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10話

二月後、従五位下阿波守に任ぜられた俺は大和の正倉院にて蘭奢待を切り取る際の奉行として大和を訪れていた。


「しっ、七兵衛様!わざわざワシをご推挙して頂き誠に有り難き幸せにございます!この御恩、勝家は生涯忘れませぬ!」


久しぶりに会ったこオヤジは頭を地面に擦り付けて感謝してきた。


「あー、いいよいいよ。それより静かにしてくれよ。」


相変わらずうるせえな、このオヤジ。


「おい、権六。静かにせんか。今日は朝廷の方々も来られる大事な日であるぞ。」


と、滝川彦右衛門一益……じゃなくて今は左近将監か。


「おお、彦右衛門……じゃなくて左近。いやー、ワシも晴れて国持ちになったのじゃ。お主も早う国持ちになれると良いのう。」


ちなみに左近が国持ちになるのは8年後の事だ。


「ワシはお主と違って新参だからな。それよりも七兵衛様、誠にご辞退されて良かったのですか?」


「ああ、俺に越前は厳しいからな。左近も伊勢北部を任されたそうでは無いか。おめでとう。」


「ありがとうございます。これもひとえに皆様のおかげです。」


「ああ、皆ここにおられたか。三条西様が茶を所望しておられるのだが左近、任されてくれるか?」


そう言いながら奉行の塙直政改めて原田備中守直政がやってきた。


「ああ、わかった。すぐに行こう。では七兵衛様、これにて。」


「いやー左近は戦もできて茶道もできて凄いですなぁ。ワシも見習わねば。」


「そなたは戦だけやっておれば良い。そういえば土橋の子はどうなった?」


「今はワシの与力の金森の元で養育しております。いずれは大野に戻す予定です。」


「そうか、任せたぞ。」


「七兵衛様、権六。そろそろ来ていたただけぬか?」


また原田が戻ってきて言う。


「うむ、分かった。」


正倉院の殿の前には伯父上の家臣と公家が勢揃いしていた。

さすがに帝はいないものの二条様を始めかなりのメンツのようだ。


「それでは只今より蘭奢待の切り取りを行います。」


そう言って僧が支持すると蘭奢待が運ばれてきた。

うーん、やっぱりただの木だなぁ。


「あれはただの木じゃないですかー。」


小声で藤吉郎改めて羽柴筑前守が耳打ちしてきた。


「俺も思ったがそれを今言うな。」


しかも刀で切り取ってるし割とガッツリやるんだな。


「おお、あれが蘭奢待……!」


公家とかそれなりに知識のある明智殿や五郎左、原田は感嘆の声を漏らしているが俺もオヤジも藤吉郎もさっぱりだ。


「参議殿、前へ。」


僧が言い、伯父上が前に出る。

そうすると僧が蘭奢待の破片を手渡した。

伯父上はそれを受け取るとニヤニヤしながら頭を下げた。

これで蘭奢待の切り取りは終わった。

その後、俺は伯父上のいる小部屋に呼び出され。

そこには奇妙殿も座っている。


「おう、この蘭奢待。思っていたのと違う。」


「えっ?」


俺たちはキョトンとする。


「もっと神々しいものかと思っていたが案外ただの木なのじゃ。半分帝に差し上げよう。」


それ、毛利に飛ばされますよ……。


「ちっ、父上がよろしいのならそれでよろしいかと……。」


「ならそうしよう。それより七兵衛よ。若江の三好康長が本願寺と共に挙兵しおった。そなたはこれを十兵衛と原田と共に討ち取って参れ。」


三好康長……四国問題の重要人物じゃないか。

こいつを討ち取れば本能寺の変が起きる確率は著しく下がる……!


「伯父上。三好康長が首を挙げ手柄を立てとうございます。降伏を申し出たとしても始末してよろしいでしょうか?」


「おお、やる気ではないか。よかろう、奴の首、ここに持って参れ。」


「ははっ!」


しかし戦に続く戦で兵たちも疲れてそうだな。


「しかし兵たちも疲れております。一月ほど休みを頂けぬでしょうか?」


「ああ、良かろう。先に原田達に包囲させておく。そなたが来てから攻撃するように命じておく。」


原田も重要だよな。こいつが中国司令官になる予定だったし……。


「有り難き幸せにございます。それでは兵共に触れを出して参ります。」


そう言うと俺は大和を後にするのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >>降伏を申し出たとしても始末してよろしいでしょうか? そういやこいつ現代人でも転生者でもなかったなってなる台詞
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