17 大丈夫だもん
お題「迷子」
あたしは美紀。五歳になったの。幼稚園では下の子の面倒も見てあげてるの。あたしってもう大人ね。
今日は、パパとママと一緒に「オダワラジョウ」を見に来たの。ふふん、あたしでも「オダワラジョウ」がお城だって知ってるのよ。楽しみね。
電車を乗り継いで、やっと「オダワラジョウ」に着いたわ。っていうか、これがお城!?変な形!シンデレラ城の方が素敵だわ。なんだかガッカリだわ。でもパパとママは楽しそうね。仕方ないわね。ここはあたしが大人にならなくちゃ。
「美紀、大きいお城だろう?」
「そうね。パパ」
「小田原城はね、戦国時代……えーっと、ものすごく古くからあるんだよ」
「そうなの。すごいのね」
「さあ、中へ入ろう」
「入れるの?」
「ああ、見学出来るんだよ」
それは中々いいじゃないの!
「さあ、行こう」
パパに手をつながれて、あたしは「オダワラジョウ」に入って行った。
結構広いわね。ディズニーランドのシンデレラ城より広いかもしれないわね。
「さあ、そろそろ昼食にしようか」
「そうね。あなた、どこかいいお店はない?」
「ああ、そうだなあ……」
あっ、ちょうちょ!どこいくのかしら。待って!
「小田原駅に行く途中か、小田原駅前になるかな」
「そうね。そうしましょ」
「美紀、お昼を……美紀!?」
「あなた!美紀がいないわ!」
「美紀!」
「あなた!交番に!」
「あ、ああ、そうだな」
どうしてあたしはここにいるのかしら?ここが交番ってことはわかってるのよ。でもあたしには関係ないはずなのに。
「すいません、子供が迷子に……美紀!」
「パパかな?」
おまわりさんが聞いてきた。ふーんだパパなんて、あたしを放っておくなんて少し困ればいいのよ。
「知らないおじさん」
「失礼ですが、お子さんではないようですね」
「美紀!パパと帰ろう!」
「……事情をお聞かせ願えますか?」
ん?おまわりさんの声がワントーン下がったような……。
「幼児誘拐事件も多発してますからね。その辺のところもお聞かせ願います」
あれ?おかしな方へいってる?
「……わかりました。美紀、パパは帰るよ」
え?このままあたしを置いて!?
「う、うわあああん!パパ!行っちゃやだあ!」
「美紀、おいで」
「お子さんでしたか」
「ご迷惑をおかけしました」
パパのバカバカバカ!あたしを置いて行こうとするなんて!
お昼ごはんはパフェ付きじゃないと許さないんだから!