水着コン4
「カラスマント、ノワール。水分補給完了いたしました」
報告と共にピシッと敬礼するノワール。
「はい。ご苦労様~じゃあ返すわね」
進行権を返されたノワールは果穂が手を振りながら舞台裏に戻るのを見送る。
「では、美女の紹介を続けます。うろな高校の妖艶なる花。恵美さん」
「春は可憐な桜。出会いと別れ。夏は高く青い空にわく入道雲。どこまでも青く澄んだわれらがうろなの海。秋は紅葉。山は朱に染まる。冬は美しき雪景色。シンとすべてが覆われる」
少しは違うがどこかで聞いたような口上と共に薄いTシャツを脱ぎ捨て、黒のビキニ姿をさらす少女。
くっきりと描かれる谷間に、脱ぎ捨てるその動きに男達は魂を吸い取られる。
カラスマントが脱ぎ捨てられたTシャツを回収する。
「写真集うろなの四季より」
一冊の本を手ににこりと笑う恵美。
亜麻色の髪、藍色の瞳。あえて豊かな胸元を隠すように抱えられた写真集。
ーーーあの写真集になりたいーーー
「そんな写真集があったのか」
カラスマントが呟く。
「うろな町の写真家の人たちが数人集まって自費出版された本よ」
カラスマントに言い聞かすように恵美が笑う。
「ライフセーバーの皆様がこのうろなに来てくれるのは夏ですもの。もっとこの町を知ってほしくて」
観客席でうっとりと魂の抜ける吐息がそこかしこで聞こえる。
「商店街書店にて在庫僅かです」
ノワールが言葉を添える。
「ぜひ見てくださいね」
◇◇◇
「さて、今回の美少女たちは少し異色となります」
「うん? 異色?」
ノワールの言葉にカラスマントが首をかしげる。
「今まで以上に?」
おそらく素直な発言なのだろう。
「では、どうぞ」
カラスマントの疑問をスルーしてノワールが舞台端を指し示す。
「え? エスコートは?」
「桜咲 呉羽です」
肩にフリル飾りのある濃紺のワンピース水着。ワンピースと一体化しているパレオのような生地がひざ下までを覆う。
ひざ下までの生地から垣間見える太ももが眩しい。
恥らうように微笑を浮かべる。
「狐ノ派 静月だ」
水色のビキニにシャツを羽織ったボーイッシュ、(しかし少女らしさが損なわれてはいない)少女。
白銀の髪にスッと入ったメッシュが印象に残る。
「芝姫 凛です」
可憐な少女らしさを引き立てる甘いラインを描くコーラルピンクの水着はワンピースタイプ、スカートから伸びる足はしなやかで健康的だ。
「うむ。三人ともそれぞれの美しさがある」
カラスマントの言葉に少女たちは顔を見合わせて笑いあう。
ノワールもうんうんと頷く。
「しかし彼女らの心は一人の人にとらわれているのです」
「は?」
ノワールの言葉にカラスマントが間の抜けた声を上げる。
視線を向けられてこくりと頷くノワール。
カラスマントとしては今まで恋人とかいても普通にやってたのに?と言う思いがある。
『誰が一番か決めてください! 零音君!』
それぞれに色っぽいポーズで会場内にいるであろう男に向けてメッセージを放つ。
会場内の男衆はきょろきょろと周囲を見回し、一発ぼこってやりたいと言う表情を隠さない。
「決めてやれよーれおんくーん」
親切なやつなんかはそう声を上げる。
「青春だねぇ」『初々しいわぁ』会場内は批判と肯定でカオスだ。
まだ終わらない。




