43話
ここから新章です。
浜松城 徳川家康
足利義昭は討たれ西国は織田家に平定された。
信長公は暗殺されたという噂流れて3年近く経つがあの方あっさりと殺されるとは思えない……。
恐らく重い病なのだろう。
あの方が亡くなられればワシが織田家に尽くす意味もない……。
ワシの脳裏には幼少期、尾張で過ごした日々のことが蘇る。
「おい、お前が今川の人質になる予定だった竹千代か?」
そう言って派手な格好をした三郎様が話しかけてきた。
ただ1人で書を読む私にとってあの方は太陽のような存在であった。
「ずっとそこにいてもつまらないだろう。ついてまいれ。」
そう言って三郎様はわしの手を引き川に連れていってくれた。
そこに居たのは弟の勘十郎殿と前田又左、佐々内蔵助、池田勝蔵。
皆幼なじみで誰もが人質の私を気遣い優しくしてくれた。
そこから15年後、清須で再会した時三郎様はワシに志を聞かせてくれた。
「のう、竹千代。俺は天下を取ろうと思う。」
「てっ、天下ですか……!?」
「左様、今や傀儡と化している足利の公方様を助け戦の無き世の中を作る。それにはお前の力が必要だ。」
「わ、私のような者であれば是非ともお役に立ちとうございます!」
ここからワシと三郎様の戦いは始まった。
姉川、三方ヶ原、長篠……。
どれも辛い戦であった。
三郎様のためなら息子と妻の命も投げ出せた。
しかしその三郎様が志半ばで倒れられそれを隠蔽しようとした岐阜中将をワシは許せぬ……。
あの様なものに頭を垂れるくらいならワシが三郎様に代わり天下を取る。
三郎様……今し方お待ちくだされ。ワシが必ずや天下を……正しき世を作りますぞ。
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天正13年の夏、昏睡状態だった伯父上がこの世を去った。
結局最期まで目を覚ますことはなく覇王の最期には相応しくなかった。
これを機に上様は正式に伯父上の病死を発表し大規模な葬儀が行われた。
ここで俺は何故か上様の次の席、すなわち一門筆頭に上り詰めたのである。
うん、なんで?
とにかく格別の扱いを受けた俺は次期当主たる三法師様に挨拶するために庄九郎を連れて三法師様の陣に入った。
「津田左近衛少将とわが子、庄九郎にございます。」
俺たちは頭を下げる。
どうやら2人は面識があるようで目線を合わせている。
「面を上げてください、七兵衛殿。日頃からお噂はそこにいる庄九郎から噂は聞いておりますよ。」
当主ながら一門で歳上の俺に対して丁寧な言葉遣い。
なるほど貴族的な方だ。
「はっ。愚息がお世話になっていますようで。」
「いやいや、こちらが世話になっております。同い年ゆえ良き遊び相手でございます。」
三法師がそう言うと庄九郎が少し照れる。
本当に仲が良いようで安心した
「それにしても幼い頃の上様を見ているようでございます。懐かしい気持ちになりますわ。」
「左様ですか。私と庄九郎も父上と七兵衛殿のように共に支え合っていこうと思います。今後とも父上のこと、よろしくお願いしますよ。」
「はっ!」
三法師様に挨拶を済ませると珍しい顔を見つけた。
「これはこれは徳川殿。甲州征伐以来ですな。」
よく平気な顔して来れたな。
伯父上が倒れたどさくさに紛れて甲信を盗んだくせに。
「おお、津田殿。お久しぶりでございます。」
俺は怒る気持ちを抑えてあくまで笑顔で話す。
「新たな領地はどうですかな?」
「やるべきことが多くて困っておりますが東の備えはお任せくださいませ。」
「そうですか、きっと上様も喜ばれるでしょうな。」
そう言って俺たちは笑うがその笑いは乾いている。
家康と別れたあと、東美濃を守っている川尻秀隆と東尾張を守っている毛利長秀を俺は呼び出した。
「徳川軍になにか動きは無いか?」
俺が聞くと2人とも驚いた顔をしている。
あの殺気を感知できなかったのかッ!
「いえ、特に何も……。」
「我らの方も……。」
「バカモン!あれの殺気が分からんのか!絶対に警備に手を抜くな。良いな!」
2人とも困惑していたが頭を下げた。
全く、弛んどる!
俺はイライラしながら摂津に戻るのだった。
伯父上……いや、父上。あなたの作りたかった世の完成をタヌキごときに渡しはしませんぞ!




