3話
麒麟がくる途中は色々思うこともありましたが最高なドラマでした。
十兵衛ロスすぎる(涙)
「七兵衛様、今回はよろしくお願い致します。」
清水山城に訪れた久太郎と九郎右衛門が頭を下げる。
「七兵衛殿、お気をつけくだされ。相手は三好勢。油断できませぬ。」
義父上も肩を叩く。
俺の眼前には二千の軍勢が集まっていた。
「皆の者、出陣するぞ!」
俺の率いる二千は河内の佐久間信盛の陣に到着した。
信盛は織田家でも1、2を争う重臣で畿内方面の指揮官である。
「おお、七兵衛様。聞きましたぞ、ご自身で初陣を志願されたようですな。」
そう言って出迎えてくれたのは塙直政。
文武に優れ伯父上からの信頼も厚い重臣だ。
「おお、直政。わざわざの出迎え、忝ない。皆集まっておるか?」
「はい、皆七兵衛様の到着をお待ちです。」
そう案内され陣に入る。
その顔ぶれは懐かしい者ばかりだ。
信盛に松永久秀、荒木村重。
全員俺が死んだ時には織田家に居ない。
「七兵衛様、ご無沙汰しております。」
佐久間が立って頭を下げると2人も続く。
「わざわざ頭を下げなくても良い。軍の大将はお主ではないか。」
「殿の御一門がいらっしゃったのです。ささこちらに。」
佐久間は俺を上座に案内してくる。
「いや、某はここで良い。経験のあるそなたらに従った方が良いだろう。」
「流石は七兵衛様。良いでは無いか、佐久間殿。」
「そうじゃな。では早速軍議を始めよう。」
おお、この空気感久しぶりだな。
「ご存知の通り三好左京大夫は将軍義昭を匿い受け渡す気はないようだ。相手は小勢。力攻めで落とそうかと思うのだが。」
「お待ちくだされ佐久間殿。いま左京大夫めは重臣たる若江三人衆を遠ざけ、金山駿河守ばかりを寵愛しております。これに不満を持つ若江三人衆と接触してみようと思うのですが。」
と、松永久秀。
「松永殿は三好の旧臣ですから話も進むでしょう。佐久間殿、如何致す?」
「うむ、では松永殿におまかせしよう。」
「それなら、某も随伴させてくれ!この目で調略というものを見ておきたい。」
俺は咄嗟に立ち上がって言う。
「いや、七兵衛様。万が一のことを考えると……。」
「まあ良いでは無いか、九郎右衛門。それにお主も松永殿のところで手ほどきを受けたいと申していたであろう?」
佐久間がそう言うと緊張感が解ける。
「はっはっはっ。ご安心くだされ菅井殿。津田殿に何かないようにワシの家臣がきっちりと警護させますゆえ。」
「まあ松永殿がそこまで仰せなら……。」
長頼はちょっと真面目なところあるからなぁ。
まあその分優秀だし伯父上に信頼されてるんだけど。
「では早速行きましょうか。既に話をする約束はしております故。」
展開早っ!
流石は三好長慶の右腕だな。
俺は松永の後について古びた寺に入った。
「七兵衛様は三好家のことをご存知かな?」
ふと松永が聞いてきた。
「えっ、まあそれなりには。」
「我が主君、三好修理様は優れたお方であった。文武に優れワシのことを信頼され……。」
「それを三好三人衆めに乗っ取られたと……。」
「そうです。巷ではワシが修理様の子や弟を暗殺したなどと噂があるが全部根も葉もない嘘じゃ。」
俺もあんたが殺ったと思ってたよ……。
「だからワシは修理様の名を汚した左京大夫が許せぬ!」
久秀は床に拳を叩き付ける。
「我らも同じ気持ちでござる。」
そう言って男が入ってきた。
「おお、来たか。こちらは津田七兵衛様だ。」
「お初にお目にかかりまする。池田丹後守でござる。此度は三人衆を代表して参りました。」
「津田七兵衛でござる。此度は当家の誘いに乗って頂き伯父、信長に代わり感謝いたす。」
「ご立派であろう。これが初陣なのじゃ。」
「ほお、初陣とは思えぬ落ち着きぶりですな。次世代を担う方がここまでご立派とは織田家も安泰ですな。」
「それで池田よ……。内応の件だが。」
「分かっております。明日の夕刻、我らが火をつけ城門を開けます。その隙に織田様の軍勢は城にお入りくだされ。」
「あいわかった。よろしいですな、七兵衛様。」
「構わぬぞ。期待している。」
「ははっ!」
池田は頭を下げると直ぐに寺を出ていった。
「あの男、信用出来るのか?」
「ええ、三好にいた頃からワシの与力としてよう働いてくれた男です。しくじることは無いでしょう。」
そして池田との約束の通り次の日の夕刻、城から火が上がり城門が開いた。
「今こそ好機ッ!全軍進めいッ!」
俺が軍配を振り下ろすといっせいに二千の手勢が突撃した。
「九郎右衛門、某も行こうと思う。」
「それは……まあ良いでしょう。皆の者、七兵衛様をお守りせよ!」
珍しく九郎右衛門から許可が降りた。
俺は馬にまたがり城に突入する。
「さて、九郎右衛門。首を取れば伯父上は褒めてくれるかな。」
「大手柄でしょうな。殿は奇妙様と三介様以外のご子息にはあまり興味の無いようですから。」
「そうか……あそこで戦ってるのは誰だ?」
俺の指を指した先には鬼神のごとく戦う1人の将がいた。
「はて?あれは誰ぞ。久太郎。」
「知らぬ。しかしなかなか良い甲冑をつけておりますな。」
「なら手柄にしてくれるわ!」
俺は馬を進め将の前で声を上げた。
「我は織田信長が甥、津田七兵衛である!そなた名は!」
「三好家当主三好左京大夫である!1戦お願い致そうか!」
そう言って三好義継が刀を構える。
えー、いきなり大金星じゃん。
これはきつくないか?
「よかろう!御相手いたす!」
刀相手に槍はずるいだろう、俺も刀を抜く。
「覚悟ッ!」
義継は凄い速さで斬りかかってくる。
しかし隙だらけだ。
俺は肩に刀を振り下ろす。
「ぐぁぁぁっ!」
義継が崩れ落ちる。
もはや勝負はあっただろう。
「三好殿、勝負はついた。今から伯父上に謝罪し……。」
「いえ、もはや三好の世は終わりました。腹を斬ります。介錯を願えますかな?」
介錯……っ!?俺した事ないけど大丈夫かな?
「承知した。」
「伯父上……申し訳ありませぬ。織田の方々ッ!どうかこの国の戦を……この国の民に平和な暮らしを……泰平の世をお築きくだされッ!」
そう言って義継は腹を十文字に斬り間髪入れずに俺が刀を振り落とす。
三好義継、享年25。偉大すぎる先代の跡を追い続けた生涯だったであろう。
「比類なき御働き、感動致しましたぞ。」
俺はそう言って手を合わせた。
「皆の者、三好左京大夫はここで果てられた!この戦我らの勝ちであるッ!エイッエイッオーっ!」
俺が勝鬨を上げると兵たちもそれに続く。
こうして俺の初陣は大勝利で終了したのだった。