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28話

「蒲生左兵衛が嫡男、蒲生忠三郎賦秀にございます。此度は病の父に変わり参りました。」


そう言って俺の前で同年代の男が頭を下げる。

蒲生賦秀……のちの名を蒲生氏郷と言い伯父上の娘を娶り後に陸奥92万石の大大名となる男である。

顔はいいが目付きが怖い。


「おう、面あげろよ。よろしくな。」


14歳の頃から戦を続けていたとあって雰囲気が違う。

まあ俺の後にオヤジに育てられたらしいからこうなるわな。


「久しいな賦秀。」


えっ?なんか高虎が賦秀を睨みつけて言う。


「む、高虎か。まさか津田様の家臣になっているとは。本当に主君をすぐに変える男だな。」


賦秀も睨みつけ返す。

なんだよこいつら!


「えーと、2人はどういう関係かなぁ?」


「この男、姉川の戦で俺のことをさんざん罵りながらも完膚無きまでに叩きのめされたのです。」


「何を言うか高虎!あれは私の勝ちだろう。今日こそ家臣たちの仇を討たせてもらうぞ!」


「望むところだ!」


2人が立ち上がり刀に手をかける。


「いや、やめなさいよ!なんなんだよ2人とも。仲が悪いのは勝手だが頼むから俺の陣屋 で揉め事を起こさないでくれ!」


俺が言うと近くにいた側近たちが2人を引き離す。


「決着を決めるなら武功で決めろ!お前ら2人に近江軍の先鋒は任せるから。」


これは伯父上がよくやる先鋒で競わせることで味方を勢いづけるやつだ。

これでうちの軍も安泰だろう。

そう思いながら俺は信貴山城を包囲する奇妙殿の軍に合流した。


「おお、兄者。よう来てくださいました。」


「ご無沙汰しております、奇妙殿。戦況は?」


「信貴山周辺の片岡城を始めとした城は筒井勢が破竹の勢いで攻め落としている。残るこの城も四万の軍には脅威ではないだろう。」


「とはいえ松永は築城の名人。油断召されるな。」


「分かっております。攻撃の前に平蜘蛛の釜を渡したら許すように言えと父上から命じられております。」


「その役目、俺に任せて貰えませんか?」


そう言って後ろにいた高虎が立ち上がる。


「なっ……。どうする新五郎。」


奇妙殿は脇に控える側近の斎藤利治に聞いた。

ちなみにこの男は斎藤道三の末子だ。


「よろしいのでは。津田殿も功績無しに河内一国よりはそちらの方がよろしいでしょう?」


「んんん。まあそうだな。」


さすがマムシの子供、情報が早いな。

俺は苦笑いしながら答える。


「よかろう、なら藤堂に任せる。松永から平蜘蛛を手に入れて参れ!」


「ははっ!」


俺も一応高虎に合わせて頭を下げておいた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

信貴山城本丸 松永久秀


わしはたなびく木瓜紋を背に地図を眺めていた。

黒く塗りつぶされたのが織田側、赤が味方だ。

まず三好は動けないだろうな。誰が家督を継ぐかで揉めておる。

播磨の別所は信長に反旗を翻し摂津の荒木も動くと約束した。

わしの勝ちじゃ。


「申し上げます!織田家の使者がまいりました!」


「斬り捨てよ。」


「それが藤堂与右衛門と申すもので。」


藤堂……あの威勢の良い若造か。


「わかった、通せ。」


まもなく甲冑姿の藤堂がやってきた。

甲冑を着た奴からは武者としての風貌が漂っている。


「案外すぐに会うたな。」


「まさか数月のうちとは思いませなんだ。」


「それで用件は?」


前置きなど時間の無駄だ。

本題に入る。


「ははっ。松永の所有する平蜘蛛を渡せば上様は許すと。」


「ふん、ワシが何故謀反を起こしたか信長は分かっていないのか?天下だ、天下を欲しいからよ!」


「誠にそのような事が実現すると?」


「分かっておらぬな。ワシはワシが死んでも織田が滅びるように仕組んであるぞ?」


「無理ですな。上杉謙信が兵を引いたそうですよ。」


「なっ!?」


そんなはずは無い……。上杉は柴田勝家を破りそのまま越前へ……。


「松永殿、貴殿はその裏も攻略しておくべきでしたな。」


「ほっ、北条か……。」


北条め、織田に歩み寄ったか。

謙信も案外大したことの無いものよ。


「どうですか、勝てる見込みは?」


「勝とうが負けようがお主らに平蜘蛛はやらん!さっさと帰れ!」


「松永殿、今一度お考えくだされ。上様は松永殿の能力を買っておられます。」


「信長は買っておってもそれを活かせなんだ。ワシの主君は1人しかおらぬ。」


「わかりました。上様に報告致します。」


そう言うと藤堂は帰ろうとした。


「ちと待て。そなたこのままで良いのか?」


「このままとは?」


「そなたは織田の陪臣程度で終わる人間ではないということじゃ。」


「俺の主君は七兵衛様だけです。ではこれにて。」


ふん、あっさりと振られてしまったか。

ここらが潮時かもしれぬ。

そう思いながらワシは平蜘蛛を撫でた。

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