31 暗闇
お題「パソコン」
俺のパソコンが壊れた。今やパソコンがなくては何も出来ない。俺は早速買いにいくことにした。
まずは量販店で比べてみるか……
俺がそう思って歩いていた時、電気屋が目についた。
こんなところに電気屋なんてあったかな?
俺は不思議に思いながらも、吸い寄せられるようにその店内へ入って行った。少し薄暗い店内。もしかしたらパソコンがあるかもと探しているときに声をかけられた。
「何かお探しでしょうか」
この店の店員のようだ。
「パソコンを買い替えようと思って……」
「パソコンですね。今ちょうどいいのが入りましたよ。こちらです」
店員に案内されたのは、更に店の奥。薄暗さが増しているように思える。そんな中、一台のノートパソコンに光が当たっていた。
何故だろう。とても心惹かれる。
俺はそのノートパソコンを開いてみた。
「電源入りますか?」
「ええ、入りますよ。よくご覧になってください」
俺はノートパソコンの電源を入れた。すると不思議な画面が出てきた。普通はウィンドウズの画面が出ると思うのだが、いきなり画面に出てきたのは座っている老婆のようだった。薄気味悪く、フードを深々と被って顔も見えない。俺は店員に聞いてみた。
「あの、この画面って……」
「お客さま! これは珍しい画面なんです! これがトップ画面に現れると、無料で有名占い師の占いを受けることが出来るんです!」
店員はやや興奮気味だ。だが俺は特に占いには興味はない。
「占いの機能はついてなくてもいいんで……」
「お客さま、でしたらせっかくですから、今どうぞ」
俺は店員に勧められるままにパソコンの前に座った。
占いなんてどうせ当たらないしな。
俺はそう思い、マウスでスタートボタンをクリックした。すると下を向いていたような老婆が顔をあげた。
『今からおぬしを占うがいいかえ?』
いいも何もスタートボタンをクリックしたんだから、占いは始まってるんだろう。俺は『はい』のところにポインタを合わせてクリックした。クリックすると同時に、老婆の姿が大きくなってきた。そして老婆の顔が画面いっぱいになった時、パソコンから老婆の枯れた腕が出てきた。
「う、うわああ!」
俺は叫んだが、老婆に腕を掴まれてしまった。そして俺の腕がパソコンの中へ引きずり込まれていく。
「た、助けてくれ!」
俺は店員に向かって叫んだ。
「行ってらっしゃいませ」
店員はにこやかに笑っていた。俺が完全にパソコンに吸い込まれるまで。




