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11 男

お題「卒業」

 何故私はダメ男を好きになるのかしら。暴力にギャンブル、それに女癖の悪さ。でも優しいところもあるのよ。だから別れられない。

 私がそう思っていた時だった。彼から呼び出されて、喫茶店へ行った。


「……理央りお、話があるんだけど……」

「またギャンブル?お金は出さないわよ」

「違うんだ。……俺、子供が出来た」

「は?」

「その……お互い遊びで……でも出来たらしくて……」

「……相手の女性はなんて言ってるの?」

「……それが、産みたいって……」

「……」

「理央……俺、どうしたらいい?」


 今まで出来なかった方が不思議なんだわ。こんなときだけ私に頼ってくるなんて……。でも、こんなところも『好き』の前には大したことでもない。


「どうせ育てられないでしょう。あなたがお金を出して堕ろすように説得したら?」

「あ、ああ、そうだよな。育てられないもんな!早速行ってくるよ」

「頑張ってね」


 さて、どうなるかしら。もしかしたら手切れ金でも必要になるかもしれないわね。一応通帳の確認はしておかなくちゃ。

 夜、同棲している家に彼が帰ってきた。


「……理央、説得出来なかった……産むって言い張って……」


 やっぱり……


「私が行こうか?」

「そうしてくれるか?頼む!」


 翌日彼と、彼女の家へとやって来た。

 会ってみると、彼には似つかわしくない真面目そうな女の子だった。


「単刀直入に言うけど、彼は私と付き合ってるの。だから子供を堕ろしてほしいの」

「堕ろしません。迷惑もかけません。一人で育てます」


 これは厄介だわ。思い詰めてる感じね。


「ねえ、一人で産んで育てるって簡単なことじゃないわ。あなたが仕事を休む間はお金はどうするの?」

「とりあえず実家に帰ります」


 参ったわね。とりあえず今日は無理そうね。


「また三日後に来るわ。その時までに考えておいてね」


 私が家に帰ると、彼が話し出した。


「……俺、俺、どうしたらいいのかわかんねえ。子供は堕ろした方がいいんだよな?」

「結婚する気がないならそうするべきね」

「……結婚……」


 彼は押し黙ってしまった。

 それから三日後、また彼女のアパートへ行くと、もぬけの殻だった。大家さんに聞くと、昨日慌ただしく引っ越して行ったのだとか。

 それを聞いて取り乱したのは彼だった。


「どこへ引っ越したんですか!?実家はどこですか!?」

「知らない人に話すことは出来ないよ」

「俺は夫です!」


 この言葉には私も驚いた。大家さんも驚いたらしい。なんとか彼女の実家を聞き出すと、彼は言った。


「理央、ごめん。俺、彼女を追いかける」

「……そう。歯をくいしばって」

「え?」


 バシッ


 私の平手が彼の左頬にもろに入った。


「さよなら。二度と顔を見せないで」


 男運の悪い私。こんな私は今日で卒業だわ。男になんて頼らないで生きていくんだから!




 そんな私を温かく見守る視線があったことに、その時は気づかなかった。

 数年後、その人とウエディングベルを鳴らすことになるとは夢にも思っていなかった私である。


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