ぬくもり
三日ほどかけて今までの投稿済小説を修正しました。
大きく変わったのは一話冒頭だけで、あとは細かな誤字脱字等の見直し程度です。
読み返すとあんまりな出来栄えなのが分かって少し凹みましたが、これからもよろしくお願いします。
王都デオッサス西区には、冒険者達が多く行き交う宿場町、そして歓楽街がある。その中でもひときわ大きい四階建ての宿、「キュアケッロ」にトーゴ達は到着した。部屋数五十を超すその宿屋はギルド本部よりも大きく、一階入り口の木製ロビーには鎧を脱いだ冒険者や旅人がまばらに椅子に座り、歓談に花を咲かせていた。
来たはいいものの、トーゴ達はイツキ達の泊まる部屋までは把握していない。宿屋の主人に金を握らせ部屋を教えてもらおうとするが、信用は商売において何より大事だ、ともっともな事を言われあしらわれる。確かに王国でも有数の宿であろう此処が、金で個人情報を売るとなるとちょっとした騒ぎだ。ミューも、時間が経てども貧血の様子はないようだし、一旦落ち着いてイツキ達を探す。
と思ったが、案外早くそれは終わった。ロビーにいる者の中に居ないかと見渡せば、丁度入口の方からイツキ達が帰ってきた。一緒にいるのはディステル・ウォーメイト。重戦士で一人称が「俺」の女だ。他の二人はどうしたのだろう。
「イツキ、急で済まないがちょっといいか?」
「あれ、トーゴさん。どうしたの? え、何その子、大丈夫?」
「その事なんだが、シャウアは何処にいるかわかるか?」
「あぁ、今はクレバールと部屋で休んでるよ。用があるなら付いてきて」
イツキに案内されつつ、急な来訪を詫びる。聞けばシャウアと盗賊の少女クレバールは昨日、「メイデル落石地帯」での戦闘で大活躍したらしく、その労いを込めて今日は休んでくれとイツキが言い出したらしい。ディステルと二人だけで問題なくこなせる依頼を受注し、日に日にボロボロになっていくシャウアのキャソックやクレバールの髪飾りを選んで購入して、たった今帰ってきたところだという。
「ところであんた、カニス・ルプスだったんだな。前に会った時は知らなかったぜ、お目にかかれて光栄だ」
「あっ、ありがとうございます。そんな、光栄だなんて」
ディステルはティスタ、つまり冒険者キャロットティスタ・リースマットの事を最近知ったようだった。大陸に届かんばかりの名声を上げる王国の冒険者の中で、最高峰を競い合うパーティー「霧裂き黒狼」。そこに所属するその可憐な少女魔導士は、冒険者でなくとも王都民なら知っていて当然な程の知名度だ。それを知らなかったと言う事はつまりらイツキ達がこの国に来たのも最近かと予測される。
ディステルが同じ重戦士のアデンバリーについてティスタに色々と質問をし、それがひと段落もしない内に部屋に着いた。
「ここだよ」
「ん、一緒の部屋に泊まってるのか」
「ベッドが四つだからね。更衣室代わりの部屋もあるし。そうじゃなきゃ俺死んじゃう」
「はは、そうだな」
豊満な体つきのシャウア、年の近いクレバール、その中間に位置取るディステルと贅沢なパーティーメンバーを持つイツキだが、流石に一緒のベッドで寝るなどと言う事は許されるはずがない。ましてや手を出すなど。目の前に楽園があって、しかしそれは叶わぬのだ。ベッドが別々でなければ、イツキにとって眠れぬ拷問の日々が続いたであろう。ある意味これも拷問だろうが。傍から見ればハーレムの様相を呈していても、実情はこんなものであった。
「邪魔する。シャウア、ちょっといいか?」
「お帰りイツ……あれ、お客さんだ」
「あれっ、葉巻のお兄さんじゃない。ティスタまで。どうしたの?」
「こいつの事なんだが……」
ベッドの上で寛ぐクレバールと、椅子に座って本を読むシャウアが居た。部屋はそこそこ広く、四人でも何ら問題ないだろう空間だった。
ミューの首の怪我を、魔物にやられた、とだけ説明する。トーゴのそれはマントの襟で隠れている為にバレていない。少々訝し気には見られたが追及は避けてくれた。活性魔術による傷跡を残さない治療を頼む。
「構わないわよ。ミュアレイトちゃん、だっけ? ちょっと顎上げてね~」
包帯をほどき、ふわふわとした青色の光が傷口を包む。その光を見たトーゴの感想は「美味しそう」だった。あのシャボン玉に綿毛が生えたような魔力の塊は、味をつけるとしたらほんのり甘みの在りそうなモチモチのなにかを想像させる。つまり今頃、また昼飯を食い損ねたことを思い出した。と同時に、ミューの鞄と自分の背負い袋をケセロ平原に忘れたことにも気づく。後で取りに行こう。
「……はい、おしまい。痛いかしら?」
「んーん、ありがとうおねーさん」
「わざわざ済まない、金なら今……」
「あら、それじゃあこの前、イツキに葉巻をおまけしてくれた分でいいわ。こんなの些細なことだしね」
「そうか、助かるよ、ありがとう。ティスタ、ミューの鞄を取りに戻るが、お前は此処に残るか? シャウアと少し仲良くなったんだろう?」
「あら忙しない。暇ならティスタ、私たちこれからお昼なんだけど、流石にもう食べちゃったかしら? まだなら一緒にどう? 無理にとは言わないけれど」
「あっ、私もまだなんです! じゃあ、残らせてもらいますね。トーゴさん、また今度お話ししましょう」
「あぁ、今日はすまなかった。」
ティスタにミューの魔術を見てくれた礼として大金貨を三枚、つまり約束の五万より一万多く六万ケインズ渡す。頻りに大丈夫ですよと言っていたが、詫びも含めてだと言えば受け入れてくれた。今度、金ではない詫びをきちんとしたいものだ。イツキやシャウア達にもとんだ迷惑をかけてしまった。突然邪魔して治療を依頼し、礼もそこそこに帰っていくというのは、失礼なんてものじゃないな、と深く反省する。
だがトーゴは急いでいた。鞄の、恐らくまた作ってきてくれたであろうミューの弁当が悪くなる事や、荷物を盗まれるかもしれない事以外特にケセロ平原への道程を急く理由も無いが、しかしトーゴはなるべく早くミューと二人きりになり、きちんと話を聞くべきだと考えていた。それと言うのも、ミューが落ち着いてからと言うもの、殆ど喋らずに俯いたままだったからである。
屋根の上を伝い走り抜ける。ミューは黙ってトーゴの肩に顔を埋めていた。思えばミューの印象は、出会ってから少しずつ変化していった。初めて声をかけられたとき、その外見に見合わぬ妖しい笑みを浮かべていたミュー。今思ってみれば、意識的にも無意識的にも無理をしていたからこその、あの表情なのだろう。それがトーゴと打ち解ける事によって、ずっと抑えてきた幼い部分が漏れ出したのだ。少しずつ子供っぽい一面を見せてくるようになったと思ったら、今日はいっそ駄々をこねる子供のように、錯乱してかぶりを振っていた。あれが、本来のミューの心の有り様なのだろう。
「……おにーさん、寒い」
「ん、すまん。じゃあこれを着てろ」
渡したのは新しく買ったマントだ。あの夜ミューがわざとマントを持って行き、それを返さないものだから新しい物を買うハメになった。わざわざ汚さないように持って行ったものだから、何か意図があったのだろうと思って返せとも言わなかった。今ならわかる、家でトーゴがいないのが寂しかったのだ。
もしかしたらこのマントも持っていかれるかもなと考えつつ、一旦立ち止まりマントを被せてやる。
「あったかい……」
「ミュー、今日も弁当作ってきたのか?」
「うん、パニーニだよ」
「ちょっと凝ったもんになってるな、俺の分はあるか?」
「勿論。全部食べてもいいよ」
「それはダメだ。お前もきちんと食え」
「はぁい。えへへ」
なんだか随分久しぶりに笑う顔を見た気がする。肌寒い温度の風、明澄とした青い空。雲は少なく、小さく、柔らかく散っている。トーゴの【緋為】の影響もあるだろうが、結局午後から晴れたようだ。気付かない内にかなりの速度を出していたようで、もう宿屋がかなり遠い。少し土地の高いここの建物の屋根からならば、王都の街並みをある程度眺めることが出来た。整理された区画に、四つに区切られた地区を走り回る一際広い道。それは王城へと繋がっており、パレードなどに使われる。
反対側を見れば、小さな遠方にリンム―の森、その手前にケセロ平原が見える。澄んだ空気は匂いも味もなく、冷えた鼻が少しつんと痛む。びゅう、と風が通り過ぎていった。
「今、何月だ?」
「十月。二十六日だよ」
「あぁ、ありがとう。秋……いや、もう冬か」
冬という割にはあまり寒くもない気がするが、きっと温かい気候なのだろう。次の夏までに地理を学んで、避暑地を見定めておかねばなるまい。その時には。
「ミューも一緒かな」
「ふぇ? なに?」
「いや、なんでもない。」
時計塔を見ればもう十四時になろうとしている。腹が減った、食欲の秋、いや冬か。今日食ったものと言えば、カトレアの家での朝食と、ミューの血肉。文字にしてみると一層頭がおかしい。
ケセロ平原はドゥルジの作った小さなクレーター以外には何も変わった所はなく、トーゴの背負い袋とミューの鞄が転がっていた。中身を確認するが、荒らされた様子もない。
地面に直で腰掛け、水魔術で手を洗い、薬草の汁で消毒。ミューの取り出したパニーニは、ハム、ルッコラ、クレソン、チーズやトマト等の挟まれたサンドイッチに近いものと、ごろごろとしたキュウリ、ナス、トマト、パプリカをトマト風味のデミソースで和えた彩りに富むものの二つがあった。それが六つ。
「美味そうだな」
「でしょ。食べて食べて」
「いただきます」
「なんで急に敬語?」
それは癖みたいなものだ。イツキなら分かってくれるだろうが。
ゴロゴロ野菜の方を手に取り大きく齧る。血の色にも似たソースが深みのある味わいで、弁当としての出来を超えている気もする。パンを少し焦がしてあるのが更に食欲を掻き立てた。ザクザクとしたパンとその風味が合う。誰が食べても美味いと言うだろう味。
「あー、美味い……」
「しみじみ言われると反応に困る……」
もう一方は非常に軽い。勿論いい意味でだ。緑が多めの具はシャキシャキと音を立て、ハムとチーズの少し濃い塩気が堪らない。トーゴの手のひらより大きいが、五つは食べられそうな程だ。
「美味い。ありがとうな、ミュー」
「んむ。ふぉうっへほほふぁいお」
「飲み込んでからにしろ。喉につまらせるぞ」
硬めのパンがボロボロと崩れ落ち、地面に落ちたパンくずに蟻が寄ってくる頃に六つのパニーニは完食された。そのうち五つはトーゴが食べた。ミューは一つでお腹一杯になってしまったと言うので、仕方無しだ。本当に五つ食うハメになるとは。
ミューはいつものようにトーゴの足の間に収まらず、自分で火をつけた煙草をふかす。煙草を取り出した際にちらりとこちらを見ていたので、多分、遠慮しているのだろう。とんでもない事を仕出かしてしまった為に、接し方がその分遠くなる。ならば心は一層脆くなるだろう。それはさせないと、先程トーゴは言ったばかりだ。
「あ……」
隣に座るミューを抱き寄せる。未だマントは返して貰っていない。トーゴに寄り添う代わりにマントに顔を埋めるミューを、肩を抱いて引き寄せた。もうミューの手元の煙草は殆どが灰となり、それは落とされずにいる。最初の一度しか、口を付けていなかった。崩れ落ちそうになる灰を携帯灰皿で受け止める。ミューはそれをちらりと見て、もう大分短くなった煙草も捨て入れた。そしてもう一本、懐から取り出す。
「火、いるか?」
これも、いつか交わした言葉だった気がする。
「ん、貰う……ねぇ、おにーさん」
「なんだ」
「ぎゅー、して?」
「あぁ、来い」
痛ましく震える声。拒否されたのならば、きっとこの少女は死んでしまう、そう思わせる程に。
足の隙間に収まるのでなく、ミューはトーゴと向かい合う様に、その大きな足に跨る。トーゴが片手で葉巻を取り出した。ナイフでヘッドを切り落とすと同時に火の点いた葉巻に、また指で抑えずに口元の二本目のそれを近付ける。今回は素直に接触した先端が、その熱を移されていく。
「おにーさん、嫌いになった?」
「いいや、寧ろ逆だな」
「……おにく、美味しかった?」
「あぁ。俺のはどうだ?」
「美味しかった。不味かったけど」
「どっちだよ……」
「……ね、ずっと一緒にいてくれる?」
「お前が満足するまでは、見捨てたりなんかしないさ」
「……ごめん、ちょっと、泣くから、これ持ってて」
「ん。」
トーゴに煙草を手渡し、トーゴの服を、肩を握りしめ、全身に力を入れて抱きつき、啜り泣く。声を出さないよう必死で堪えて。
片手に二本のタバコを持ち、紫煙が混ざり合う。冬の色が交じる秋晴れの空に、トーゴとミューの心が重なり立ち昇っていくようだった。
もう、見られても大丈夫だろうとポケットからボロボロになった左手を取出し、顔の近くに揺れる煙を掴むように払った。ゆらりと揺らめき、また真っ直ぐ伸びていく煙。自分の葉巻を左手に移し、ミューの煙草を吸う。
何処かで吸った味だ。特徴的な、なんだろう、酒の味か? ……あぁ、思い出した、ハイライトだ。なんてモン吸ってるんだ、こいつ。でもまぁ、美味いよな、これ。
啜り泣くミューが胸から顔を上げる。トーゴの左手を抱き寄せ、「ごめん」と呟く。大丈夫だと言って頭を撫でてやれば、ミューは顔を横に向け、トーゴの手に持たれた葉巻をそのまま咥えて吸い始めた。
「自分で持って吸えよ」
「やだ。」
「赤ん坊か」
「……それでも良い」
「いやいやいや」
どこまで幼くなっていくんだ。流石に何処かでストップを掛けてもらわねば少々扱いに困る。
ミューが煙を吐き、それはそのままトーゴの顔を覆う。いつも吸っている香りに、今吸っている煙草の苦く、少し甘い香りが混じる。
「これ、初めて吸ったときヤニクラ起こさなかったのか?」
「怖くてちびちび吸ってたから……」
想像して、ちょっと可愛いなと思った。精一杯威嚇する小動物のイメージだ。
ちびちび吸おうが絶対にキツかったと思うのだが、そこは理屈では無いのだろう。
「おにーさん」
「ん?」
「あたし頑張るから、傍に居てね」
「あぁ、安心していい。傍に居てやる」
「傍に居る」という言葉を口にしたのは、何回目だろうか。ティマエラにもミューにも伝えたその言葉。重みが無くなってやしないかと不安になる。だが今感じているもの、情とでも呼ぶものは確かにある。だからそれを信じよう。
ミューを家に送り届けたのは六時頃だ。ケセロ平原でずっとミューを膝に載せて適当なことを語らっていた。そうすればもう、日が落ちる時刻となった。ミューにはカレンドゥラに、今度事情を説明する機会を言伝してくれるよう頼んでおく。この状況で何の説明も無しに一人娘を預かっておくのは、問題になりかねない。今後の事も踏まえて、きちんと話し合っておく必要がある。
そして遅くなってしまったが、ロベイン・アントラクスの工房へ行く。クッキーのレーズンサンドと塩ハーブ水を手土産に、ティマエラに会いに行った。十字の金具がはめられた窓から、ひょこりと赤髪が覗く。ティマエラの声が奥から聞こえ、赤髪の女の、少しガラガラとした声で「いらっしゃい」とドアを開けられる。
ティマエラは手土産をいたく喜んでいた。特に塩ハーブ水だ。ポカリスウェットのようなもので、力仕事に精を出すものには人気である。それに工房の中はかなり暑い。一気にそれを飲み干したティマエラは至福の顔をしていた。
ティマエラはひたすら、軟鉄と鋼を使い剣を打っていた。鞭でも持ち出すのではないかと言う勢いで怒声と指導を繰り返すロベインに、ティマエラは極めて真摯に応じる。
「男の前で悪いけどね、あたしはこのやり方しか知らないんだ」
「どうだ、上達の程は?」
「正直嫉妬するね。見な、どえらい勢いで仕上がっていくだろう。そりゃ上達も早くなろうよ」
「出来たぞ!」
「ダメだ!! ほらまたここ、歪んでるだろう! あと肘! 気をつけろと何度言わせる!!」
「すまぬ! もう一本打っても良いか?」
「さっさとしな!! ……まぁ、今日一日だけで、普通の半年分くらいは上達してるんだけどねぇ……」
「それは凄いな」
「何か言ったかの!」
「気のせいだよ! ほら腰もっ!!」
トーゴが見ている間もずっとそんな調子だった。不死故にスタミナが尽きないので延々と剣を打ち、叱られ、また剣を打つ。材料がもったいなくは無いのかと聞けば、自分が厳しすぎるだけで、あの剣一本で五万は下らない程の出来だという。材料が鋼と軟鉄なので、普通ならば二、三万だ。
成長が早すぎて、普通ならまだ新人相手には妥協する部分も、全て完璧にして見せろという厳しすぎる方針だった。しかしそれについてくるティマエラの技量に、この年にして焦りと嫉妬を感じているらしい。
「あたしだって技術を極めたとは思っちゃいないさ。だがここから成長するってなると難しいだろう。ほら、もう年だ。……だけどね、こんなもん見せられて、血が騒がない方が嘘ってもんだよ。ティマエラは近いうちに、あたしと同じところまで来るだろう。そうなってからは競い合いだ。ならば譲らないさ、ドワーフの誇りにかけてね」
ドワーフの平均寿命は人より少し短く、そして彼女はもう齢五十に差し掛かろうとしていた。ドワーフとしては十分高齢と言える。だがそれでも譲れないプライドが、彼女を焚き付けたのだろう。その目は、髪と同じ色をした炎を宿していた。
また来る、とだけ言ってトーゴはロベインの工房を後にする。夜は王都中央にある公衆浴場で体の汚れを洗い流し、結界を張って野宿だ。宿はどこもいっぱいだった。場所はケセロ平原。明日に備え、早いうちから床――と言っても地面だが――につく。ミューは言わずもがな、ティマエラや、魔人との、起こるかもしれない戦争に備えて忙しいだろうにカトレア達も応援に来てくれるらしい。そんな大した事でもないと思うのだが、確かに、あのヴァンズが戦うところなどは見ている側は楽しそうだと思う。
見上げれば、星座が幾つあっても足りない満天の星、二つの月。遠くには瓦礫の塔が影を作っている。月や星明りが眩しくて眠れそうもないと思ったが、いつの間にか瞼は落ち、意識は暗転していた。




