番外 感謝を込めて〜第二弾〜
アクセス、ユニークの感謝お礼小説(感謝と言いますか…普通に番外編かもしれない)です。
短めですが…楽しんでもらえたら嬉しいです。
「また沢山の人に読んでもらえたなぁ〜…」
フィルチェは目をキラキラさせながら、出版社から届いた《悪女と呼ばれた王妃は安寧の夢を見る》の販売状況などの書類を見つめていた。
「やっぱり…ここは再び感謝を込めた番外編かな?」
フィルチェは筆を手に取る。
そして……この前、王妃アンナに聞いた話を思い出すのだった……。
*****
「………………もしもジークと立場が逆だったら?」
「そうよ〜」
王妃の部屋のバルコニーでお茶をしながら、ミレーヌは楽しそうに聞く。
今回は〝もしも…アンナが女王で、ジークが平民だったら?〟という話だった。
「……それって…私がジークを翻弄する立場だったらってことですよね……?」
アンナは思案顔で呟く。
何を考えているのかかなり難しい顔だ。
「どうしたのかしら?」
「……いや…私はきっとジークみたいに……出来ないかなぁって……」
「え?」
アンナは何とか伝えようと口を開くが…「あー…」とか「うーん…」とか呟くだけだ。
暫くして…アンナはハッとした顔になると、拳をグッと握り締めて言った。
「きっと私、ジークみたいに狡賢く出来ないと思うんですよね‼︎」
「ふ〜ん……誰が狡賢いって…?」
アンナとミレーヌはその声に肩をビクッとさせた。
王妃の部屋に入って来るのは紛れもないこの国の王…ジークフリートだった。
「へぇ〜…俺はアンナに狡賢いって思われてたんだなぁ〜…?」
「…いっ……いや、あれは言葉のアヤと言うか……」
「ふぅ〜ん……?」
ジークフリートはアンナの身体をお姫様抱っこで抱き上げる。
「きゃあっ…⁉︎」
急な高さに不安になって、アンナは彼の腕に手を回す。
その行動に満足そうにしながら、ジークフリートはミレーヌに微笑んだ。
「もらって行くぞ?」
「相変わらずラブラブねぇ〜」
「そんなことはないさ。じゃあな」
「えっ…ちょっ……ジークっ…⁉︎」
ミレーヌに満面の笑顔で見送られながら……アンナはジークフリートに連れて行かれるのだった。
「えっと……ジーク…さん…?」
「んー?」
「………何故に膝に…横座り……」
国王の部屋でソファに座ったジークフリートの膝にお姫様抱っこのまま座らせられたアンナは…顔を赤くして訴える。
ジークフリートはニコリっと鉄壁の笑みを浮かべた。
「別に?」
(……あ…これは……)
どうやら〝狡賢い〟と言ったのか癇に障った…という感じらしい。
アンナは困ったように眉を下げながら、彼に話す。
「別に…ジークの悪口を言ってた訳じゃないのよ?」
「へぇ〜〝狡賢い〟は悪口じゃないのか〜」
「って…本当はそんなに気にしてないでしょ?」
「……………」
アンナの言葉にジークフリートは目を見開く。
そして…拗ねたような…嬉しいような複雑な笑みを浮かべた。
「なんで分かった?」
「………ジークは自分がそういう人間だって分かってそうだもの」
「ははっ……そうだな。俺は地味に策略家タイプだと思うぞ?」
そう言った彼は「あーぁ〜…」とつまらなそうにアンナの頬を突っつく。
「怒ったふりをしてアンナを困らせようと思ったんだがなぁ〜」
「………地味に楽しそうに口元が笑ってました」
「そうなのか?気づかなかった……アンナは俺のこと、分かるようになってきたんだな」
今度はアンナが目を見開く番だった。
相手の本心…考えていることが分かるようになってきたなんて……王妃として成長してきた気がして、少しこそばゆいような…嬉しいような気持ちになった。
「アンナ…もしかして今、嬉しかったりするか?」
「えっ⁉︎」
「その感じだと図星か。俺もアンナが考えてること…分かるようになってきたみたいだ」
愛おしそうに見つめられて…アンナは胸がドキッとした。
「……なんか…こういう気持ち…こそばゆいけれど……良い気持ちだな…」
アンナの肩に頭を預けながら、ジークフリートが嬉しそうに囁く。
アンナはそんな彼の頭を撫でながら、嬉しそうに微笑んだ。
「ふふっ…同じこと、思ってるんだね……」
「アンナも?」
「もちろんだよ」
「ははっ…似た者夫婦だ」
穏やかな時間。
幸せな時間。
この時間が…永遠に続けば良いと願わずにはいられない。
「……なぁ…アンナ」
「いいよ」
「…………」
「分かってるからね」
ゆっくりと顔を上げたジークフリートは、少し悔しそうな顔をしていて。
だが、降参と言うように肩を竦めた。
「やっぱり…俺の愛しい《悪女》には…勝てないな」
そう言って……アンナの唇を自身の唇で塞いだー……。
幸せな……二人だけの…時間だった……。
*****
「よし……」
フィルチェは書き終えた原稿をまとめて、立ち上がる。
日常の話を聞かせてくれとアンナには頼んだのだが…自然に惚気話を聞かされてのだ。
流石……おしどり夫婦。
「なんか…少し国王夫妻の惚気話にしか思えないかもしれないけど……感謝を込めての番外編ってことでね‼︎なんとかなるよね‼︎多分‼︎」
フィルチェは自分を鼓舞するように拳を握り締める。
「読者の皆様への感謝となりますように」
フィルチェはそう願いを込めて…出版社に番外編の原稿を置きに行くのだった……。




