番外 グランドの愚痴?
大変遅くなりましたが、作者急病のためしばらく月一更新になります。
お待ち頂いている方には申し訳ありませんが、ご了承下さい
皆様、お久し振りです。
お忘れの方もいらっしゃるかも思われますが、側近のグランドです。
ちょくちょく出て来る眼鏡でございます。
今回、この場をお借りしたのは……我が敬愛なる国王陛下への〝愚痴〟故でございます。
出会いはそう…幼少期まで遡ります。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
「グランド…お前にはお前には国王陛下のご子息と会ってもらう」
その日、父から言われた言葉は唐突だった。
まだ八歳だった自分は深く考えずに頷きましたが…これが悲劇の始まりでしたー。
「君が……グランド君?」
今にも死にそうな白い肌。
生気のない翡翠の瞳。
伸ばしっぱなしになっている亜麻色の髪。
そこにいる彼は、直ぐにでも死んでしまいそうな雰囲気を纏っていた。
「はい、初めまして」
「宜しく…お願いします……」
ゆっくりと頭を下げるジークフリート王子は、顔を持ち上げるなり悲しそうに微笑んだ。
(…………なんで…?)
その笑みの理由は、後々分かることになった……。
***
「ごほっ……‼︎」
ジークフリート王子は、直ぐに寝込んでしまう。
虚弱体質、というやつなのだろう。
苦しそうに咳き込んで、いつも布団の中から明るい窓の外を見つめている。
産まれてからずっと、床に伏せている。
王妃を殺して産まれてきた。
初めて会ったあの日、王子がいないところでそう教わった。
可哀想であったけれど、所詮他人事だと思っていた。
そうやって苦しんでいるのは、自分ではないから…なんと声を掛ければ良いのか分からない。
だから…可哀想な王子の為に顔を出しに来てやってる。
その程度にしか考えていなかった。
でも……そんな考えはとても愚かだったんだ。
***
「王子ー?」
珍しく調子が良いのか、王子は寝室にはいなくて…探しに出掛けた。
そんなに大きな屋敷ではないから、見つけ易いと思って…探索気分で暢気でいた。
「動くな‼︎」
「へっ……?」
背後から首元に押し付けられた冷たい感触。
ナイフだと気づくのに、数秒掛かった。
「お前…ジークフリート王子の側近か……?」
「……ちっ…違う……」
雰囲気からして、刺客だと分かった。
虚弱体質で王位継承権第二。
そんなジークフリート王子の元に刺客が来る理由が理解出来なかった。
「まぁ…良い。王子の元へ案内してもらおう」
「なっ…」
「お前は黙って案内すれば良い。分かっているだろう?」
冷たい感触が更に肌に食い込んだ気がした。
どうすれば良いのか分からない。
国王陛下に仕える父のことを考えれば、ジークフリート王子の元へ案内するのは馬鹿なことであった。
でも、幼い自分は……自分だけが生き残ることしか考えていなくて。
「グランド、気をつけて」
「「っ⁉︎」」
その声が聞こえた瞬間には、自分の身体が刺客と共に横に倒れていた。
「なっ⁉︎」
「ゴメンね…今日は少しだけ調子が良いんだ」
刺客の手から解放されて、声の方を見ると…そこにいたジークフリート王子は自分が知っている人ではなかった。
片手には、刺客の足に絡みついた長い鎖を持ち…その反対の手には自分に突きつけられていたナイフを、刺客の喉元に押しつけていた。
「お前…一体……⁉︎」
「時間だけは沢山あったから…こういう技術と知識ばっかり増えたんだ」
「⁉︎」
にっこりと爽やかに微笑む彼は、悪魔のようだった。
「えっと…まず、どこの阿呆に依頼されたか…教えてくれる?」
「誰が……」
「何を勘違いしているの?言う以外の権利はないんだよ?自白剤、飲まされたくないでしょ?」
「っっ⁉︎」
その時のことは一生、忘れられないと思う。
所詮、病弱な王子だとタカを括っていたのに…実際は自分よりも強くて、悪魔的なぐらいに頭が良かったのだ。
それが皮切りにその後、沢山の事件に巻き込まれることになった。
暗殺未遂事件は多数起こるは、国王陛下達は死なれてしまうは、ジークフリート王子…国王は強くなる為に無茶を沢山するは……。
後始末するこっちの身にもなれ‼︎と言いたくなった瞬間の、《悪女》様の登場。
その後の法律改正や帝国との不平等条約改定やら……あの頃とは比べものにならないくらいに、破天荒だった。
でも、楽しいと思っている自分がいるのも確かで……。
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
「これは…愚痴で良いのでしょうか?」
グランドは国王の執務室に書類を運びながら、零すのだった。




