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史実編 21話

翌年の正月、秀吉が新しく作った大坂城が完成したのでそのお祝いに七兵衛を始めとする武将達は呼ばれた。


「デケェ……」


あまりにも巨大な天守閣はかつて信澄自信が治めた大坂と同じモノとは思えなかった。


「あの安土城よりも巨大にございますな。羽柴様は考える規模が違いますな」


と堀秀政、もはや秀吉の家臣のような振る舞いである。


「伯父上が2年もかけたものをここまで短期間の間に作り上げるとは誠に恐ろしい。これは明智殿もオヤジも叶うはずもない」


「む、あれは堺の千宗易殿に今井宗久殿では?」


堀久が指さす先には堺の豪商や茶人たちがズラズラと城に入っていた。


「堺を掌握したか。もう羽柴殿の天下は決まったも同然だな。"堀殿"」


「そっ、そうですな。"津田殿"」


天下の主権が秀吉に移行した以上、七兵衛は織田一門ではなく羽柴政権における大名の一人となり堀久とは同格……という程でもないが以前ほどの関係ではなくなっている。


「おお、津田殿に堀殿。お待ちしておりましたぞ」


そう言って2人を出迎えたのは羽柴秀長。

秀吉の弟であり今や天下の2番手である。


「こいち……美濃守殿。わざわざのお出迎え、忝ない」


信澄が頭を下げると堀久や従者も続く。


「兄上もお2人をお待ちです。ささ、こちらへ」


秀長に案内されるがままに2人は城に入った。

信澄時代の防衛拠点としての機能は無く豪華絢爛で秀吉の権力を誇示するための存在の方が大きかった。


「あれは毛利家の使者ですかな?」


信澄が指さす男の背に書かれた家紋は毛利家の物だった。


「ええ。これまでに上杉や宇喜多、大友などからも祝賀の使者が来ております」


「まさに信長公並かそれ以上ですな。美濃守様も大変でしょう」


堀久が感心しながら言う。


「ええ、先程も信雄様に安土から退去していただく説得をするので大変でございました。当主を追い出すとは何事かと」


「なら俺が説得すれば良かったですな。俺なら彼奴とは古い付き合いですから」


「いえいえ、津田殿のお手を煩わせる訳には行きませぬ。されど戦になるやもしれませぬ」


「また戦かぁ……」


転封やら加増やらで丹波や坂本は未だに安定しておらず戦ばかりで信澄は疲れていた。


「丹波は安定しませぬか?」


それに気づいたのか秀長が聞く。


「はっ、お恥ずかしい限りでございます」


「必要であれば当家のものをお貸し致しましょう」


そう言って出てきたのは見慣れた巨漢であった。


「げっ……高虎!?」


そう、パワハラしまくったせいで出奔した藤堂高虎である。


「ご無沙汰しております。お噂はかねがね」


「あー、そうかい。まあ元気そうでよかったよ、アハハ」


瓦解した中央政権の落し物、片や新たに生まれた中央政権の重鎮。

この数奇な運命のふたりが今後交わり、天下を変えていくのはまた別のお話。

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