表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/36

15-1 縁起

お題「クリーニング」

 落ちない。落ちない。どうしよう。クリーニングに出す?ううん、危険だわ。クリーニング屋ならすぐにわかってしまうに決まってる。じゃあ捨てる?でもうちは洋服はリサイクルだわ。可燃ごみでは透明な袋だから分かってしまう。


 ああ、どうしてこんなことに……。


 早くしなければ旦那が帰ってきてしまう。とりあえずこのブラウスは洗濯機の中に隠さなければ!旦那は洗濯機を開けたりしないから大丈夫。


「ただいま」

「おかえりなさい」

「あれ、博人ひろとは?」

「夏休みだし、半月くらい私の実家に遊びに行ったのよ」

「そうなのか。いつも賑やかだから、少し寂しいな」

「……そうね」


 久しぶりに二人で過ごす夕食。なんて落ち着いているのかしら。博人がいないだけでこんなにも変わるのね。やっぱり博人は私とは合わなかったのね。



「ねえ、あなた、私子供が欲しいわ」

「博人がいるだろう?」

「……兄弟を作ってあげてもいいと思うの」

「そうだなあ。博人の育児が一段落してからにしよう」

「……わかったわ」


 十日後。


「博人がいないと寂しいよ。そろそろ迎えに行ってもいいだろ?」

「……実家の両親が喜んでるのよ。もう少し待って」



 やっぱり落ちない。漂白してもダメなのね。なんとか可燃ごみに紛れ込ませるしかないわ。


 私はブラウスを丸く小さくすると、周りを可燃ごみで埋めてから捨てた。


 これできっと大丈夫だわ。


 一週間後。


「もう博人を迎えに行ってくるよ」

「……ええ、お願いね」


「……ママ、ただいま」

「お帰りなさい。博人。あなた、お疲れさま」

「いや、君のご両親は博人の成長ぶりに驚いていたよ。お風呂も一人で入れたらしいよ」

「そう、博人。偉いわね」


 私はにっこりと笑った。そんな私への博人の怯え。旦那は気づかなかった。




「さあ、博人、背中を出して」

「……ママ、痛いの嫌だよ」

「大丈夫よ。この前みたいに血が吹き出ることはないわ」

「……でも……」

「早く脱ぎなさい」

「……はい……」


 博人の背中に現れたのは、龍の刺青。


「博人にとって龍は縁起がいいのよ」


「うう、痛いよ……」


 私は博人の刺青を完成させた。


 これでこの子は私とも上手くやっていけるはずだわ。私は博人の背中の刺青を満足して眺めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ