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いつかベランダできみと ~自分が嫌いなオオカミは年上美女の青い目で過去の呪縛を解かれるか?~  作者: エタミケイ


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ありがとう会の悲劇

春休み中のエンケン活動日。

ロブはライムから、「先輩のよく知ってる人と付き合うことになった」と報告を受ける。

その誰かに心当たりがある彼は、飲み会の席でさり気なく聞いてみるが……。

春休みも残りわずかというある日、俺はエンケンの部室に顔を出した。

もちろん、そこにライムがいるのを知ってだった。


「まあ何ていうか、彼女とは仲直りしたんだ」

「いろいろ心配かけて、悪かったよ」


お互いに花の世話をしながら、俺は彼女にエレンとやり直すことになったことを話した。

俺のことを心配してくれていたので、報告しておくべきだと思ったからだ。


「そっかー」

「よかったね、おめでとう」


彼女は、妙に素っ気なかった。

俺の胸は、ちくりと痛む。


11月の学祭からは、もうだいぶ経つ。

それでも俺は、未だにあの日のことが気掛かりだった。


あの日ライムは、俺のことを好きだと言ってくれた。

そんな彼女に、エレンとよりを戻したことを伝えるべきかは正直迷った。


「……実はね」

「あの、あたしからも報告があって」

「うん?」


「実はその、彼氏が出来たの」

「付き合うことになったのは、春休みの少し前なんだけど……」

「先輩、元気なかったぽかったし、なかなか言い出せなくて」


なるほど。

素っ気なく感じたのは、この話題を振るために緊張していたせいもあったのか。


「いいよ、そんなの」

「わざわざ報告してくれてありがとう」


「えと、あたし、普通はこんな風に言ったりしないよ?」

「ほら、彼氏が出来たとか、そういう報告みたいの」

「うん」


「でもね、えっと……その新しい彼氏がね」

「先輩のよく知ってる相手なんだ」

「え?」


ライムの話を聞いて、俺は即座に知り合いの顔を思い浮かべた。

よく知ってるとなると、そんなに数は多くない。


ボック先生?

それとも、ベアンハルトさん?

ヒヒ爺さんは……論外だ、論外。


よく知ってるとなると、あの2匹は外せない。

学年一の人気を誇るライムを落としたっていうなら、それは()しかいないよな……。



チャドとフローリアンにも、エレンとのことは知らせておくべきだと思っていた。

俺は2匹を誘って、【心配してくれてありがとう会】を催すことにした。


「ロブ、よかったね」

「彼女のこと、もう離しちゃだめだよ?」


いつも通りの口調で、その()は穏やかに笑った。

相変わらずメスが切れたことのない、イケパカのフローリアンだ。


「ほんと、お世話かけました……」

「それよりさ、聞いたよ」

「新しい彼女のこと」


俺はさり気なく話題を替えた。

フローリアンは目を丸くしている。


「えー、何で知ってるの?」

「僕、まだ誰にも言ってなかったと思うんだけどな」


「いや、偶然聞いたんだ」

「誰からさ?」

「誰って言うか、その彼女から……」


ライムが誰と付き合おうが、俺がわざわざ何か言うことじゃないと思う。

そんな気持ちがあるせいか、どうにも歯切れが悪くなってしまう。


フローリアンなら、きっとライムを悲しませるようなことはしないはずだ。

それでも俺はサークルの先輩として、何か一言物申したいのかもしれない。


「ん? 彼女から?」

「ロブ、うちの彼女と知り合いだったの?」


「知り合いも何も、エンケンの後輩だろ」

「何だよ、今さら」


「エンケン? それって、ライムのこと?」

「そうだよ」

「そうなんだろ?」


何だか話がかみ合ってない気がする。

フローリアン、何でそんなに回りくどいんだ?


「ちょっと、僕がライムと付き合ってるって言いたいの?」

「え? 違うの?」


「違うってば!」

「僕の新しい彼女は、別の大学の院生だよ」

「ええー!?」


俺の知り合いで、ライムを落とせそうなのはフローリアンしかいないぞ。

まさか、まさか、本当にボック先生かベアンハルトさんと……。

ライムのあの言いにくそうな様子を思い出すと、それも納得出来てしまうから怖い。


「どうしよ」

「次からどんな顔して会ったらいいんだ……」


「おい、何をブツブツ言ってんだ」

「そしておまえの頭には、オレって存在がいねーのかよ」


テーブルには、最初からチャドもいた。

もちろん、チャドは俺の数少ない知り合いの1匹ではある。


「さっきから聞いてりゃ、まあ勘違いも甚だしいな」

「ちなみにオレね、ライムの彼氏」


チャドはさらりと言うと、ビールをあおった。

チャド、悪いが今はおまえの話に付き合ってやる時間はない。

おまえがライムの彼氏だって、そんな……。


「……え?」

「だからよ、オレだよ」

「ライムと付き合ってんの」


俺は、思わずブフッと吹き出してしまった。

こいつ、何を妄想してんだと。


「あ、これ本当だよ」

「前にさ、ロブのこと相談されたって話したでしょ?」

「あの後から、付き合うことになったんだって」


フローリアンが、もしゃもしゃとサラダを頬張りながら付け加えた。

俺は、飲み物の入ったグラスを片手にフリーズした。


「相手が相手だから、一応おまえにも報告するつもりだったんだけどよ」

「おまえ、ずっと悩んでるっぽかったし」

「なかなか言い出せなかったんだよな」


信じられなかった。

まさかまさか、あのライムがこのチャドを選ぶなんて……。

いっそボック先生が相手だった方が、まだしっくりときた気さえしてくる。


「お、おま」

「何で?」


「何でって、何がよ」

「何でライムと付き合うことになったんだよ?」


「そりゃーあれよ」

「オレの超絶テクで? みたいな?」


俺は気を失いそうになった。

まるで娘からチャラ男を紹介された父親みたいな、そんな心境だった。

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