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栄荘の人々  作者: 柏原 葛
栄荘の出来事
11/18

高校の想い出

ちょっと長くなりました。

「そういえば和葉(かずは)ちゃんって高校生だっけ」


 安在(あんざい)さんの部屋で絹家(きぬや)さんの恋の作戦会議、もとい、だらだらとババ抜きをしている真っ最中。唐突に安在(あんざい)さんが切り出してきた。


「ええ、そうですけど。あ、次安在(あんざい)さんの番ですよ」

「いいなぁ……私も戻ってみたいなぁ………って、これババじゃん!図ったな絹ちゃん!」

 ギロリと絹家(きぬや)さんを睨みつける。てか、絹家(きぬや)さんに非はない気がする。

「はぁ、高校時代かぁ………」

 悲しそうに遠くを見つめる。やっぱり高校時代って一番楽しいのかな?

「でも高校生っていってもそんなに楽しくないですよ。はい、安在(あんざい)さんの番です」

「そー言ったって、結局は懐かしくなるんだよぉ。はい、絹ちゃん」

「私も楽しかったなぁ」

「なんでババ引かないの!?」

「いや、だって大体これだろうなって分かるんだもん」

 安在(あんざい)さんが少し涙目でいるのをバッサリと斬っていく。


「でも、楽しくないっていったって、好きなコとかいるんでしょ?」

「い、いませんよぉ………」

「お、ちょっと戸惑ったねぇ」

 悪い顔をする安在(あんざい)さん。本当に楽しそうだなぁ。

「いや、本当にいませんからね!?」

「ホントかなぁ?」

 ジロジロと顔を覗き込んでくる。………なんか僕が嘘ついてるみたいだなぁ。


「ま、後悔しないようにしなよ」

 なんか、さっきから絹家(きぬや)さんがブルーな気がする。なんかあったのかな?

「絹ちゃん元気ないねぇどしたー?」

 ズカズカと心に入ってくる安在(あんざい)さん。これは天然なのかどうか分からないなぁ。

「いや……ちょっと三木(みき)とねぇ」

 あ、なんか語り出した。

「あれは高校一年生の頃。そのときは全然三木(みき)が好きとかじゃなくてさ」




「おーい三木(みき)ー」

「なんだよ」

「なんだよって酷いじゃん!幼馴染だよ!」

「だからなんだ」

 毎日のように私は三木(みき)と学校で駄弁っていたの。で、下校するときにね、三木(みき)が一人で帰っちゃってて私も後を追いかけたの。


「おーい三木(みき)ー」

 いつもの帰り道にもいないし、もう家に着いちゃったのかなって思ってたらさ、

「ニャオーン」

 猫の声が聞こえたの。私は猫が好きだったし、どこかなーって探して帰り道以外のところも探したらさ、


 三木(みき)がいたの。


 そのときの三木(みき)は猫に餌あげててさ、いつもと違ってすっごい優しそうな顔だったの。

「ごめんな…最近、ちょっと忙しくてな」

 そのときは、なんか猫に話しかけてるなーって思ってただけだったんだけど、

「最近よ、気になるやつがいてさ、」

 お、好きなコかー?って思いながら聞き耳をたてたの。そしたら、

絹家(きぬや)ってやつがいてさ、幼馴染なんだけどよ。そいつがいっつも話しかけてきてかなり疲れちゃってんだわ」

 私の名前が出てきて、はっと息をのんだの。

「話しかけてるときのあいつはさ、ほんっとうに犬みたいでよ、」



「なんか目が離せないんだ」



 はすぐ家に帰ったの。三木(みき)の顔がいつもと違うように見えて、恥ずかしくなったから。

 ものすごい胸がざわざわして、息遣いも荒くなって、



 気づいたら私、三木(みき)のことが好きになってたの。



「ってだけだよ」

「………良い話だなー」

 安在(あんざい)さんがつまらなさそうに言う。

「なによ!これでも結構恥ずかしかったんだよ!」

 絹家(きぬや)さんの顔は真っ赤っか。まるで噴火直前の火山のように。

「まぁ、それで三木(みき)を好きになったのね」

 コクリ、と頷く絹家(きぬや)さん。


「じゃあ、その恋を実らせましょうか!!ねっ!和葉ちゃん!!」

 やっぱり僕ですか!!


 そして、恋のキューピット作戦(?)は、着々と準備を進めるのだった。

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