ウラウ王国 国の歴史(子供向け)より抜粋
むかし話
むかしむかし
魔力を持っていない人たちがいました。
その人たちは、魔法が使えないため、どの属性にもない『無』となりました。
しかしある時、『無』の一人が、有能な魔法士しか入ることのできないユメリス(国家魔法師団精鋭部隊)に、入団してきたのです。
異例の事態に、国中の人々が混乱しました。
そんな中でも王様は動じませんでした。
精鋭部隊の入団試験の合否は、九割が筆記試験の結果だからです。
戦場に出てしまえば、すぐに死ぬだろう。
そう思っていました。
アレをみるまでは――――――
ある日、王様は魔穴(魔物のすみか)の地区がどうなっているか、兵に現状を聞いていました。
「現状は?」
「ハッ!電荷がユメリスを配置され、いい方向に向いております。
兵の死亡数も減り、あと四日ほどで終わるかと」
「そうか…
何か不穏な動きなどはなかったか?」
「ありませんでしたが…」
「どうした?」
「…あの『無』のものが、魔法が使えないはずなのに、魔法を使っていたのです。」
王様は兵の言ったことに疑問を感じ、魔穴に鏡通信の術者を送り、『無』の者を見せるように命じました。
術者は言われたとおり、城の王様の部屋の鏡に『無』の者を映しました。
『無』の者はただ、手をかざしていました。
たくさんの魔物に対して、防護魔法もかかっていない状態で
何をしているのか、王様にはわかりませんでした。
魔物の一隊が『無』の者にかかろうとしたとき、その魔物は血を吹いていました。
それを合図というように、周りの魔物も血を出し始めました。
王様はすぐに『無』の者を、城の地下牢に閉じ込めました。
その力は、国を滅ぼすことのできる力であると思い、恐れたからです。
六年後、王子が次の王様となりました。
次の王様は前の王様とは正反対な性格で、好戦的でした。
次の王様は、『無』の者を解放し、戦場に行かせ、ほかの『無』の人たちを研究所送りにしました。
『無』の人たちには、十分な生活が送れるよう、生活用品や家具・食べ物など、すべて国が負担しました。
しかし、原因不明の病気で、次の王様は若くして亡くなりました。
急なことだったので、彼の叔父がつくことになりました。
叔父は戦場にいた『無』の者と、研究所の『無』の人たちを地下に閉じ込め、『無』の人間にかかわったユメリスや研究所の人たちを全員処刑しました。
それだけではありません。
ユメリスや研究所の人たち、『無』の人たちの家族までもが、全員『無』の者の手によって処刑されたのです。
これを『スウェリの大処刑』といいます。
あまりにも残虐すぎる事態に、人々は叔父を怖がりました。
―――『無』の人間のことを口にしてはならない―――
―――口にしてしまえば、処刑されてしまう―――
―――『無』の人間に関わることは
禁忌を侵すものと思え―――
城に仕えている人たちは、多くの人が、多大なストレスを抱え、憔悴しきっていました。
また、国の人々も急激に重くなった税に頭を悩まされ、貧しい生活を余儀なくされる人が増えてきました。
叔父は、そんなことは気にもしません。
国の人々から集めた税金で、贅沢な生活を送っていました。
カジノで遊び、女で遊び…
あまりのひどさに、国の人々はとうとう奮起しました。
国の人々は、隣の国に協力を求め、革命を起こしました。
叔父は処刑され、さらし者にされました。
国の人々は、叔父への不満をそれで晴らすことはできませんでした。
国の人々は、どこにもぶつけようのないその不満を、『無』の人たちにぶつけました。
『無』の人たちは、半分は隣の国の研究所へ、もう半分は国の人々による、残虐な拷問死刑を受けました。
隣の国に行った人たちは、研究による解剖で、痛みの絶叫の中で息を止め、残虐な拷問死刑を受けたもう半分の人たちは、最後の拷問で、鳥に体をすべて食べられてしまいました。
この『ライル革命』により、『無』の人たちは滅び、それから『無』の人間が生まれてくることはありませんでした。
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『後悔するぞ
俺たちをここで殺しても、俺たちは必ず…
お前たちを―――――――――』