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法王某略作戦•裏式











先進国とあるべきならば、近代的な法律は必要だ。

古きしきたりが悪いと言う訳ではないが…時代と共に我々も変わっていかなくてはいけない。

そうクラウスは思っていた。

故に、アンナに頼まれようと関係なしでクラウスは国王陛下ジークフリートの提案に首を縦に振るつもりだった。






では、何故…クラウスはあのような発狂たいどを見せたのか?











実のところ…アンナが原因という訳ではないのだ。











「…………………ジークフリート…」

法王の部屋で…クラウスとジークフリートは二人っきりで会っていた。

表向きは男女平等法の内容の討議となっているが…実際は違う。

「………なんだよ」

「………………今回の〝作戦・・〟…上手くいったようには思えないのですがっ…⁉︎」

クラウスは泣きそうな声で叫ぶ。それを見たジークフリートはケラケラと笑った。

「いや、いい感じだろ?これで…〝彼女・・〟もお前のこと、ちゃんと考えるんじゃねぇの?」

「でも、ボクが払った代償が大き過ぎますっ…‼︎」

「原案はお前だろ〜?」

「作戦内容はジークフリートじゃありませんかっ‼︎」

クラウスは顔を両手で覆いながら盛大な溜息を吐く。

ジークフリートはそれを見てニヤリと笑った。

「そ•も•そ•も。お前が俺の妃を〝利用・・しよう〟とするから悪い」

それを聞いた彼はガバッと顔を持ち上げる。

目の前には爽やかな笑顔の悪魔ジークフリート

ふるふると口を震わせながらクラウスは拳を握る。

「お前……アンナ〝を〟利用・・したからって…ワザとダメージが大きいやり方にしましたねっ……⁉︎」

「そうだけど?」

「悪びれもしないのですかっ‼︎この愛妻家悪魔っ‼︎いや、いっそ魔王‼︎」

「お褒めに預かり光栄だね」

法王某略作戦……表向きは法王〝を〟某略する作戦であるが…この作戦には裏がある。






それこそ法王某略作戦•裏式。






法王〝が〟某略する作戦なのだ。

「ううっ……これで彼女・・に嫌われたらどうするんですかっ……」

「お前…意識して欲しいから嫉妬させたいって言ったのはどこのどいつだよ。犠牲はつきものだぞ?」

「メリットよりデメリットの方が大きいって言ってるんですよっ‼︎絶対、病んでる人間だって思われてるじゃないですかっ‼︎」

「病んでるから心配、側にいたいってのも意識しているの一つだろ」

「それをあ•わ•れ•みっ‼︎と言うんですよっ‼︎」

クラウスはこの世の終わりレベルで涙する。

「いやいや…女とバレたらヤバイってリスクを覚悟で側にいてくれた女だろ?それぐらいじゃ離れねぇって」

「…………………」

「いい女だよなぁ」

今の話で分かったかもしれないが……クラウスには好きな人がいる。

それは勿論、アンナではない。

「……………………クリスティーナは…素晴らしい女性ですよ…」

クラウスの想い人……それは……ずっと側にいたクリスティーナだった。




アンナが死んだと聞かされて…クラウスが壊れた日。

確かに最初は死にたかった。

でも…クリスティーナはそんな自分クラウスを支えるように側にいてくれた。

昔は…アンナに一目惚れしたことで、世界が変わった。そして……その時の気持ちをクリスティーナに吐露した時……彼女クリスティーナの気持ちにも気づいた。






泣きそうな……嬉しそうな……苦しそうな顔。






ずっと教会に縛られ続けていた自分を思って…初めて人間らしい一面を見せたことを…嬉しくて……でも、それが他人アンナへの恋心だと知り悲しいと思っているだろう顔。

彼女が自分を好きだと気づくのは、それだけで充分だった。

それでも…クリスティーナの気持ちに気づきながら、自分はアンナを選んで。

あの頃は……彼女にとても酷いことをした。

それなのに、彼女だけは自分の側を離れなかった。

ずっと……ずっと一緒にいてくれた。

そんなクリスティーナがいたから、自分は立ち直れたのだし……そんな強くて優しい女性を好きにならないはずがない。

でも……クリスティーナはずっとアンナを好きだと思っていて。

もう好きじゃないと告げても、彼女は信じようとしなかった。

アンナがいた頃はクリスティーナの嫉妬が分かっていたが、アンナが死んだと思っていた時は……クリスティーナの気持ちがまだ自分にあるのか?と不安で仕方なかった。


だから……クリスティーナの気持ちを知るためにアンナがいたくれたら…と思った。


彼女に未練を抱いた。


実際に会えた時……神様の奇跡だと思えた。



これで…クリスティーナの想いを知れる、と。



だから、アンナを今も好きだと思わせるような態度を取った。


少しやり過ぎかと思ったが……仕方ない。



ジークフリートには、アンナと会った後…少しだけ二人の時間をもらい…そのことを伝えた。勿論、アンナを抱き締めたことも。

そして、彼が考えた作戦に乗ったのだが………。

「ボクは完全に病んでるヤバイ人間になっただけですよね……ふふふっ…」

クラウスは燃え尽きた笑みを浮かべる。

アンナに異常な執着を見せて、クリスティーナに嫉妬させる。

そして、彼女を側から離れられなくさせる…というのがジークフリートの作戦・・だったが……恋は盲目?だ。クリスティーナの想いが欲しいからと…何故、ジークフリートの言葉に乗ってしまったのか。

ジークフリートは大切なアンナを他の男に抱き締められてキレていたのに…何故、そんな彼の作戦・・に乗ってしまったのか。

…………………後悔が絶えない。

「まぁ、安心しろよ。ちゃんとあの女には効果あったみたいだから。悲しそうな顔してたぜ?」

「……いや…彼女にボクの気持ちを知ってもらわなきゃ無理ですよね…?」

「大丈夫だって。アフターサービス効かせてやるからさ」

「お前がそれを言いますかっ‼︎」

「俺がちゃぁんと作戦・・を立てない訳ないだろ?」

ニタニタと笑うジークフリートはパチンッと指を鳴らした。

ゴソゴソと物音がして、クラウスはなんだと思いながら、その物音の方に振り向く。

そして…ベッド下から出て来たのは……。

「クッ…クリスティーナっ⁉︎」

「…………………盗み聞き…失礼…しました…」

いつもの男装ではなく、令嬢のようにドレスを着て美しく着飾るクリスティーナだった。

クラウスは真っ赤になりながら何度も口を開閉させる。

「な?アフターサービスは充実♪後はお二人でどうぞ?」

ジークフリートはそう言うと部屋を出て行った。

残された部屋で二人の間に気不味い沈黙が流れる。

「……………」

「……………」

先に口を開いたのはクラウスだった。

「………………聞いてました…?」

「…………………………はい…」

それだけで今までの会話、自分の気持ちがバレてしまった。

そうとなれば、クラウスは覚悟を決めて溜息を吐く。

「クリスティーナ」

「…………………………はい…」

「ボクは法王です」

「…………はい…存じています」

「ですが、男として貴女を愛しています」

「…………………っ…‼︎」

クリスティーナの身体が震える。

泣きそうな顔で…彼女は顔を持ち上げた。

「……………あぁ…最初っから素直に言えば良かったです」

クラウスは彼女の顔を見て安堵するように言う。

そして…彼女の頬に手を添えた。

「……………貴女とは…結婚出来ないかもしれないけれど…」

「…………………はい…」






「今後、貴女だけを愛し抜くと神に誓います」






「………………………っ‼︎」

クリスティーナは口元に手を添えて言葉を失くす。

そして…彼女はとても綺麗な笑顔を浮かべた。






「………はい…わたくしも…貴方様を永遠に愛し抜きます」






その笑顔はとても綺麗で。

クラウスはそんな彼女を愛おしく思いながら…彼女に誓いの口づけを贈るのだった……。













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