16話
短いしテキトーですいません。
明日から設楽原編です。
「はっ!?武藤喜兵衛……!あれは三方ヶ原で徳川殿を追い詰めた猛者中の猛者ですぞ!」
佐久間が腰を抜かして言う。
「えーそんなバケモンと俺再戦の約束したの?」
「安心しろ、お前の仇は俺が討ってやるわ。」
「げっ、玄蕃!」
武蔵、平八郎、そしてもう1人俺と同年代で脳筋野郎がいる。
佐久間の甥の佐久間玄蕃盛政である。
「おい、玄蕃!口の利き方を何とかせんか!」
「いいじゃねえか叔父貴。こいつぁ俺の弟みたいなもんだぜ。」
「馬鹿者!では殿と共に育った勝左(池田恒興)がそのような口の利き方をしておるか!」
「あの、俺お暇しますねー。」
空気が悪くなったので俺はせっせと退散する事にした。
「七兵衛様も大変ですねえ。でも武蔵も玄蕃もあれが奴らなりの接し方なんですよ。」
「なんだよ忠三郎。」
蒲生忠三郎賦秀。近江の国人蒲生家の嫡男で伯父上のお気に入りだ。
「だってあの二人、ただ器量の足りない三七様はともかく、気性の荒い三介様とはほとんど口を交えておられませんぞ。」
「だからって俺に何言っても良い訳ないだろ。あいつらと俺ともそうだがあいつらと堀久や九郎右衛門の仲を何とかせねばならん。」
薄々気づいてはいたが織田家の若手の中で勝蔵、平八郎、玄蕃と九郎右衛門、堀久、藤五郎達は明らかに仲が悪い。まあ性格の違いなのだろうがこれでは後々厄介だ。
俺や庄九郎で何とかできるのも限界があるのだ。
「それより七兵衛様。此度の戦に殿は何丁鉄砲を用意したと思います?」
「三千だろ。」
「ええ、武田もそれなりに鉄砲は持っておりますがこれほどの数は用意できませぬ。それに尾張と甲斐の鉄砲では性能も使い手の練度も桁違いです。」
「地域格差って奴だな。」
「ええ、それに野戦築城で柵を作り馬の侵入を防ぎ一方的に殲滅するのです。」
「はぁ、そんな上手くいく訳ないだろ。どうせ斬り合いになる。」
「物は試しです。明日か明後日には戦になるでしょうな。」
「だろうな。今回の戦は鉄砲奉行共にかかってるな。」
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三河設楽原
決戦の地と想定される設楽原にて原田直政と佐々成政は野戦築城の指揮を取っていた。
「原田殿。もう夜遅いですし終わりにしたらどうです?」
あくびをしながら内蔵助が言う。
「いや、少しでも抜け目があればそこを武田は付いてくる。完璧にしなければならぬ。」
直政は柴田勝家のような猛将か丹羽長秀のような知将かで言うと後者よりだ。
物事を行う時は入念な準備をしてから実行する。
そしてそれは今回も例外ではなかった。
「内蔵助、眠いなら寝ていいぞ。又左はとうの前に寝おった。」
「いや、ワシはバカ犬と違って仕事は最後までやり遂げまする。ですから、わしの健康のためにももう終わりにしましょう。」
「いや、ダメだ。見てみろ、ここが緩んでる。すぐに直せ!」
「ははっ!」
兵たちが修理に取り掛かる。
「まったく……福富も寝たらしいですよ。あの、福富が寝たんですよ!」
「じゃあ殿にはお前は最後まで起きて無類の働きをしたと伝えておくから寝ろ。」
「ほっ、本当ですか!忝ない。」
内蔵助は飛び跳ねるように自陣に帰って行った。
「殿、よろしいのですか?」
「何もしないのを置いといても無駄だろ?それよりも鉄砲兵たちは休んでおるか?」
「はっ!明日に向けてよく寝ております。」
「なら良い、もし寝不足で統率が乱れていては大変だからな。」
いやお前が1番そうだよ!
と家臣は思ったらしい。
「殿もそろそろ寝られた方が……。」
「いや、ワシは万全を期してから寝る。」
なぜここまで真面目な原田直政が哀れな討死をしたのか。
それは寝なかったせいで判断を間違えたからだ。
つまり七兵衛のミッションである原田直政の生存は寝させれば良いのだが……。
乞うご期待。