35話
翌日、徳川家康を招いての宴会が開かれた。
そしてここで明智殿が失言して蹴飛ばされる。
止める方法はひとつ、俺が先に言うだけだ。
宴が始まりしばらくすると前世と同様に川尻が切り出した。
「しかしついに武田を滅ぼしましたな!」
「左様、私たちが骨を折ったかいがあったな。」
「はっはっはっ。七兵衛はよう働いておるからのう。流石は俺の息子よ。」
伯父上は上機嫌で俺を褒める。
「おやおや、七兵衛殿は上様のご子息だったのですかな?」
伯父上が酔っ払ってるのかと思った徳川殿が笑いながら聞く。
「いやいや、こやつは幼い頃に親父をなくして以降ワシは息子のように育ててきたからのう。それに十兵衛にも似ておる。ワシが十兵衛を重用し信用しているように奇妙も七兵衛を重用し信用せよ。」
「これはこれは勿体なきお言葉でございます。」
明智殿も嬉しそうに答える。
奇妙殿が逆に面白くなさそうだが謀反なんて有り得んだろ。
「それで十兵衛よ。孫には会うたのか?」
俺の海未の子は今年で4歳だ。
明智殿に似て聡明で自慢の息子である。
「お会い致しました。愛おしくて仕方ありませぬ。」
「はっはっはっ。そうかそうか。すまんが十兵衛と七兵衛は後でワシの部屋に来てくれ。」
なんの事だ?と思いながらも俺はウタゲを楽しんだ。
そして宴のあと、伯父上の部屋に俺と明智殿は入った。
「さて、酒が回っておるが至って真面目な話じゃ。四国の事だが……。」
「長宗我部殿が何か?」
明智殿が目を細めて聞く。
「うーむ。あれは三好をほぼ追い込み勢いに乗っておる。しかし問題が起きた。伊予方面での事だ。」
伊予?伊予になんかあるのか?
「伊予の西園寺はうちの猿を通じて当家と交を通じておる。その西園寺を長宗我部が攻めておる。」
「それは織田家が関係する以前の話では?」
「そうじゃ十兵衛。それはどうでも良い。問題はここからじゃ。そこで長宗我部は伊予方面において力を持つ毛利との戦を避けるために毛利家と同盟を結び公方様が都に戻るのにも協力すると言うておるらしいのじゃ。」
「なっ!?」
明智殿も俺も驚く。
そんな「はい、織田家に敵対しますよ」みたいなことをなんでするんだ?
「何かの間違いでは?」
「ワシも長宗我部がワシらと争う利点が見つからぬ故悩んでおる。そなたらの家臣を送って事情を聞いてきてくれまいか?」
「承知致しました。直ちに致しましょう。」
そう言って俺たちは退出した。
廊下を歩く明智殿はかなり怒っている。
「あの方は何を考えているのだ?織田家と交を通じたいと申したのはあちらではないか!」
「あの、もしこれで戦になったら如何します?」
俺は恐る恐る聞く。
「そんなもの、私が先駆けとして四国になだれ込んでやりますよ。」
ああ、良かった。明智殿は四国征伐に参加する気らしい。
あとはこれで明智殿と俺が担当出来たら良いのだが……。
大坂に戻った俺と明智殿は長宗我部元親の義兄の斎藤利三と史実では縁のあるらしい高虎を送り込んだ。
そして一月後、2人が帰ってきた。
「伊予の事は織田家には関係の無いことゆえ口出ししないで頂きたいと。毛利のことは口約束で本気ではないとも申しておりました。」
2人が報告する。
「口約束だと?こちらにも口約束をしている可能性もあるな。」
明智殿がイライラしながら言う。
「これは伯父上に報告する必要がありそうですね。」
この旨を報告した伯父上は激怒した。
「コウモリめ!やはりワシを馬鹿にしておったか!十兵衛、七兵衛!直ぐに軍を率いて四国に攻め入れ!」
「それで処遇はいかに?」
「降伏するなら土佐と阿波半国は安堵してやれ。あとは召し上げじゃ!」
「ははっ!」
こうして四国征伐が始まるはずだった……。
しかしここでめんどくさいことが起きた。
「何!?三七が殿に自分を大将にするように懇願しただと?んなアホな!」
手柄を立てたかったのか殿との密約なのか三七信孝が四国征伐をやらせろと言ってきたのだ。
もちろん俺と明智殿は抗議した。
四国担当はもとより自分たちの担当であり三七に務まることではない。
伯父上もそれに了承しているが殿がそれを譲らなかった。
異母弟だが聡明な三七を奇妙殿は気に入っており手柄を上げさせたいようだ。
こんな論争をしている間にも長宗我部家は三好家を叩き潰し伊予にて毛利家と盟を結び河野家と西園寺家を支配下に起き四国のほとんどを制圧した。
中国のサル、北陸のオヤジが戦を優位に進める中四国だけが織田家内部で泥沼化したのだ。
そんなこんなで3ヶ月近く揉め続けた天正10年6月2日、伯父上が突如として倒れた。
そもそも光秀が信孝にキレてた(史実)けど七兵衛も一緒にキレた(if)から多分大丈夫。




