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番外 感謝を込めて



アクセス(ユニーク)、評価、感想、ランキング…その他諸々の感謝小説です。



短いですが…読んで頂けたら、幸いです。








「うーん…沢山の人に読んでもらったなぁ…」




フィルチェは自身が書いた本、《悪女と呼ばれた王妃は安寧の夢を見る》を見つめながら唸っていた。

「こんなに読んでもらえたならに、それのお礼を書かなきゃいけないよね?」

フィルチェはキラキラとした笑顔を浮かべると、新しい原稿用紙を手に取って文章を書き始める。

丁度、この間アンナから聞いた話があったのだ。




それを書こうと…筆を進めるのだった……。












*****











「最近ね…ジークが子供だったら、って思うの」



「………ん?」

王妃の部屋にて。

ソファに座るジークフリートは寄り掛かるように隣に座る唐妻…アンナの唐突な言葉に笑顔のまま固まる。

そんなジークフリートの姿を見て、アンナはハッとして真っ赤になりながら反論する。

「ちっ…違うんだよっ⁉︎ジークが私の歳下だったらってこと‼︎」

「あ…なんだ……子供が欲しいって意味かと……」

「違うからっ‼︎」

ジークフリートは真っ赤になるアンナが可愛くってつい、意地悪なことを言ってしまう。

しかし…今、アンナが言った〝もしも〟には興味があった。

「で?もし俺がアンナより歳下だったら?」

「その…ジークは私と出会わなかったんじゃないかなぁ……って」

両方の指差しを突っつきながら、アンナはそんなことを言う。

ジークフリートは険しい顔になってアンナの顔を見つめた。

「…………なんで?」

惚気になるが…ジークフリートはどんなことがあってもアンナを選ぶ自信があった。

しかし…本人にそう言われると少し傷つく。

「普通、俺が歳下だったら歳上のお姉さんを選ぶんじゃねぇの?そしたら…どちらにせよアンナだろ」

「それは歳上の色っぽいお姉さん、でしょ?私は……平凡だから」

確かに…アンナは特別秀でたところがある訳ではない。

普通。化粧映えするけれど、普通。

でも、その普通が可愛い。

「……うーん…でも、俺はやっぱりアンナを選んだと思うな」

「……………なんで?」

伺うようにジークフリートの腕の袖を掴むアンナ。

その目が潤んでいるように見えて…ジークフリートはゴクッと喉を鳴らした。

「………そこは…惚れた弱みってことにしとこうぜ?」

少し頬を赤く染めながら、ジークフリートはそう呟く。

「…………ジークは…私が…どんな人でも私を選んでくれるの……?」

弱々しいアンナの声に、ジークフリートは納得させる気で凛と言い放つ。

「当たり前だろ。アンナはどんな人でも俺の愛しいアンナだ」

「…………本当に……?」

「そうだ」

嬉しそうな…泣きそうな顔でアンナは彼を見つめる。

「私が子供でも?」

「当たり前」

「私が悪い人でも?」

「アンナがどんなでも…愛してるよ」

「……じゃあ…男でも…?」

そんなに信用がないのだろうか。

どんな時だってどんな人だって、何があろうとジークフリートはアンナを選ぶと決めていた。






「アンナがどうと言おうと俺はお前だけが欲しいんだよ。男だろうが、子供だろうが、凄く歳上だろうが…それがお前なら、俺はお前を手に入れるため何でもするよ」






「…………っ…‼︎」

アンナは静かに目を伏せる。

今日のアンナは様子がおかしい。ジークフリートは問うように彼女の頬に手を添えた。

「信じらんないのか?」

「………ううん…信じてる」

こんなにも…アンナが変なのには何か事情があるのかもしれない…と思った次の瞬間ー……。

「うーん…これはわたくしの負けかしらねぇ」

ひたっ……ベッドの下から腕が現れた。

ジークフリートはそれを見て、思わず狼狽しそうになったが…実際に出てきた人物を見て、真顔になった……。

「…………ミレーヌ……」

「夫婦の愛おしい時間にごめんなさいね、ジークフリート」

「賭けは私の勝ちですよー?ミレーヌさん」

いつの間にか隣に座っていたアンナはいつも通りの笑顔に戻っている。

話が見えないジークフリートは目を瞬かせた。

「王妃様とね?話していたの。ジークフリートはどんな王妃様でも、愛せるのかって…」

「何を当たり前のことを……」

「で?もし聞いたら…ジークフリートがどんな行動を取るか賭けをしていたのよ〜……」

「………………は?」

余りに馬鹿げた話にジークフリートは漠然とする。

「王妃様はジークフリートが睦言を並べる…わたくしは王妃様に入れ知恵した人物の特定に掛かるに賭けてたのよ。結果は王妃様の勝ちね」

「ごめんね、ジーク」

悪戯っ子みたいに微笑むアンナは…とても無邪気で。

ジークフリートの中で…何かが切れた。

「……………ミレーヌ…」

「何かしら?」

「即刻立ち去れ。今から俺達は大切・・なお話をしなくちゃいけないから……な?」

ニコリと爽やかな笑みを浮かべるジークフリート。

アンナはその笑みに顔を引き攣らせた。

「……………そっ…そうするわっ…お邪魔しましたっ……‼︎」

ミレーヌはアンナを置いて即刻、立ち去る。

残されたアンナは…恐る恐るジークフリートを見上げた。

「…………あの…怒ってる…?」

「いや、別に?俺はそれだけ俺の愛をお前が信じてくれてなかった…実感してくれてなかったことに悲しんでるだけだよ」

「それを怒ってると言うのよねっ⁉︎」

ジリジリと追い詰めるようにソファを移動する。

気づけばアンナはソファに押し倒されるようにして、ジークフリートの両手に閉じ込められていた。

「………アンナには…ちゃぁ〜んと俺の愛を実感してもらわなきゃなぁ〜……」

「…………えっ…ちょっ……」

「………勿論…身体で」

「えっ…あっ…んーっ……⁉︎」

アンナの声はジークフリートの唇に塞がれる。


その後…どうなったかは、二人しか知らない。





そうして……二人のプチ騒動は幕を閉じるのだった……。










*****








「こんなものかなっ‼︎」




フィルチェは書き終えた原稿を見つめ、満足気に微笑む。

沢山の人が読んでくれた。そのお礼となるような作品になったかは…読んでくれた人が決めることだろう。

せめて……沢山の人がこの話を読んで、胸を高鳴らせてくれた…と願いながら、その原稿を出版社に届けに行くのだった……。






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