高校の想い出
ちょっと長くなりました。
「そういえば和葉ちゃんって高校生だっけ」
安在さんの部屋で絹家さんの恋の作戦会議、もとい、だらだらとババ抜きをしている真っ最中。唐突に安在さんが切り出してきた。
「ええ、そうですけど。あ、次安在さんの番ですよ」
「いいなぁ……私も戻ってみたいなぁ………って、これババじゃん!図ったな絹ちゃん!」
ギロリと絹家さんを睨みつける。てか、絹家さんに非はない気がする。
「はぁ、高校時代かぁ………」
悲しそうに遠くを見つめる。やっぱり高校時代って一番楽しいのかな?
「でも高校生っていってもそんなに楽しくないですよ。はい、安在さんの番です」
「そー言ったって、結局は懐かしくなるんだよぉ。はい、絹ちゃん」
「私も楽しかったなぁ」
「なんでババ引かないの!?」
「いや、だって大体これだろうなって分かるんだもん」
安在さんが少し涙目でいるのをバッサリと斬っていく。
「でも、楽しくないっていったって、好きなコとかいるんでしょ?」
「い、いませんよぉ………」
「お、ちょっと戸惑ったねぇ」
悪い顔をする安在さん。本当に楽しそうだなぁ。
「いや、本当にいませんからね!?」
「ホントかなぁ?」
ジロジロと顔を覗き込んでくる。………なんか僕が嘘ついてるみたいだなぁ。
「ま、後悔しないようにしなよ」
なんか、さっきから絹家さんがブルーな気がする。なんかあったのかな?
「絹ちゃん元気ないねぇどしたー?」
ズカズカと心に入ってくる安在さん。これは天然なのかどうか分からないなぁ。
「いや……ちょっと三木とねぇ」
あ、なんか語り出した。
「あれは高校一年生の頃。そのときは全然三木が好きとかじゃなくてさ」
「おーい三木ー」
「なんだよ」
「なんだよって酷いじゃん!幼馴染だよ!」
「だからなんだ」
毎日のように私は三木と学校で駄弁っていたの。で、下校するときにね、三木が一人で帰っちゃってて私も後を追いかけたの。
「おーい三木ー」
いつもの帰り道にもいないし、もう家に着いちゃったのかなって思ってたらさ、
「ニャオーン」
猫の声が聞こえたの。私は猫が好きだったし、どこかなーって探して帰り道以外のところも探したらさ、
三木がいたの。
そのときの三木は猫に餌あげててさ、いつもと違ってすっごい優しそうな顔だったの。
「ごめんな…最近、ちょっと忙しくてな」
そのときは、なんか猫に話しかけてるなーって思ってただけだったんだけど、
「最近よ、気になるやつがいてさ、」
お、好きなコかー?って思いながら聞き耳をたてたの。そしたら、
「絹家ってやつがいてさ、幼馴染なんだけどよ。そいつがいっつも話しかけてきてかなり疲れちゃってんだわ」
私の名前が出てきて、はっと息をのんだの。
「話しかけてるときのあいつはさ、ほんっとうに犬みたいでよ、」
「なんか目が離せないんだ」
はすぐ家に帰ったの。三木の顔がいつもと違うように見えて、恥ずかしくなったから。
ものすごい胸がざわざわして、息遣いも荒くなって、
気づいたら私、三木のことが好きになってたの。
「ってだけだよ」
「………良い話だなー」
安在さんがつまらなさそうに言う。
「なによ!これでも結構恥ずかしかったんだよ!」
絹家さんの顔は真っ赤っか。まるで噴火直前の火山のように。
「まぁ、それで三木を好きになったのね」
コクリ、と頷く絹家さん。
「じゃあ、その恋を実らせましょうか!!ねっ!和葉ちゃん!!」
やっぱり僕ですか!!
そして、恋のキューピット作戦(?)は、着々と準備を進めるのだった。