第1話 はじまり
(あ〜、やっとこれで全部買えた〜。正直疲れたかも)
今、心の中でこんな事を述べている少女の名はセシル。セシル・カルローン。
肩にかかるくらいの薄紫色の髪を後頭部にあるチャームポイントのかんざしで束ねている。腕の中の茶袋の中にはたくさんの果物とフランスパンの頭がひょっこりと顔を出している。
人通りが多くにぎやかな街を歩いていると、前方にたくさんの人だかりが通路をふさいでいる。
(はぁ〜?何あの人だかりわぁ〜。じゃまなんですけど)
少しイラつきながら人だかりに近づき、ココは自分の通り道と言わんばかりに人だかりの前に仁王立ちで立った。
しかし、そんなセシルの行動に誰も気づいてくれない。
しばらく、そんな状況が続いていると
「あ〜、もう、何で誰も気づいてくれないのよー」と、多少の怒鳴り声とむなしさをまじえた声で叫んだ。
「ハイハイ、分かりましたよ。こんな人だかりもう相手にしないわ」
と、言ったと思うと軽々とそこら辺の店の屋根に飛び上がり、人だかりの上をやすやすと通り過ぎていく。
「よっ、と」
何事も無かったかのように地面に着地すると不意に後ろから声が聞こえた。
「す、すいません、さっき屋根の上に登って普通におりてくるとこ見たんですけど、あれって、その・・・どうやったら出来るんですか?」
振り返ると、黒い髪をしていて興味心でキラキラしている黒い大きな瞳のちょっと緊張した面持ちの少年がいた。
(誰、コイツ?)
そんな疑問を巡らし、不愉快そうな表情をした。
「あ、すみません。ぼくの名前はアルといいます。さっきの見ててどうやったのかなーと思って・・・、それと、もし良ければですけど貴方のお名前教えていただけませんか?」
しかたなくあたしは答えた。
「・・・セシル・カルローン」
「えっと、じゃあ、セシルさんって呼ばせてもらいます」
(何かずうずうしいやつ・・・)
それがあたしのこいつへの第一印象だった。
「じゃあ、さっそくさっきの教えて下さい!」
「さっきのは適当に足の脚力使ってジャンプしただけだけど」
「・・・」
「・・・」
二人の間に妙な沈黙が流れる。
「えっとー、それだけですか?」
「うん。そうだけど」
「・・・えぇーー!!それだけであれ出来るんですか!?セシルさんって運動神経どんだけ良いんですか!」
「まー、普通の人間ならー」
そう言いかけようとした時、アルの左手首に身につけている腕輪にボックスが垂れ下がっているのを見た。
「て・・・、あんたその手首の・・・」
「え?あーこれですか?これはボックスと言って選ばれた者しか持たないんですけど、でもこれ、リング持ってる人と契約しないと使い物にならないんですよねー・・・って、あー!!」
アルはあたしの右手にはめているリングに気付いた。
「それ、リングですよね!うわぁ〜本物見るの初めてだ〜」
「そりゃー良かったですねー。てゆうか、もう用件は終わったからいいでしょ」
そう言って、あたしは抱えている荷物をよっこいせと持ち直して歩き出した。
「ちょ、待って下さいよ〜」
アルが焦り気味に追いかける。
「何?まだ何か用?」
そう言って、歩みを止めて振り向く。
「セシルさんがそのリングを持っている限りまたどこかで会えます!と、言う事でまた会いましょう!」
「は?それだけ?」
「はい!」
ハァ〜とあたしは一つ溜息をつきその場を後にした。
ここまで読んでくださった方、ほんとうにありがとうございます。まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします。