7 一言
お題「帰り道」
イライラする。どうしてと問われてもわからない。何に対しても不満が募る。それは家でも外でも変わらない。家では主に母親へ向かった。暴力は奮わないものの、母親に対して全てが鬱陶しかった。学校のことを聞かれるのも、ごはんだと呼ばれるのにもイライラした。だから完全無視した。
外でもイライラは募るばかり。学校でもクラスの連中が騒いでいるのを見るのも鬱陶しかった。どうしてあんなにじゃれあって平気なのか、俺にはさっぱりわからない。こうして冷めた目でクラスメイトを見ていることに皆気づいたのだろう。俺は孤立していった。だが、ありがたい。気安く肩など叩かれてはイライラが募るばかりだ。
俺はわかっていた。これがきっと「反抗期」というものなのだろう。しかし止められないし、止め方もわからない。それに止めようとも思わない。
俺は父親のタバコを盗み、外で吸っていた。そんな俺に声を掛けてきた奴がいた。
鬱陶しい。
だが、その高校生風の男はバイクを見せ、俺に後ろに乗ってみないかと誘った。
これは面白そうだ。バイクには興味がある。が、中学生の俺には運転は出来ない。俺は了承した。
そして約束の夜十時。コンビニの前で待っていると、男がバイクに乗って現れた。俺はヘルメットを借りて後ろに乗った。そして出発した。
体が風を切る。なんとも言えない高揚感に俺は包まれた。道路を走っていると、どこからともなく俺の乗っているバイクの周りに同じようなバイクが集まってきた。パラリラと大きな音を出して走るバイクの一団。俺の背中を冷や汗が伝った。
暴走族……!
俺たち一団はある開けた場所で止まった。すると、俺を乗せていた男が、俺を皆に紹介した。
「新しい仲間だ」と。
もう後には引けないのか。そこでは皆がタバコを吸って、寛いでいた。そして俺は仲間にされてしまった。
その後も男のバイクの後ろに乗り、道路を走る日々が続いた。バイクに乗るのは気持ちがいい。だが、この暴走族から抜け出せるのか……?俺はモヤモヤとした気持ちで毎日を過ごしていた。
そんなある日、いつも通り道路を爆走していた俺たちの後ろからパトカーが追ってきた。しかも一台ではない。男は呟いた。「暴走族狩り」だと。
警察に捕まったらどうなるんだ。俺は男の運転に任せるしかなかった。しかし警察も考えているらしい。前からもパトカーがやって来た。と思ったら、皆のバイクのスピードがさらに上がった。俺たちを残して。
他のバイクはパトカーをすり抜け、走り去って行った。残ったのは、一台のバイク。男と俺だった。と思った時、男が俺をバイクから突き飛ばした。そして警察の包囲網を無理矢理突発していった。残されたのは俺一人。俺は生け贄だったのだ。俺は一人警察署へ連れていかれた。
警察署で事情を聞かれたが、俺はほとんどあの集団のことを知らない。黙りこむ俺と警察官。しばらくして、親に迎えに来てもらえば帰ってもいいことになった。だが、散々反抗していた親は迎えになど来てくれるのか。俺はこのまま放置されると思っていた。すると母親が警察署へ駆け込んできた。そして警察官へ深々と頭を下げた。そして俺は家へ帰ることができた。
「……ごめん」