表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

見開き8P目:アグレッシブ・ガール

◇二日目◇

おはようございます。とっても爽やかな朝ですね。吸い込んだ空気は澄み渡っていて、なんだか浄化されてしまいそうです。そう。何を隠そう私、朝からこれを書いているのです。朝から日記を書くというのも何だか変な感じがしますが、日記というのは『日を記す』と書くので、不自然ではないでしょう。

さて、今日は何をしましょうか。特に今するようなことは……ない、ですかね。でも、一日を何もせず過ごすのはさすがに勿体なく感じます。何かすることはないでしょうか。うーん、さっきと考えが変わっていません。この数行で一体何を学んだのですかね。紙幅(しふく)の埋め方ですかね。要りませんね。

確か、こんな時のために教わっている事があるような。……そうです。こういった時は、自分が欲しいものを探すか作るのです。

と、父が言っていました。

「暇なのですが、何かすることはないですか」

と聞いたらそう返された時は、思わずポカンとしてしまいましたが、まさか役に立つことがあるなんて。人生驚きでいっぱいですね。まずここにいることが驚きですね。結局、ここって何処なんでしょう。何分私は、地理に明るくないもので……。せめて国、いや大陸くらい分かれば学んだ知識がかなり使えるのですが。まあでも、リンガやジャガミがある時点で、私の知識は通じないものと考えた方が良いですかね。

で、欲しいもの。なんでしょう、お皿とかですかね。じゃあ作りましょう、そうしましょう。でも何で作りましょう、縄文土器で良いじゃないですか。それなら粘土が必要です、川に探しに行きましょう。決まりました。それでは行ってきます。あれば成形もしてきます。それでは。


してきました。取り敢えずお皿とお椀、コップを作ってきました。個人的にはいい出来ですが、当人の評価は往々にして過剰であると相場が決まっています。なので、結果は期待しないで待ちましょう。後は乾燥待ちのお時間。大方、半日ほどですかね。

さて。その待ち時間、何をしましょう。朝書いたことから進展が全く見当たらないです。この数十行で一体何を学んだのですかね。うーん、もう本当に思いつかないです、すること。何故か倒置法が出てしまいましたが、強調したいほど思いつかないです。実は成形作業に四時間ほど使っているんですよ。それでもまだ日は高いです。あ、日記の紙幅がそろそろなくなりますね。丁度いい、私の一日も終わらせてしまいましょう。これまた丁度よく疲れていますし。

……と書いてしまいましたが、あと十行ほどあるんですよね。そうですね、筋トレでもしてその結果を載せましょうか。まずは軽く、腕立て伏せ三百回からします。お風呂もありますし、汗の心配はしなくていいのが楽ですよね。排出機能が停止しているとはいえ、体温調節機能までは停止していないでしょう。さて。しますか。


ふう、いい汗をかきました。それでは。



◇三日目◇

ここで問題です。【デデン!】私は今、どこにいるでしょう。【ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ】【ブー】ん?『小屋の中』?……残念。確かにいつもならそこですが、今は違います。

正解は…………【ジャカジャカジャカジャカジャン!】『森の中』でした。今は私の内の溢れる探究心を満たすため、絶賛探索中なのです。この日記を手に、書きながら。いや、「今」ではなく「ずっと」ですね。今日は朝からENDLESS探索ですから。まあ終わりはあるんですが。悲しいかな、人は睡眠を取らねば生きていけないのです。なので夜になったら帰ろうと、思っていました(・・・・)。そう、思っていたのです。あの時までは。


あれは確か、数時間前のこと……。私は好奇心旺盛ガール(自称)なので、小屋の北側の森を探索していたのです。全く景色が変わらぬ森の中、自分よりも遥かに高い木々に圧迫感を覚えながら、奥へ奥へと進行していきました。

食糧を持って来なかったのを心底後悔しながら、お腹を戦争後の荒野のように平らにして行っていたその時。辺りはいきなり深い漆黒に包まれました。突然足元もおぼつかなくなった私は、取り敢えず何も考えずに進むことにしました。そのせいで何度も木の根に足を捕られながらも懸命に進む私の元に、さらなる試練が訪れます。

……そろそろフィクションは止めにしますか。途中真実を織り交ぜながら書くならともかく、「完全に創作」となると私には向いていないようです。実際は、「いきなり深い漆黒に包まれ」ることはなく、まあ普通に日が暮れただけです。そもそも私、周りが暗くなっても夜目が利きますし。木の根に足が取られることなんて、あるわけがないのです。

ところでこの森、とても静かなのです。風も吹かないですし。私、こんな静寂が走っている森なんて初めて。大抵は、葉が擦れる音、風が空を裂く音、動物が地を踏み締める音、あとは偶にですが鳥の鳴く音等、聞こえてくるはず。ここはそんな、空気のゆらぎがないのです。おかしいですね。動物がいない森ならたまにありますけど、無風でも静かな森など言ったことも聞いたこともありません。葉を触ってみる限り、至って普通の葉のようですが……。

おや。何故か進めなくなりました。ついさっきから、周りの木々がさっぱり消え去っていたので、不審に思っていたのですが。これは所謂(いわゆる)、BINGO!と言うものですかね。違和を感じていたのが見事、的中です。

うーん、何故進めないのでしょう。この壁(仮定)の先はこんなにはっきり見えているというのに。さっきからずっと足蹴にしているのですが、壁(仮定)辺りに差し掛かった瞬間に急に減速してしまいます。

どうしましょう。とりあえず、引き返します つ 之?

日記「アホだ……アホの子だ……、ていうか一日水も食べ物もなく歩けるって……ファンタジーじゃん……。ちなみに、最後の「つ」は「か」の書きかけ、「之」は「え」の誤字です」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ