23話
日本史のテスト37点でした
しかしそれほど戦が上手く進むはずが無かった。
「ええぃ!木津を落とさねば本願寺の兵糧は増えるばかり!」
蜂屋様が椅子を蹴り飛ばした。
包囲してから3ヶ月、本願寺側は水路からの兵糧の搬入で一切飢餓には陥っておらず精神的に追い込まれるものも極わずかだった。
「原田様、ここは先に本願寺に協力する雑賀を叩くべきではないでしょうか?」
七兵衛様に渡された作戦書を思い出して俺は提案する。
「雑賀か……。確かに連中は本願寺に兵糧を送っておる。あれを叩けば本願寺側に篭もる雑賀の者は城を出て投降するやもしれん。よし!上様に策を提案してくるゆえ、その間はお二人にここを任せるぞ。」
「ははっ!お任せくだされ!」
俺は自分の策を受け入れてくれた感謝も込め頭を下げた。
原田様は僅かな供回りとともに砦を立った。
砦に残ったのは俺と蜂屋様、それから原田様の与力の松永久通様及び兵七千人だ。
しかし、この松永様はかの松永弾正の子。
あまり信用してはいけないな。
原田様が出立して3日後、寝所で寝る俺の元に兵がすっ飛んできた。
「もっ、申し上げます!砦に向けて本願寺の軍勢が迫ってきております。その数、およそ二万!」
城攻めにちょうどいいくらいの数だと!?
ともかく考えている暇はない……!
直ぐに対応しないと!
「相手は鉄砲を撃ちかけてくる!すぐに竹束を用意して被害を減らせ!」
俺も直ぐに甲冑を来て外に出た。
「おお、藤堂殿!全く、備中がいない間に攻めてくるとは狙われましたな!」
蜂屋様は既に陣頭にたたれ迎撃の準備を始められている。
流石は上様の直臣。とても頼もしい。
そう思っているとまもなく、耳を裂くような銃声が鳴り響いた。
竹束を構える兵士達がよろめき塀より落ちるものすらいた。
「援軍を呼ぶべきです、蜂屋様!」
この状況で勝てるはずがない。
俺は蜂屋様に進言した。
「うむ、されど援軍が来るまでかなり時がかかる!それまでは我らで耐えるしかないぞ!」
「私が前線で指揮を取ります!蜂屋様は砦の中で全軍の指揮を!」
「承知した!ご武運を!」
よし……俺はともかく蜂屋様に一大事があったら七兵衛様のメンツに関わる。
それだけは何としても避けなければ……!
そう考えている時にも鉄砲の弾丸は兵たちの竹束を破壊していた。
「竹では足りぬか……!砦にある木でもなんでも使え!そして撃ち返せ!」
そうは言っても撃ち返す暇はない。
相手の鉄砲を撃つ速さは異常だ……。
「藤堂様!これでは持ちませぬぞ!」
「耐えよ!耐えるのだ!何としても耐えるのだ!」
夜が開けると本願寺の攻撃も一段落付いた。
しかしこちらは砦は鉄砲の玉で穴だらけになり死傷者も多数出た。
とはいえ五角形故の攻めにくさにより砦の中には敵は一切足を入れることは出来ていなかった。
「いやー、藤堂殿の見事な采配ですな。七兵衛様は良い家臣を持たれた。」
「勿体なきお言葉にございます。私のような若輩者に指揮を任せてくださった蜂屋様のおかげでございます。」
まあ、俺のおかげなのかもしれない。
この実力を買ってくださる七兵衛様こそ俺の主に相応しいのだろう。
俺は次なる攻撃に備え拳を握りしめた。
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京 二条城
「なるほど、確かに雑賀から落とす方が良さそうだな。」
信長は原田の提案を聞いていた。
「それで先鋒は我ら河内勢にお任せしていただきたく。」
「であるか。それよりも筒井と松永にさせて競わせた方が面白いであろう。」
「ああ、それでどちらかが大和の支配権を得る訳ですな。」
「そういう事じゃ。」
そういう感じで信長と直政が談笑していると青ざめた顔の堀秀政が転がり込んできた。
「もっ、申し上げます!天王寺砦が包囲されております!その数二万!」
「なっ、私がいない時をまるで知っていたかのように!」
「嵌められたようだな。直ぐに周辺の連中に動員をかけろ!俺も行くぞ!」
信長は立ち上がると力強く命じた。