26 どこへ?
お題「旅行」
私は旅行が好きだ。国内も海外もどちらも好きで、休みの度に旅行していた。
旅行に行く時は大体友達と一緒に行く。ずっとそうだった。でも三十歳を過ぎた頃から、友達の結婚ラッシュが続いた。そして当然旅行には中々一緒に行けなくなった。だから私は段々と一人旅をするようになっていった。
海外への旅行はさすがに怖かったが、行ってみると、現地の人達は優しかった。私は海外旅行にも積極的に行くようになった。
そして今回はスコットランド。とても自然が豊かで緑が綺麗な所だ。スコットランドには夏に行くのがいいと聞いた。夏だと白夜で日が沈むのが遅い。ゆっくり旅行するにはいい季節だ。
私はB&Bを泊まり歩いた。B&Bとは、ベッド&ブレックファーストの略で、一泊朝食付きのことだ。日本でいうところの民宿のようなものだ。とはいえ、場所はスコットランド。とても可愛らしい部屋に、ティーセットまでついているのだ。私はスコットランド旅行を満喫していた。
そんな時、長距離バスの中である男性と出会った。彼はとても人懐こく、私に話しかけてきた。
「中国人?」
「日本人よ」
「俺はイギリス南部に住んでるんだ。今日はネス湖を見たくて来たんだ」
「私も!」
アレクと名乗った彼と私は意気投合した。
「リサ、一緒にネス湖に行かない?」
「いいわよ」
私はすぐに答えた。
ネス湖にはボート乗り場があり、それに乗って湖を渡る。
「ネス湖ってこんなに広かったのね」
「そりゃあネッシーがいるくらいだからね」
「信じてるの?」
「夢があっていいだろ?」
お互いに軽口を言い合いながら、私達はネッシーを探した。ちょうど小雨が降ってきて、不気味な湖。とそこで、自分が降りる場所に着いた。ネス湖は広くて、横切るのは難しい。だから途中までなのである。でもまだ先に行ける。私はアレクに別れの言葉を言った。
「アレク、私はここで降りるわ。あなたはネス湖を堪能してね」
「リサ、俺もここで降りる予定だったんだ」
二人で降りた場所には、昔イングランド軍に破壊されたままの城であるアーカート城が残っていた。そこを二人で見学してから、B&Bへ行くことにした。
「リサ、泊まる所は決まってるの?」
「ええ、インフォメーションセンターで予約したの」
「そこに俺も行っていい?」
「え?」
「あ、一緒の部屋とかじゃなくて! 俺、まだ泊まる所決まってないから……」
「別に構わないけど、空いてる部屋があるかは知らないわよ」
「ありがとう!」
こうして私とアレクはB&Bへ向かった。
「予約した、リサ シノザキです」
「ようこそ! あれ? 二人だったのかい?」
「あ、いえ彼は……」
「アレクと申します。彼女とはバスの中で知り合って、ここまで一緒に来たんです。空いてる部屋があればと思って」
「歓迎するよ。ちょうどあと一部屋空いてたんだ。君はラッキーだね」
翌朝、私はアレクと一緒に朝食を食べていた。彼は自分の住んでいる所も素晴らしいから、今度遊びにおいで、と言ってくれた。
そんな時、アレクの携帯電話が鳴った。
「ちょっとごめん」
アレクは席を外し、外に出た。そこでは何やら早口で話している彼。さすがに私には聞き取れない。
電話が終わってアレクは戻ってきた。
「食事の最中にごめん」
「気にしないで。大丈夫よ」
「……リサ、これから行く場所は決まってるのか?」
「ううん、ガイドブックを見て決めるわ」
「じゃあ、俺と一緒に行かない?」
「え? どこへ行くの?」
「俺の住んでる所」
「え? それってイギリス南部よね。私はスコットランドを旅行したいんだけど」
「帰りは送るよ。だからちょっとだけ」
「ちょっと?」
「ああ、すぐだよ」
ついていっても大丈夫だろうか。いや、ここはキッパリ断るべきだろう。そう私が考え込んでいる時だった。
バラバラバラ
え? 何の音?
「迎えが来たよ。さあ、リサ。行こう」
「え? え?」
B&Bの前にはヘリコプターが停まっていた。
ええ~!? さっきの音はヘリコプター!? アレクって一体……。
「リサ、乗って」
「え? え? え? ええ~?」
「荷物はこれだよね」
「あ! 私の荷物! 返して!」
「乗ってくれたら返すよ」
「アレク!」
私はヘリコプターに乗ってしまった。するとすぐにヘリコプターは動き出した。
運転手の横には品のよさそうな男性が乗っていた。
「アレックス様、ご旅行は楽しまれましたか?」
「ああ、最高さ」
様付け!?
「花嫁を手に入れた」
え? え? え? え? え? 誰のこと? まさか……。
「降ろしてえ~~~~~!!」
私、篠崎理沙の人生、先行き不透明。




