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史実編 39話



既に信澄らのもとには、反乱軍が家康を糾弾する書状が届けられており、家康に呼び出された際も、そのことが理由であると予想できた。


「織田左近衛少将、参りました」


信澄がそう言って家康の陣に入ると、既に池田輝政や浅野幸長ら有力な大名たちが深刻な表情で並んでいた。


「内府殿、即座に我々も兵を率いて西国へ向かいます」


信澄がそう言うと、池田輝政らも頷いた。


「忝ない。こちらからも下野守(松平忠吉)をつける。既に福島殿らには井伊・本多をつけており、徳川の先陣と致す」


「内府様はいつご出馬なされまするか?」


浅野幸長が家康の方を見て尋ねると、


「上杉の動きを見て出陣致す。江戸中納言に本隊を任せ、東山道を進ませる。ワシは東海道を進む」


と家康が答える。


「承知致した!この山内対馬守、内府様に掛川城を差し出しまする!」


「なっ、堀尾信濃守も同じく!」


どうも堀尾忠氏は出し抜かれたようだった。


「それでは各々、よろしくお願い致す!」


家康がそう言うと、信澄も含めた諸将が立ち上がり、それに応えるように刀を掲げた。


諸将が解散すると、信澄は自陣へと戻った。


「東山道を江戸中納言殿が進まれる。いつでも迎えられるように用意しておけ。庄九郎(秀澄)は中納言殿に随伴せよ。ワシは七千を率いて東海道を進む!」


東進軍の第2陣の中で最大の兵力を擁する織田勢は、池田勢など三万とともに東海道を進み、清洲城へと到着した。既に清洲城には福島正則、細川忠興、黒田長政ら諸将が集まっていた。


「おい、総大将の下野守はどこだ!」


到着するなり、福島正則が怒鳴りかかってきた。


「下野守殿は病気のため一旦ご帰国なされたと申しておるではありませぬか!」


と、横にいた井伊直政が言うが、正則はそれを無視し、今にも飛びかかりそうな勢いだった。


「まさか我らを信用しておらぬのでは無かろうな!」

「人質まで差し出しておるのだぞ!」


黒田長政や細川忠興も詰め寄ってくる。


「落ち着かれよ。内府様は既に江戸を出立されておる。まずは我らで岐阜城を落とし、手柄をあげようではないか」


藤堂高虎が仲裁に入る。


「岐阜城攻めならばワシに任せよ。かつて治めておったのでな」


待ってましたと言わんばかりに、池田輝政が前に出る。既に家康から命じられていたかのような振る舞いだった。


「ならばワシは竹ヶ鼻城を落とし、織田勢の動きを引き止める。それで良かろう」


そう言って正則はさっさと軍議の席を後にした。


「義父(家康)上より、福島が主導権を握らぬようにせよと命じられておりまする。七兵衛様も何卒御力添えを……」


輝政が信澄に耳打ちすると、信澄は静かに頷いた。

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