史実編 37話
家康の命令を受けて先に江戸に軍勢を率いて入った信澄は同じく江戸に到着した森忠政と久しぶりに再開した。
「川中島への復帰、祝着至極にござる」
「痛み入りまする。それをダシに石田治部に豊臣に忠義を尽くすように言われましたが奉行を下ろされた男に何ができると追い払ってやりましたわ」
「ふむ……治部がまた動き始めたか。てっきり加藤主計かと思うていたが」
「何せ主計の仲間となりそうな連中はことごとく上杉攻めに動員されましたからな。内府様もお分かりなのでしょう」
「なるほどのう」
「真田も佐竹も大人しく内府様に従うようです。此度の戦はあっさりと片付くでしょう」
「まあな。ウチの家中にも徳川の家中にもかつて上杉と刃を交えた連中はかなりいる。福島大夫なども朝鮮に出兵出来なかったゆえにやる気に満ち溢れておるだろう」
家康が清正の盟友として警戒していた福島正則は率先して上杉征伐に参加し先鋒を志願、同じく加藤派閥と見られた細川忠興や黒田長政も同じく先鋒を志願していた。
「あとは加藤一派と見なされぬように必死なのでしょう。毛利や宇喜多も出陣するそうですし」
相槌を打ちながら信澄は同い年の西国の覇者の顔を思い浮かべるのだった。
そして大坂のとある屋敷。
その西国の覇者たる毛利輝元を囲むのは安国寺恵瓊、増田長盛、長束正家、大谷吉継である。
「もしもの時があればお前が責任を取るのだな?」
輝元は恵瓊の方を睨みつけて確認する。
「はっ、吉川殿にもそのように伝えておきました。 それならば構わぬと」
「もはや徳川の専横を治められるのは毛利様しか居られませぬ。何卒、お願い申し上げまする」
長盛ら奉行衆がそう言って頭を下げる。
「あいわかった。この毛利中納言輝元、秀頼君を操り天下を乗っ取ろうとする徳川家康とその徒党を成敗してくれるわ。直ぐに準備を致せ!」
そう言って輝元が立ち上がる。
戦国最大の戦の始まりであった。




