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史実編 18話

向こうえたった

度重なる戦で廃れた岐阜城は信長の築いた栄華さは既になく、防衛拠点としての機能も欠落していた。

そのため信孝は野戦を選択し四千の兵を率いて長良川の東に陣を敷いた。

対して信澄は蒲生氏郷の兵を加えた五千で西側に布陣した。


「良いか皆の者!信孝めは織田家の取り決めに反抗し柴田勝家と滝川一益を誑かし此度の騒乱を引き起こした!あの男は武士として死なせる訳にはいかぬッッ!何としても討ち取るのだッッ!」


信澄の鼓舞に兵達が咆哮を上げる。

史実に無い戦に少し疑問を抱きながらも信澄は何としても勝つと采配を握った。


「全軍、かかれぃッッ!」


五千の兵が一斉に川を渡る。

信孝が奪ったばかりで川底に仕掛けや罠がないことを確信していた兵たちは冬の長良川をかき分けて真っ直ぐに信孝の木瓜紋を目指した。


逆に柴田軍敗北を聞き動揺している信孝勢は浮き足立っていた。


「殿!このままでは殿のお命も危のうございます!ここは1度撤退し城に籠り徳川殿に救援を求むべきかと!」


「ふざけるな!俺があの木偶の坊に背中を見せるなど出来るはずがない。俺に着いてこい!こうなれば斬り違えてでも七兵衛を討つ!」


そう言って薙刀を手にした信孝だが周りのものは動こうとしない。


「なっ、何故動かぬ!何故動かぬのだッ!まさか敵に恐れを成すのか!」


「違いまする!ここで殿に無駄死して頂きたくないのです!ワシが身代わりになるゆえお逃げくだされ!」


そう言うと幸田孝之は鞭で信孝の馬を叩くと逆に自分が槍を構え突撃し始めた。

それに続くように信孝の馬廻りも続く。

信孝は喚きながらも馬に従って岐阜城に敗走するしか無かった。


「おお、津田様!あれは信孝めの片腕の幸田孝之にございますぞ!」


対岸では迫り来る幸田を指さして蒲生氏郷が七兵衛に説明する。


「無駄な足掻きだ!鉄砲隊、奴らを撃て!」


信澄が命じると鉄砲隊が一斉に幸田に鉛玉を喰らわす。


「ぐわっっ!三七様っっっ……どうかご無事でッッ!」


銃弾を受けた幸田が崩れ落ち、次々と武者たちも落馬していく。


「しかし幸田が突撃したということは恐らく……」


「ああ、三七は逃げたな。全軍!この戦は俺たちの勝ちだ!岐阜に進むぞ!勝どきはまだあげるな!」


信澄がそう言うと津田勢は一斉に岐阜に向かって進み始めた。

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