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第4話 宣戦布告

次の日の正午前、あたし達は王宮側が待たせていたのであろうグリフォンがひく馬車的な物に乗って王宮へと続く道を飛んでいた。


ーそう、王宮は地上にはなく空の上に存在している。だから、普通の一般人は空を飛べないのだから行きたくても行けないのだ。ましてや、一生お目にかからずに死んでいく者もいるらしいー


「ねぇ、見てセッシー!街があんなに小さく見えるよぉ〜!!」


窓の外をくいいるように眺めていたリロが楽しそうに言った。


あたしもどれどれと言った感じで眺めて見た。


「うわ〜、すごい、予想以上の高さじゃん。あんなに小さく見えるなんて。王宮ってこんなに高い所にあるんだ」


あたしが関心しているとリロが驚いた様子で

「セッシー見てあれ!」と言い窓の外を指さしていたので見てみると・・・、何と正面にだいだい的に浮いている豪華な造りの大きな城が聳え立っていた。


(これが本物の王宮・・・すごい・・・)


あたしはあまりの大きさに思わず息をのんだ。


目の前の王宮に目を奪われていると、ゆっくりとグリフォンが着地したのを感じると馬車の扉が開かれ、60〜70代くらいのタキシードをビシッと着こなした白髪頭で清楚な感じのおじいさんが現れ、あたし達が馬車から降りると

「ようこそおいで下さいました」と言い一礼をした。


「それでは、広間までご案内させていただきます」


そう言って優しく微笑むと案内するために先頭を歩き始めた。



城の中は入り組んだ道が続いていて素人がここを歩いたらかならず迷ってしまう道ばかりだった。

本当に案内役のおじいさんがいて良かったなとつくづく思った。


数分間歩いて案内役のおじいさんが

「こちらでございます」と言い立ち止まったのは大きな茶色い扉の前。それを案内役のおじいさんが押し開ける。


すると、中はかすかに人影が見えるぐらい暗く、一瞬ここが広間であっているか疑ったが、目を凝らして見ればもうけっこうな数の人数がそろっているように見えた。


「セっシー・・・、ここ本当に広間だよね?何で電気も点けずにこんなに暗くしてるんだろ・・・?」


まだ、人影に気づいていないリロが不安そうな表情で辺りをキョロキョロと見まわしていた。


「リロ、あそこにけっこう人影がいるの見える?」


「え、人影?えーと・・・・あ、見えた!何だかたくさんいるみたい」


リロが気ずいた次の瞬間、突然ある場所だけ光が集められ明るくなった。


最初は明るさに目が追いつけずよく見えなかったが、徐々になれてきて見えるようになった。


「・・・王座に誰か座ってる・・・。まさか、王様!?」


それは、まぎれもなく王様本人だった。

どっしりと王座に座り、いかにも王様らしいローブを身にまとい白髭を立派にはやし、頭の上にはちゃんと王冠ものっていた。


いきなりの王様登場に広間はざわめきはじめる。

すると、王様が咳ばらいを一つしたと思うとざわめきが一瞬にしてひいた。


「皆の者、よく我が城に集うてくれた。急な呼び出しじゃったが誰一人かける事なく集まったのはとても喜ばしい事じゃ。あと、部屋を暗くしていた理由は、入って来た時に保持者同士お互いの顔を見てしまっては面白くないだろう?顔を合わすのはわしの話が終ってからにしてほしいからの。それでじゃ」


そう言い王様はワッハッハと大口を開けて笑い始めたと思ったら急に真剣な表情になり言った。


「さて、皆も気になっているだろう本題にそろそろ入らねばならぬ。今日、皆を集まらせた理由はコレじゃ」


召し使いがカラカラと台車をひきながらやって来た。台車の上には赤い布をかぶせられた何かが置いてあった。


王様がバサッとその布を取り、それをあたし達に見せつけた。


再び広間にざわめきが広がる。


「え・・・、あれって、何であるの・・・!?」


リロがありえないといった表情で目をこすりながら何回も確認していた。


「・・・水色のリングとボックス・・・?」


あたしは驚くよりも先に頭の中に疑問が駆け巡った。


(リングとボックスは7組ずつ存在していると聞いていたけど、まさか、8つ目があるなんて聞いた事がない・・・)



しばらくして、王様は威厳のある声で言った。


「皆聞け!皆が混乱する気持ちは分からんでもないが、今ここにある物はまぎれもない本物じゃ。・・・これはのう、代々王家が極秘にしておった物だったのじゃが、200年前の先代が使用して以来、コレは使用者を失っているにもかかわらず今現在も存在している」


ついさっきまでざわついていた広間が今になっては皆王様の話に聞き入っている様子だった。


「それでじゃ、わしは皆にこの伝説と呼ぶにふさわしいリングとボックスを奪い合ってもらおうと今日ここに集うてもらった」


「え・・・?」


あたしは思わず王様が言った事に耳を疑った。


(奪い合ってもらう?何言ってんのこの人?)


そんなあたしの思いとはうらはらに事態はどんどん進行していく。


「ルールはこうじゃ。これから1人に1枚コレの在りかを示すカードを渡す。そのカードを14枚集め、この広い我が城の何処かにあるコレを探し出しそれを手にした者の勝利じゃ。これから皆にはリングの保持者、ボックスの保持者同士2人1組で行動してもらうのじゃが、まだパートナーのいない者は2日間ゆうよを与える。戦いは3日後にスタートじゃ。それと、これは注意じゃが互いのカードを合わせても場所はわからんぞ」


王様がそこまで言うと召し使いがあたし達にその在りかが書いてあるカードを1枚ずつ渡してきた。それは、透明なカードで道を示す部分が途中で途切れていた。

全員にカードがいきわたったのを確認して王様は話を続けた。



「戦闘は相手チームの両方がきぜつしてそのすきにカードを奪って行けばよいが絶対に殺してはならんぞ。大事な保持者であるからの。それにまだ奪われた者にもチャンスはあるぞ。1度だけなら他の者のカードを横取りする事が出来るんじゃ。そして、ついに14枚全部集めて在りかが分かったとしても、その時パートナーのどちらかが欠けていたら得る事は出来ない。その時点で他のチームが再起不能だったらそこでこの戦いは終了じゃ。話は以上だ」


そう言って王様は席を立ちどこかに行こうとして歩き出したがふと立ち止まり、

「言い忘れておった、戦いはけりがつくまで何日してもかまわないぞ」と言って再び歩き始めた。その時、ふっと怪しげな笑みをもらした事は誰も気ずかなかった。



王様の話が終ったのであたしとリロは王宮のフリースペースにあるバルコニーでお茶をしていた。


目の前にはおいしそうな紅茶とクッキーが置いてあるが今はそんなに楽しくしゃべりながらお茶をする気分ではない。


リロが重々しく暗い声で呟いた。


「僕、戦いなんてイヤだよ・・・」


「リロ・・・」


「どうして、同じ保持者同士、いや、仲間同士が戦わなくちゃいけないの?・・・王様、いったい何を考えているか分からないよ・・・」


リロは頭をかかえこんだ。


その様子を見てあたしは何も言う事が出来なかった。

だって、かつてあたしは殺しをすすんでやっていたから。

だから、今の自分の心情が正直よく分からない。

ーあの日、リロに初めて出会った時、あたしは人を殺す事はいけない事だと知り殺す事をやめたー

でも、今実際に体中の血が騒ぎはじめるのを感じる。

あたしはこの戦いをやりたいの?やりたくないの?・・・矛盾してるよ・・・



「あー!!セシルさんだー!」


突然、後ろの方ですっとんきょうな声がして驚いて振り返ると、そこにはいつだか会った無駄に元気であたしにしてみればずうずうしい少年アルがいた。


「ほら〜、やっぱりまた会えた〜!」


笑顔でそう言いながらご機嫌な足どりであたし達に近づいて来た。


あたしはそんなアルを見て溜息をして言った。


「・・・あんた、空気ってもんを読みなさいよ」


「え?空気?・・・あ、すいません、気づけなくって。ぼくこうゆう空気読むとか苦手なもんで。ほんっとに自分がバカすぎて笑えてきちゃいますよ〜。アッハッハッハ〜」


そう言って能天気に笑うアルを見てあたしはむしょうにアルの腹に一発いれてやりたくなったのでおみまいしてやった。


―ードスーー 鈍い音がした。


「グフ・・ッ、なに・・すん・・です・・かぁ・・・」


あたしの一発は見事にアルのみぞおちにヒットしたらしく、アルは腹を抱えながらそのまま地面にうずくまった。


「少し黙って」


あたしがそう言い放つと、いつの間にか成り行きを見ていたリロが

「ちょっと、セッシー!ダメだよ、知らない子にそんな事しちゃ〜」と注意しながら慌てて席を立ち、アルのもとに駆け寄って

「大丈夫?ゴメンネ。セっシー普段はこんな事しないんだけど」と言いながらアルを介抱していた。


そして、リロの助けもあってようやく立ち上がれたアルはリロにお礼を言ってまだ微妙に痛いのか腹をさすりながら言った。


「ところでセシルさん。こちらの方は?」


紅茶を一口飲んであたしは答えた。


「この子はリロ。あたしのパートナー」


アル、しばしの沈黙。そしてーー


「えぇぇーー!!こ、この小っさい子がセシルさんのパートナぁー!?」


「小っさい子って何!僕これでもセッシーより年上なんだからぁ〜!」


年上と聞きアルがリロに疑いの眼差しをむけて言った。


「じゃあ、何才なんですか?」


「17才だよぉ〜!」


リロが元気よく答えた。


アルは驚きを隠せない様子だった。


「こ、この身長で17才!?ぼくより背が低いのに・・・それに、ぼくより年上だなんて・・・」


アルはリロが自分より年上だったと言う事になんらかのショックを受けたらしく、微妙にフラついている。


「僕の方が年上らしいけど君は何才なの?それから聞き忘れてたんだけど君、誰?」


リロは人差し指を顎にあてて首を傾げて尋ねた。

それに対してアルは力なき声で答えた。


「・・・ぼくはアル。年は14才です・・・」


「ん・・・?14才?なんだ、あんたあたしと同い年だったんだ」


あたしはクッキーを食べながら言うと、それを聞いたアルが一気に元気をとり戻し、輝くような笑顔で言った。


「本当ですか!わぁ〜、セシルさんと同い年なんて何だか嬉しいです!同い年同士頑張りましょうね!!」


アルはガッツポーズをして言った。


何に頑張るんだと思いつつも今度はあたしがさっきから気になっている疑問を聞いてみることにした。


「そういえばあんた、パートナーは見つかったわけ?」


すると、さっきまで輝いていたアルの表情がみるみるうちにくもっていき、溜息をつき言った。


「それが・・・まだなんですよ。あわよくばセシルさんをパートナーにしようかな〜なんて思ってたんですけど、もう時すでに遅しって感じで、セシルさんにはリロさんがいるし。ぼく本当にあと2日でパートナー見つけられるのかな〜なんて思ってて・・・」


何だか暗〜いアルを見ていたら励ますしかなくなってきたので、あたしは頑張って励まそうとした。


「大丈夫だよ。ここには14人の保持者全員が集まってるわけだしきっちり7組に分かれるんだから心配ないよ」


「あ!そうか!そうですよね!なら、ぼくにもパートナーになってくれる人がいるわけだ!・・・でも、パートナーを見つけたらセシルさん達といずれ戦わなければいけないんですよね・・・」


アルのその一言にあたし達は口を閉ざしてしまったがしばらくしてリロが口を開いた。


「できれば戦いたくないから君と僕、どちらかのチームが脱落して戦わなくなるのを祈るしかないよね。・・・本当はどこのチームとも戦いたくないけど」


「じゃあぼくもそうなる事を祈っておきます」


「いちよう、あたしも」


と、このようにあたし達の意見はまとまり、その後はそれぞれ王宮に居る用もなくなったので帰り際にアルと別れて、望む者は待っている、望まぬ者は来てほしくない奪い合いと言う名の戦いが3日後、幕を開けるのであった。

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