪いが諦めてくれ。」


 しばらく警備と揉めていると街の中からボロボロの少年が今にも倒れそうな状態で近づいてきた。



「助……け……ルネが……」


 少年はそう言ってその場にぐったりと倒れた。


「おい、大丈夫か! しっかりしろ!」


 警備は急いで駆けつける


「〖ハイキュア〗」


 俺が少年に回復魔法をかけると、傷はほとんど癒え、顔色もかなりマシになった。

 どうやら酷い致命傷を負っていたわけでは無さそうだ。


「お前その回復魔法……本当にテイマーなのか? まぁいい、感謝する。しばらくすれば意識も戻るだろう」

 

 警備はそう言いながら少年に自身の上着を掛けた。


 警備には余計に疑われてしまったが、とにかく回復してよかった。


 ──と、少年は予想より早く意識を取り戻した。


「ルネを! ルネを助けてください! お願いします! お礼は必ずしますので!」

 

 少年は涙を流しながら必死に頭を下げてきた。


「落ち着け! 力になれるかもしれねぇから」


 警備はそう言って鎮静を促す。


「とにかく話を聞いてあげましょう」


 俺と警備は少年の頼みを聞くことにした。




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