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21話

「おい、七兵衛。ちょっと顔貸してくれ。」


岐阜城でゆっくりしていた俺は三介に呼び出された。


「は?なんだよ、俺疲れてるんだよ。」


「論功行賞で何も貰えなかったからって拗ねるなよ。」


うん、確かに何も貰えなかったし拗ねてる。

なんでなんでしょうねぇ。


「はっ?そんなんじゃねえし。」


「まあ来てくれよ。父上が人手が足りないって言ってるから。」


はぁ……そんな大事なのか?

そんな大事なのか?

2度自分に聞きながら俺は広間に向かった。


「おお、七兵衛。よう来た。実は用心棒の数が足りておらんくてな。」


「はっ?用心棒??」


伯父上のその言葉に俺の頭は?だらけになった。


「わしを最も恨んでいるであろう男が今から来る。それが暴れた時の相手よ。」


いや、事例が多すぎて分かんないんですけど!


「噂をすればやってきたわ。」


伯父上が見る方向には公家のような格好をした男が平伏していた。

ん?公家で恨みがある人間か?


「面を上げられよ。」


万見が言うと公家風の男は顔を上げた。


「今川形部大輔氏真でございます。」


なにっ……!今川義元の子か!

確か桶狭間の後今川家は没落しついに滅亡したんじゃなかったのか……!


「ふん、形部よ。わざわざ余のところに来るとは何がしたい?」


「いやー!さすがは弾正忠殿!設楽原での名采配、あっぱれでおじゃる!」


は?ゴマすってるぞこいつ。

俺と三介は顔を合わせる。


「まろはもう政には興味が無いでおじゃる。だから弾正忠殿もまろのことは気にせず武田を滅ぼすでおじゃる!」


「そ、それだけ言いに来たのか……?」


伯父上も度肝を抜かれている。

いや、まさか自分の親父の仇にゴマする奴いねーだろ。


「そうそう、まろは蹴鞠が得意でな!弾正忠殿も共に蹴鞠ろうぞ!」


そう言うと氏真は庭に出て1人で蹴鞠を始めた。

みんな唖然としている。


「……三介、お前蹴鞠好きだったよな。」


「えっ、ああ。ワシそう言えば蹴鞠好きだった。父上、ワシも共にやってきてよろしいですか?」


「勝手にしてこい……。」


あの二人が蹴鞠をするなら伯父上は俺の方にやってきた。


「論功行賞に不満があるのは分かるが今は我慢してくれ。しばらく休んでていいから。」


「えっ、休んでていいんですか。」


「うん、お前も連戦に続く連戦で疲れてるだろう。酒でも飲んでゆっくりしてな。それと十兵衛の娘との婚儀じゃが畿内の情勢が落ち着いてからにしようと思う。」


「承知致しました。それではしばらくお暇を頂きます。」


俺は頭を下げると高虎を連れ清水山に戻った。


「おお、七兵衛殿、お帰りなさいませ。」


「ちっ、義父上!なんですかその格好は!」


見れば義父上は旅装束を身にまとっている。


「いやぁ、七兵衛殿のこれまでのご活躍を見て安心致しました。私はこれにて隠居し旅に出ようと思います。この城も土地も、全て七兵衛殿の者です。」


家督相続か……穏便に済んで良かったが家中はしばらく荒れるだろうな。

これを見据えて俺は暇を貰えたのか?


「家中の者も皆納得しており七兵衛殿には不自由のないように致しました。それではまた。」


そう言って義父上は出ていった。

広間に入ると家臣がずらりと並んでいた。


「我ら一同、阿波守様の家臣として命を懸けて戦いまする!」


そう言って皆が頭を下げる。

あれ?こっちも上手いこといったな。

ということで何不自由なく……という訳にはいかないが俺の当主生活が始まった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

摂津 石山本願寺


「法主様、武田軍が設楽原にて織田軍に完敗致しました。」


「そうですか……。報告ご苦労。」


武田も第六天魔王には敵いませんでしたか……。

これで織田包囲網も終わり……。

ならば第2陣を敷くのみか。


「頼廉。来なさい。」


最も信用している男を呼ぶ。

まあ顔中傷だらけで僧侶に見えないのがたまに傷ですが……。


「上杉、毛利、波多野、三好に書状を送りなさい。」


「いよいよですな……。」


「ええ、この本願寺顕如が今度こそ信長を叩き潰して見せましょう。」


ついに信長がもっとも恐れる男が動き出したのだった。

次回から七兵衛はしばらくお休みです。

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