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プロローグ
ベッドで横たわる女性が、うっすらと眼を開いてほほ笑む。
そんな様子を見て、青年は女性の手を握り締めた。
懸命に笑顔を見せるが、強張った顔は感情を隠し切れない。
いつしか涙がこぼれ青年は唇をかみしめる。
「母さん…………もういいんだよ。あとは僕が何とかするから」
「……さんに……なさい……って……」
「うん、ちゃんと伝える」
女性は安心したように眼を閉じると、それっきり目覚めることはなかった。
青年は嗚咽を漏らすと、女性の手を握ったまま激しく泣き叫んだ。