18話
「伝令!伝令!殿より至急後方に鉄砲隊を展開せよとの事です!」
伯父上の馬廻りがやって来た。
「承知した!鉄砲隊、後ろに回れ!」
ついに来たか、あの作戦が。
「殿、一体何をなさるおつもりです?見れば原田隊や前田隊はわざと武田軍をこちらに誘き寄せているような……。」
「そうだ高虎。これは伯父上の策なのだよ。俺達も行くぞ!」
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設楽原中央 内藤昌豊隊
「内藤殿、敵陣に綻びが出来ました!」
土屋昌次が昌豊に報告する。
見れば織田軍は既に潰走し撤退を始めている。
しかし知将の昌豊はこれを見て不審に思った。
(これは我らを誘い込む罠ではないか……。しかし御館様なら進めと命じられるであろうな……。)
「全軍、突撃せよ!織田を掻き回せ!」
こうして中央の武田軍は織田本陣目掛けて突撃した。
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武田勝頼本陣 武田勝頼
「御館様、内藤殿が中央を突破なされました!今こそ、佐久間に裏切りの狼煙を!」
長坂が嬉しそうに言う。勝てる……俺が信長に……。
「うむ、狼煙をあげい!佐久間に裏切るように伝えよ!」
「ははっ!」
「御館様、どうも罠のような気が致します。鉄砲をあそこまで揃えておいて何故撤退するのです。信長の罠に違いありません。」
「案ずるな、喜兵衛。修理(内藤昌豊)ならやってくれる。狼煙を撃ち次第我らも動くぞ!」
父上……今こそ、父上の墓前に信長の首を供えます。あと少し、あと少しです……!
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「伯父上!ただいま到着致しました!」
「ご苦労、しかしお前まで鉄砲を持って何をしている?」
「俺にもやらせてください。1つでも首を上げとうございます。」
「その心意気や良し。ならば勝頼の首、取って見せよ!」
「応!」
伯父上からの激励を受けると俺は鉄砲隊と共に武田軍を待ち構えた。
隣には高虎も槍を構えて待機している。
武田勢はものすごい勢いで迫ってきた。内藤に真田に土屋か……。
全員手柄にしてやる……。
そして俺たちの待ち構える場所に武田軍がついに足を踏み入れた。
「今ぞ!撃て!我らの世を切り開くのだ!」
伯父上が刀を振り上げると同時に引き金を引く。
うわっ、意外と反動でけえな。
「しっ、七兵衛様!お見事です!命中しましたぞ!」
高虎が指差す方向を見れば俺の撃った方向で倒れている騎馬武者がいた。
「おっしゃ!全軍、突撃ィッ!勝頼を討ちとれい!」
一斉に織田軍は突撃を開始した。
「ひっ……ひけい!このままでは壊滅するぞ!」
一気に味方を大量に失い焦る内藤昌豊は撤退を命じた。
しかしそれを逃す俺たちでは無い。
俺は馬上の人になると片っ端から逃げる武田兵を斬りまくった。
「ギャハハハハハハハッ!死ね、死ねいッ!」
(これ、大殿の血を一番受け継いでるの、七兵衛様じゃないか?)
と、直政も又左も内蔵助も思った。
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設楽原南部 徳川家康隊
「おお、凄い音じゃ。流石は織田様の軍よ。」
本多忠勝は大量の銃声を聞き感心していた。
「感心している暇はないぞ。我らも山県を撃つのじゃ!」
家康が命じると鉄砲隊の攻撃は更に増す。
そして遂に……。
「山県昌景、討ち取ったりぃ!」
その声が戦場に響いた。