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プロローグ「斬新なタイトル」

 


「あ〜〜〜!つまんねぇ!」


 つまらんつまらん。

 何がつまらないって?

 最近の小説はつまらないんだよ。

 どれもこれも同じような話、同じような展開、同じような登場人物……。

 ここ十年くらいずっとこんな流れじゃないのか?

 そしてコレがずっと売れ続けているのだから嘆息たんそくするわ〜〜!呆れるわ〜〜!

 かつての素晴らしき洗練された美しい文学達は何処へ行ってしまったのか?

 歴史を紡いで来た過去の文豪達も草葉の陰で泣いているだろう……うん。


「ま、ラノベの話なんですけど」


 別に今まで散々グチグチ呟いていたのは、何も高尚な読物の事では無く、流行りのライトノベルの事である。

 やれ異世界転生だの、ハーレムだの、チートだの、おっさんだの、俺TUEEEEだのetc……こーんな萌豚ブヒブヒな出版物が跋扈ばっこし、部数を伸ばしてアニメ化コミカライズ化、果ては映画化ゲーム化実写化……そして印税ガッポリ、可愛い女性声優さんと……な〜んて血涙歯軋り嫉妬な出来事が平然とまかり通ってる昨今に、あたし、「荊木一華いばらきいちか」は液晶画面を睨み付け、キーボードを叩くのを、憤怒の感情で打ち込む。


「こーんなキモオタ小説がバンバンアニメ化されて、なーんで私が心血注いで描いた漫画が売れないのよぉ!」


 涙が滝のように流れ出た。

 乙女の涙がこんな不毛な事で……いや不毛じゃないわよ、もう悔しくて悔しくて、涙!流さずにはいられないッ!

 怒りに任せ、安っい缶チューハイとチータラを胃に流し込む。パソコンの画面には最近流行りのラノベのタイトルや表紙がズラり。

 彼を知り己を知れば百戦殆からず……。

 先ずは敵を知らなきゃ勝てるもんも勝てないって事よ。孫子って人も言ってたでしょ?

 ……ん?人?孫子ってタイトルだっけ名前だっけどっちだっけ。

 もう酔いが回って思考が上手く働かないが、ともかく、私の漫画より沢山の支持を集め、大成しているライトノベルが気に食わない。気に食わないのだ。

 何とかしてコイツらよりも人気を取りたい?

 ヤツらがこんなもん書かなければ……特にコイツ!

 グリグリと、某大型書店のサイトで売り上げ1位の大人気長編ライトノベルのタイトル「俺TUEEEEなおっさんのイチャコラハーレム黙示録〜美女と野獣と人魚姫〜(ときどきメイド♥)十八巻」の作者「兼守紫苑かなもりしおん」の文字を指差す。

 傍からみれば逆恨みも甚だしいが、今の一華は最近の仕事の不調、焦る婚期、逃げた恋人、滞納してる家賃……色々な事が重なり、精神的に参っていた。

 普段あまり飲まない酒にも逃げ始め、いよいよどうにかなりそうだ……と天井を仰ぐとふと、ある事を閃いた。コレが、いわゆる電流走る……!ってやつだ。


「……私も書くか、ラノベ」


 ヤツらが漫画で勝負するって言うなら話は別だが、そんな事にならずとも、私は絵だけじゃなくてストーリーにも自信があった。純粋に文字だけでもコイツらと対等、いやそれ以上に戦って勝ってやる自信があった。見事打ち負かし、私の作品の方が素晴らしいって事を、この世界に知らしめてやるわー!


 そう思い立ち、締めっきりのカーテンを勢いよく開けた。カビ臭い埃が舞いながら窓を開くと、外はもう夜が明けていた。ギラギラと眩しい太陽を見て、一華は清々しい気分になりながら早速戦略を立てた。


「先ずはタイトルよねぇ……」


 色々案は浮かぶが、イマイチインパクトに欠ける。

 単純に今まで描いてきた漫画の様なタイトルでは物足りなさを感じるし、かといってラノベ風なタイトルにするのも二番煎じっていうか、そもそも虫唾が走る。

 ここは一つ、とびきり斬新で、爆発するかの様な読書の興味を一発で引く様な圧倒的インパクト ……っ!


「……よし、決まった」


 思いの外時間は掛からず決まった。

 我ながら今までに無い、新鮮で奇天烈、それでいてインパクト絶大なタイトルが……。

 ふふふ、もうタイトルだけで大作確定ってもんよ。

 と、心の中で一華はほくそ笑んだ。


 机に戻り、原稿用のファイルを開きタイトルを打ち込む。

「さぁ、コレが名作ライトノベルの第一歩よ」

 この作品で大成して、私を埋もれさせていたクソザコ作家達に、それに食い付いていたキモオタ共に目に物見せてやるんだから!


 タイトルは、

「最近のラノベ界隈に唾を吐こうと、バキバキの純文学で勝負してやるぜ〜とか意気込んだはイイものの、結局こんなタイトル考えつくから同じ穴の狢ってワケで……(汗)、っと」


 一華は早速筆を……キーボードを打ち込み始めた。

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