6/2昼の美容室
宗兄と別れて見かけた美容室にはいる。
目指す髪型を考えると、散髪屋さんで問題ないと思うのに。
「こんにちはー。カットお願いしたいんですけどー?」
こじんまりした店内。柔らかいイエローベージュと濃い木目調主体だ。
席は二つ。待合っぽいところにソファーとマガジンラック。ヘアカタログや週刊誌。
「はーい」
奥から男の人の声が聞こえた。
出て来たのは、お父さんと同じ歳くらいそうなおじさんだった。
「あれ? 見かけない子だね? どのくらい切るのかな?」
「引越してきました」
「そっかー。よろしくね。おじさんはこの美容室シェーンのマスター長船章介だよ。あっという間にお望みの髪型に変身だ」
「山辺天音です。ヘアピンとかでも、留めることができないくらい短く切ってください」
「え?」
「おねがいします」
マスター長船は少し悩んでいたようだったけど、ニコリと笑ってくれた。
「まっかせなさーい」
「天音!」
カラカラと少し、乱暴にドアが開いて宗兄が入ってきた。
後ろに柊子さんも見える。
「お兄ちゃん?」
なにかあったんだろう。
「悪いけど、柊子さんに付き添ってもらってて。お兄ちゃんは出と鈴音を探しに行く」
それって。
「はぐれちゃったの?」
「ごめんなさい……」
まっず。
柊子さんが今にも泣きそうだ。
「カットが終わったら自転車選ばないとだから、柊子さんも手伝ってくださいね。マスター長船。騒がせてごめんなさい。カット、お願いします」
マスター長船に無理に頷いてもらって、髪を触ってもらいながら柊子さんをなだめる。
万が一にも飛び出されたらニ次遭難もいいところだ。邪魔臭い。
「おじさんが周りに声かけておこうか?」
んん〜判断が難しい。
「小学校ってわかりやすい場所にありますか?」
多分、はぐれたなら共通認識としてある目的地学校にとどまってると思う。
変に柊子さんを探そうとしてなければいいんだけど。
「うーん。そんなにわかりにくくはないと思うよ」
「なら大丈夫です。お兄ちゃんが行きましたから」
ざくり
髪を切る音が耳元に響く。
ざくり
何だかどんどん軽くなる。
そう、宗兄がいったんだから大丈夫。
「柊子さーん」
「うん」
あ。落ち込んでる。
「お昼、奢ってくださいね。美味しいオムライス」




