終わりの始まり
最後になります。
短いですが…最後まで宜しくお願いします。
初めは……偽装だった。
〝不平等条約〟を消すため…女王を嫉妬させるための存在。
でも……色んな人に出会って、色んなことを乗り越えて……ジークフリートと結ばれた。
今だから言える。
私は…ジークフリートの妃で良かった、と。
*****
もう隠すことではないからとジークフリートに許可をもらい、フィルチェに二人の馴れ初めを話した。
その後、フィルチェがそれを元に本を書いたそうなのだが……。
「………王妃様……あたし、王妃様に言わなきゃいけないことがあるんだ……」
後宮の図書館で、アンナはフィルチェと話をしていた。
急に真面目な顔で話し始めた彼女にアンナは首を傾げる。
「どうしたの?」
「………王妃様に聞いた馴れ初めで書いた本…《悪女と呼ばれた王妃は安寧の夢を見る》って本なんだけど……」
「う…うん……随分と恥ずかしいタイトルね……」
それが自分を指しているとなると、アンナは恥ずかしそうに目を逸らした。
「…………………超、売れました」
「…………………え?」
「つ•ま•り‼︎だよっ⁉︎大ヒットしたんだよっ‼︎」
フィルチェは凄まじい喜びようでぴょんぴょん飛び跳ねる。
それを見たアンナは呆然とした後、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「おっ……おめでとう……‼︎」
「ありがとう‼︎でねでねっ⁉︎王妃様‼︎」
フィルチェはアンナの手を握り…ニコリと微笑む。
「本当はここで終わるはずだったんだけど……」
「うん」
「結果にしろ少しお休みするけれど……急遽、この物語は続くことになったんだ」
「………………え?」
アンナは呆然と口を開く。そんな彼女にフィルチェはニコニコと笑いながら、胸を張った。
「お休みする間は《銀翼館のメイド奮闘記》っていうお話を書こうと思うんだけど……それが終わったら、またこっちの話を書こうと思って」
「…………そ…そうなの…?」
「うん‼︎だ•か•ら〜また、お話聞かせてね⁉︎王妃様‼︎」
「……なっ…なんだろう……誰かの謀略の気配がする……」
アンナは顔を顰めながら、フィルチェの輝く笑顔に…頷くことしか出来なかった……。
*****
「前に言っていたあの司書が書いた本、かなり売れてるらしいな」
夜の二人きりの時間……ジークフリートがそう言って、本のページを捲った。
アンナは彼の肩に頭を預けながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「うん。本当はここで終わるはずだったんだけど…休みを挟んで、続きを書くことにしたんだって」
「じゃあ…俺達のイチャイチャがまた読めるって訳だ」
「やっ…止めてよっ……そう言われると恥ずかしいっ……‼︎」
真っ赤になりながら、上目遣いでジークフリートを睨む。彼は優しい笑顔でアンナの頬を撫でた。
「大丈夫だって。物語になろうがならなかろうが……俺達の仲の良さは、本なんかじゃ書き記しきれないから」
「………………馬鹿ジークっ…‼︎」
「愛してるよ、アンナ」
「…………うっ…」
ジークフリートが優しいキスをする。
アンナはこんな時間を過ごすことが…恥ずかしくも、嬉しくあって。
物語になったって……こんな幸せな時間は、他の人には伝えたくない。
二人は……互いに微笑みながら…もう一度、キスをするのだった………。
作品中にも書いたように…《悪女と呼ばれた王妃は安寧の夢を見る》は一度、終わりです。
次の作品…《銀翼館のメイド奮闘記》終了後、本作の再投稿を開始しようと思っています。
沢山の方に読んでいただきました。
沢山の評価をいただきました。
それのどれもが大変、嬉しかったです。
次の小説も読んでいただけると幸いです。
ありがとうございました




