幕間 二人の距離
今回は短い短編で幕間です。
大地がいないときの女子図書委員の二人のお話です。
残された二人は新刊の本に貼るシールや確認のためのリストなどを準備しながら世間話をしていた。
「あー!今月佐伯明里先生の本入るんだ」
とリストの確認をしていた郁香が声をあげた。それに驚いた明里は持っていた鉛筆を落とした。そしてそれを拾いながら
「桜井先輩は佐伯明里さんの小説が好きなのですか?」
と尋ねた。郁香は
「うん。大好き!とても描写がきれいだし何より登場人物の心情がとてもきれいで風景と合わせたら一枚のきれいな絵が思い浮かんでくるし。私はいつも泣きながら読んでるよー」
と言った。その顔をみた明里は少し動揺した感じで
「そ、そうなんですか。それほど良い作品なんですか?」
と疑問を口にしていた。郁香は
「もちろん。山倉君にも勧めたけどとても面白かったし感動したって言ってたよ」
と嬉しそうに話す。すると明里は
「山倉先輩のこととなるととてもうれしそうに話すんですね」
と口にしていた。
「えっ」
と、郁香が言うとハッとしたような顔をして
「なんでもないです」
と返していた。
ここで会話は途切れてしまい大地が帰ってくるまで微妙な雰囲気が漂った。
まだ大地を通してでしか仲良くなれていない二人。
いつか親友になってくれるといいですね。