45話
これは史実を元にしたフィクション作品なのでどうしようが私の勝手です。
はい。
美濃岐阜城 徳川家康
尾張はいとも容易く落ちた。
北畠侍従はあっという間に逃亡しついに岐阜城にも落城の時が訪れた。
縄に縛られて連れてこられた神戸侍従を見た時、ワシはあまりの情けなさに涙すら出そうになった。
「お主が三郎様の……三郎様の息子なのか……?」
「そうだっ!我こそは、織田前右府のっ!」
「黙れぃっ!キサマ如きが三郎様の息子を名乗るなぁッ!」
ワシは咄嗟に神戸を殴り飛ばす。
こんな奴があの偉大なる三郎様の息子など、認めぬ。ワシは断じて認めぬぞッ!
ワシはさらに神戸……いや蛆虫の胸ぐらを掴み何度も何度も拳を喰らわせた。
顔中が血で見えなくなるまで殴り続けた。
ワシの拳は真っ赤に染まり周りのものの顔は青ざめている。
「殿、この者如何致しますか?」
恐る恐る小五郎が聞いてくる。
我に帰ったワシは1度考えた。
殺すべきか許すべきか……。いや、ワシ以外に三郎様の跡を継ぐものはいない。
死んでもらおう。
「首を斬り捨てよ。このような下劣な者を二度と見たくはない。」
こうして神戸侍従は斬首された。
普通の者なら恩人の息子を殺すなど言語道断と言うだろう。
だがワシからすれば偉大なる三郎様のご尊顔に泥を塗るような神戸侍従の方が言語道断である。
息子といえば6年前のことを思い出す。
三郎様からワシの妻と息子が武田に内通していると聞いた時、ワシは迷わず2人を差し出した。
三郎様が武田と戦えと命じられればワシは迷わず戦ったし三郎様のためなら近江でも越前でもどこへでも向かった。
その結果がこれかッ!
暗君岐阜中将に頭を垂れるなどやはり出来ぬッ!
ワシは再度そう思うのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
大垣城 北条軍本陣
徳川勢と並び今回の東国連合軍の主翼を担う北条軍は四万の大軍で大垣城を包囲していた。
今回の戦には前当主の北条氏政は出陣しておらず北条氏直が関東の国衆などを率いて参陣している。
「おーじーうえェェ。まだ城は落ちませなんだァ?」
「はっ。もうまもなくかと。」
氏直はイライラしていた。
それにただ答えるだけの叔父の氏照。
氏直という男はそれなりに人柄は良いのだがイライラするとしゃべり方が父親に似てウザったらしくなるのだ。
「それにしぃてぇもォッ。この程度の小城に篭もる敵はなんなのだァっ!」
「城に篭もる稲葉一鉄は天下に聞こえし名将でござる。なかなか攻めるのには時間がかかるかと……。」
「それではダメなのは分かっておろうが!これからの新たなる秩序の世で北条は東国の支配者として義父上を補佐するのだぞッ!」
義父上とは家康の事である。
同盟の際に家康の娘を氏直は妻にしている。
そのため来る新たな秩序の中で北条家が重要な役に着くのは誰が見ても明らかでありだからこそ氏直にはとんでもない重圧がかかっている。
「若。稲葉一鉄は一見名将のように見えるかもしれませんがコロコロと主君を変えております。特に長良川の戦でのアレは武士として誇れるものではないでしょうなぁ。」
氏照の弟の氏邦が言う。
「なーらーばーァ。藤田の叔父上は何か策があるのか?」
「簡単ですよ。城に毒を流したと噂を流して……いや内通者に流させて脅せば降伏しますよ。」
「しかしそれは武士として有るまじきことであろうッ!」
氏輝が突っかかる。
「兄貴、もはやそのような悠長なことを言ってられる状況ではないのです。わかるでしょ?」
氏邦がサッと氏直の方を見ると氏照も察した。
「分かりました。松田と大道寺に命じてやらせましょう。」
「よォっしっ!これで大垣は我らの物じゃぁッ!」
その後見事に大垣は落ちた。
命を惜しんだ稲葉一鉄は家康に姉川での恩から助命を懇願し家康もそれを許した。
しかし武士としての身分は失われ細々と地元に帰るのだった。
とはいえその道中で病死し一族は織田家への義から近江へと足を走らせるのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
織田軍は北陸の軍勢をオヤジを大将とした五万、上様が大将の十万、明智殿とサルの率いる七万が三方向より分かれて出陣した。
俺は上様の軍勢に一万八千を率いて参加した。
関ヶ原というのは確か信成に貰った本によると天下分け目の最終決戦が行われた場所であり松尾山が重要らしい。
まあ今の織田家が三成の時のように裏切りやら不参戦が起きるとは思えないが……。
ともかく俺たちが布陣すべき場所は恐らく松尾山なので関ヶ原に到着した俺たちは松尾山に布陣した。
「何か不思議な感じがするな。」
吉継がぼそっと言う。
「ああ、しかし勝てる予感がするぞ。」
と、高虎。
逆に三成は冷や汗を流して震えている。
「どうした、三成?」
「殿、何やらすごくこの地域が俺には恐ろしく感じるのです。」
「ここにいるだけで裏切りたくなりますな。」
と、信兼。
「はははッーって。冗談言うなよー。」
一同が笑う中、源次郎が転がり込んできた。
「殿、徳川の使者が参りましたッ!」
「なにぃっ!?」
全員がずっこけそうになるのだった。




