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24話

モチベが湧きませんでした。


天王寺砦を奪還した上様は佐久間様に砦の守備を命令し紀州征伐のため軍の準備をされた。

俺は七兵衛様から預かった千五百と上様の寵愛を受けている矢部家定様の二千、合わせて三千五百を率いて紀伊に侵攻した。

既に丹羽長秀様が国人の切り離し工作を行っており案内役として根来衆が着いてくれた。


「あれに見えるは雑賀川です。そこを超えれば雑賀城は目の前、一気に攻め上がりましょう。」


根来衆がそう提案すると矢部様も食いつくように頷いた。


「お待ちくだされ。城の目と鼻の先の川をみすみすと敵が渡らせてくれるでしょうか?」


「雑賀など所詮は農民の集まり、一気に攻め落とすべきでは?」


「矢部様、雑賀は天王寺での戦で我らを苦しめました。斯様に簡単に攻めてくれるでしょうか?」


「怖気づかれたか?なればこそ、我らが敵を討ち功をあげれば良いもの!」


「浅はかでございます。こちらから敵を誘き寄せて……。」


「藤堂殿、陪臣の貴殿と直臣の我では立場が違う。ここは我に従うてもらうぞ。」


矢部様が立ち上がり睨みつける。

俺より小柄なのにな……。

とはいえ七兵衛様に何かあっても困る俺は静かに頭を下げた。


「それで良い!全軍、攻撃準備にかかれい!」


矢部様は早速攻撃を命じられた。

先手は矢部様配下の五百、その次に紀州勢、俺の率いる津田勢、矢部様の本体と続いた。


早速、川を渡り始めた先手が足を取られていく。

罠か?そう思いながら目を細めていると対岸の砦から鉄砲隊が現れた。

それも数十丁などではない。

数百丁だ。

鉄砲が一斉に火を噴き先手隊の兵たちの体を破壊していく。

俺の脳裏には天王寺での戦が焼き付いた。


「まずい!盾に隠れ撃ち返せ!味方の後退を援護するのだ!」


俺の命を受けた鉄砲隊が砦に向けて撃ち返す。

しかし練度も性能も雑賀は日ノ本一だ。

こちらの方が被害は大きい。

なんとか先手隊が撤退するもその数は三百まで減っていた。

俺たちの完敗だった。


この結果を報告するために俺たちは上様の待つ本陣に入った。

矢部様は身体を震わせ額から汗を流している。


「まずは藤堂。お前は下がって良い。」


まずい……完全に激怒している。

声は静かだが目から怒りが伝わっている。

俺は下がれと言われても恐怖のあまりその場で膠着してしまった。

魔王としての上様の面を見たのだ……。


「矢部、お前は何度戦をしている?なぜあの程度の罠がわからん?」


「そっ、それは……。雑賀は農民の集まりかと思うておりまして……。」


「ほう……天王寺のことをもう忘れたのか?余はそなたに甘くしすぎたようだな……。」


「そっ、そのようなことは……!」


「お前と藤堂は左近の配下になれ。こやつの元で軍略の術を学んで参れ。」


「ははーっ!」


矢部様と俺は頭を下げた。


その後まもなく、滝川様の率いる三千が俺たちの陣にやって来た。

矢部様はあれから半狂乱状態で寝込んでしまった為俺が出迎えた。


「矢部はやはり嘆いておるか。まあ上様から寵愛を受けていたゆえあそこまで怒られたのは初めてなのだろうな。」


「私が着いておりながら申し訳ありませぬ。」


「否、そもそも雑賀の相手を側近衆に任せた上様にも問題がある。初めから藤堂殿に指揮を任せておればよかったのだ。ともかく、私が来たからには安心せよ。」


「頼もしきお言葉でございます。されど雑賀は城から出てくる気配などありませぬ。」


「ふふ、簡単に出来る方法があるぞ。」


滝川様はそう笑うと近くの側近の方に何やら耳打ちされていた。

それからしばらくして、滝川様の家来が近くの農民を連れてやって来た。

皆、両手両足を縛られ目隠しをされている。


「滝川様、これは?」


「まあ見ておけ。雑賀の者どもよ!今よりこの者たちを処刑する!止めたくば降伏せよ!」


表情ひとつ変えずに滝川様は民に鉄砲を向ける。

城からは罵声や怒号が聞こえる。

敵を誘き出す気か……。


「藤堂殿、そなたは川にて迎撃の準備を。一気に落とすぞ!」


「は、ははっ!」


俺は早速、鉄砲隊と弓隊を率いて川に張り付いた。

そしてその後すぐ、雑賀衆が突っ込んできた。


「ひっ、引っかかったぞ!撃てい!」


俺が命じると突っ込んできた雑賀衆が何百と吹き飛ばされた。

天王寺や先とは真逆だ。

あっという間に雑賀衆は壊滅した。


「いやぁ、民には辛い思いをさせた。されどこれが戦なのじゃ。」


見れば滝川様の鎧は返り血に染っている。

なんて残忍なお方なんだ……。


「ともかく雑賀は片付いた。これで本願寺も大人しくなるであろうな。」


滝川様は燃えていく雑賀城を見て呟かれた。

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