寂しい顔
一部タイプミス等あったため編集させていただきました
翌週、大地が仲良く郁香と図書当番のカウンター業務をしていた時のこと。ガラの悪そうな男子生徒たちが大声で笑いながら図書室に入ってきた。あまりにも大きい声なので大地は
「図書室内では静かにお願いします」
と注意した。しかし男子生徒たちは我関せずとばかりに声をあげて笑っていた。あまりの態度の悪さに大地は
「おい、コラァ」
と声をかけていた。
すると男子生徒らは大地を睨みながら、
「なんだよ?」
と突然楽しみを邪魔されたかのようにいらだった声で返してきた。大地は少しもひるまずに
「図書室内では静かにお願いします。飲食もご遠慮願います」
と、平然と手に持ったジュースを飲んでいた人がいたので注意した。すると男子生徒らは
「ああん?別にいいだろーが。そんなことお前に言われる筋合いわねーよ」
「いいえ、そういうわけにもいきません。俺は図書委員なので注意する権利もありますよ。学校側から一定時間の管理を任されているので」
「は、そんなことどーでもいいよ。それに別にいいじゃねーか俺らとお前ら以外他に誰もいねーんだからすこしくれーさ」
すると奥から会話が聞こえてきたのか郁香が
「ダメです。こういうことは一回例外を作ってしまうと他にも同じようなことを要求する人が増えてしまいますので認めません」
と言ながら現れた。
「うるせえな」
と男子生徒がいらだちをあらわにさせて郁香に殴りかかった。それを見ていた大地は咄嗟に郁香をかばい男子生徒の手をつかんだ。そして侮蔑の目をすると
「女子に手をあげるとか最低だな」
と言い放った。その言葉にとうとうブチ切れた男子生徒は手に持っていたジュースを大地にぶちまけた。そして
「覚えておけよ」
と負け犬のようなセリフとともに去っていった。ジュースをかけられた大地は苦笑いしながら
「実際にいるんですねこんなことする人」
と笑っていた。それを見て郁香は
「笑っている場合じゃないでしょ大丈夫?」
と怒り半分、あきれ半分で聞いた。大地はあっけらかんと
「はい、ベトベトしちゃいますけど。今日体育あってよかった。タオルも何もなく乾くのを待つはめになるところでしたから」
と言って大地は鞄から自分のタオルを取り出して顔を拭いた。郁香はそれを見て少し複雑な顔で
「たまにいるんだよね。ああいう図書室の利用目的を間違っている人。寝ているのは気にしないようにしているけどたまにカップルがイチャついていたりするのは本当に腹が立つし」
「あー漫画とかの影響のせいですかね」
「そうそう、小説とかでもたまにあるけど実際にそんなとこしてもいい場所なんかないのにね。むしろ家でやってほしい」
「そうですよね。俺は少しうらやましいですけど」
「え?」
「いや、えっと、誰かと付き合ったりするのってお互いが居心地がいいって思えないとできないことだと思うんですよ。俺はそんなこと思ったこと親友以外ないんでうらやましいんです」
「あ、この前の朝にあったあの二人?」
「はい。すごく良い奴らですよ。小学校から同じなんですけどいつまでもいても飽きないっていうかこれが腐れ縁かなって思ってます」
「そっか。うらやましいね。そういうことを思える人がいるって」
「先輩にはいないのですか?」
すると郁香はどこか寂しそうに
「私はちょっといろいろあってさ。さ、仕事まだ残っているでしょ、早く終わらせよう」
と言って話題を逸らし仕事に戻っていった。大地が仕事中に何度かチラ見したその顔にはもうそのどこか寂しい感じは残ってはいなかった。