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5話

「しかしながら私だけでは力不足でしょう。浅井家にいた頃に親しくしていた者がおるので家臣にしてみては如何ですか?」


「おお、それは良いな。なんという男じゃ?」


「大谷平馬という男です。今は長浜の近くに住んでいると思いますが。」


「長浜と言うとサルの城か。行ってみるか。」


大谷平馬って聞いたことないな?大谷……大谷……。

俺は信成から貰った本をめくる。

大谷吉継……こいつか?

敦賀五万石で秀吉がその才能を絶賛したってか。

なかなかいい人材だな。

俺はそう思いながら高虎と共に長浜城下に到着した。


「むっ、何者だ。」


近くにいた衛兵がこちらを睨みつけてくる。


「無礼者、こちらは織田信長様の甥の津田信澄様である。頭が高いぞ!」


高虎が叱責する。


「こっ、これは飛んだご無礼を!直ぐに羽柴様に持て成すように……。」


「いや、それには及ばぬ。別にサルに用事はない。」


俺はそう言うと高虎の案内で大谷吉継の家の前に来た。


「んー、寂れた家だなぁ。」


「父親が浅井家の家臣で滅びたあとはかなり苦労しているようです。」


「まあ雇ってやるか。入るぞ!」


そう言って俺が家の戸を開ける。


「おい、いるか平馬!俺だ、与右衛門だ!」


高虎が大声をあげると華奢な体型の青年が出てきた。


「なんだ与右衛門。そちらの御人は?」


青年は目を擦りながら言う。


「また寝ていたのか平馬。お前を召抱えたいというお方が来られた。」


「お前の主君の磯野殿か?悪いが浅井の家臣とはもう……。」


「違う、こちらは織田家御一門の津田七兵衛様だ。」


「織田の……。何故私を?」


「高虎1人だと寂しそうだし俺も寂しいからな。年齢の近いやつの方が良いだろ?」


「なるほど……単純ですがそういうのは嫌いではありませぬ。」


「そうか、なら良かった。屋敷も用意するしいずれは城持ちにしてやる。どうだ?」


「私のような浪人を……どうぞよろしくお願いします。」


よしっ!大谷吉継登用成功!

とりあえずはいい感じだな。

すると聞き覚えのあるうるさい声が聞こえた来た。


「あーっ!七兵衛様!ここに来られるなら一言いってくださればよかったのに!」


そう言ってサル……羽柴秀吉が突っ込んできた。


「お前に会うと耳が痛くなるから言わなかったのに!あの雑兵め!」


「まあまあ良いではないですか!それより今から鷹狩に行くのです!ご一緒にどうですか?」


鷹狩か……俺もやりたいわ。


「わかった、行こう。その代わりに鷹はお前の借りるぞ。」


「ははっ!お荷物お持ち致します!」


相変わらず腰の低い男だ。

だがその腹の底には煮えたぎる野心が見える。

いや、未来知ってるからそりゃそうだな。


「こちらのお2人が七兵衛様の家臣でございますか?なかなか良い目をしておりますなぁ。」


「ああ、そうだろう。そういえばお前のところの軍師……竹中……。」


「半兵衛ですな、今は体調を崩して寝込んでおります。どうも私の家臣は変人が多いのですよ。」


おめーもだよ!


秀吉と雑談しながら鷹狩をした俺はとある寺に立ち寄った。


「おお、住職。今日は津田七兵衛様がお越しなのじゃ。すぐに茶を頼む。」


こいつ、寺と茶店を勘違いしている……!?

バカなのか賢いのか分からないな本当に。

直ぐに住職の指示を受けた子供がお茶を持ってきた。


「んー、いい加減だな。中々美味いでは無いか。」


俺は喉も乾いていたのもあって一気に飲み干す。


「すまんが住職。もう一杯くれ。」


2杯目は少し熱く量も少ない。


「うーん、もう一杯!」


3杯目はとても熱く量も少ない。


「なあ高虎。これいい湯加減だな。」


「確かに……入れてるのはあの子供でしょうか?」


高虎がそう言ってお茶を組む子供を指さす。


「子供って言っても私くらいの年齢ですな。これは我らの舌に良いようにしておるのでは?」


「む、どういう事だ吉継。」


「ですから1杯目は喉の乾いている我らのためにぬるく多めの茶を、2杯目は少し熱く少なめ、3杯目はかなり熱くほんの僅か。よく考えたものですな。」


「なるほど!俺の小姓にしよう!おい、住職。この小僧連れて帰って良いか?」


「はっ?ええ、よろしいですが。佐吉、如何する?」


佐吉と呼ばれた少年は顔色ひとつ変えずに。


「是非、是非、お仕えさせて頂きとうございます。」


「そうか、それは良い。名はなんと申す?」


「石田佐吉三成でございます。」


「佐吉だな。これからよろしく頼むぞ。」


あれ?こいつ、サルの側近だったっけ?

とりあえず調べてみるか。

ってことで調べてみて衝撃を受けた。

天下を二分して徳川家康と戦っただと!?

こいつキチガイだろ……。

知らず知らずのうちにとんでもないのを家臣にしてしまったようだ。

とはいえ優秀なのは事実なのでまあそれなりに重用してやるか。


ということで津田信澄軍団が完成したので俺は早速それを義父上に報告した。


「おお、家臣を2人も……。さすがは七兵衛殿でござる。」


「全ては義父上が与右衛門を下さったからです。忝のうございます。」


俺の役に立てて叔父上も嬉しそうだった。


「そういえば聞きましたか。越前で大規模な一向一揆が起き守護代の桂田殿が討たれたそうです。」


来たな、越前一向一揆。


「それは大変です。すぐに伯父上に報告し救援に向かいましょう。」


俺の真の初陣だ。

覚悟しておけ農民共め……。

俺は拳を握りしめた。

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