2 天使
お題「空」
空には雲が浮かんでいます。そんな雲に乗っている者たちがいました。天使です。雲は天使たちの家なのです。
天使たちは雲の上から人間を眺めていました。天使たちには決まりごとがあって、人間たちに幸せをもたらすために時々人間界に降りて、人間たちを助けていました。
空に雲一つない快晴の時は、天使たちは人間界を見ることが出来ません。そんな日は天使たちは人間界に降りて、直接人間を眺めるのでした。
そんな快晴の時、天使のシェンは人間を眺めるために人間界へ降りて行きました。すると、ある人間に目をとめました。とても苦しそうだったのです。シェンは気になって、その人間の後をつけました。その人間はある建物に入って行きました。病院でした。
その人間はERのところへ行くと、看護師に聞きました。
「田川深雪の容体はどうですか?」
それに看護師は答えます。
「田川さんは相変わらず危険な状態です」
「……そうですか」
その人間はERの前の椅子に座るとERの中を苦しげに見ています。
シェンはこの人間に興味を持ってしまいました。そして考えました。『田川深雪』という人を助けたらどうなるだろうかと。
シェンはERの中へ入って行きました。そして『田川深雪』のところへ行くと、金色の粉をかけました。すると、彼女は目を覚ましたのです。
「田川さん!気がつかれましたか!?」
看護師や医師が慌ただしく動いています。シェンはそれを見守りました。
そしてそれを見ていたあの人間に医師は伝えました。
「田川さんは危険な状態を脱しましたよ」
「あ、ありがとうございます!」
人間は喜んでいました。シェンはそれを見て、嬉しくなりました。シェンは人間を幸せにしたかったようです。
満足したシェンは空へ帰って行きました。でも、天使の決まりごとを守らなかったシェンは、天使長に叱られました。彼女は本当は二日後に目を覚ますことになっていたからです。
そんな気まぐれなシェンに天使長はいつも頭を悩ませているのでした。でも結果的には間違ったことはしていないので、あまり強く叱ることは出来ませんでした。
これからもシェンの気まぐれで、どこかの人間が幸せになるかもしれません。