7/21 堂島家訪問
「『森』の人?」
「はい?」
天音がきょとんとした感じで梅原先生の連れているおねぇさんを見て呟く。
そっとあーやおばさんが近づいてきてレインコートを天音に渡す。
何か小さく耳打ち。
キッと睨まれる。
うん。
夏用の服だから薄手で雨に透けてたんだ。うっすらだけど。
涼維が逃げたのもトラウマプラス、透けかけてるのに気がついたからだしね。
「山辺?」
わけのわからない単語を発した天音に梅原先生が声をかける。
正気に返ったらしく、梅原先生と白いおねぇさん、賀川さんの彼女だったかな? をきょときょとと見比べて、何かにはっと気がついた表情になる。
声は出ていないが、動いた形は『ヤバイ』。
ぺこりと頭を下げて
「ごめんなさい。さようなら!!」
走り出した。
周りがあっけにとられる。
「隆維お兄ちゃん、へたれ二号?」
芹香が不名誉なことを言う。
「失礼な。イラついてたみたいだから気分を変えてやろうと思っただけだ」
「マゾ?」
「清水先生とは違う。鎮兄、」
「お、荷物こっちによこせ」
荷物を鎮兄に渡し、傘を持った状況で天音を追いかける。
でも、どう評価されようと梅原先生をゲットした清水先生の手腕はすごいと思うし、参考に、すべきかなぁ。
ちょっとむかついたのもある。
何で涼維の前でかわいい格好して、かわいい仕草するんだか。
ただでさえ、俺より千秋兄や鎮兄に対しての方が愛想がいいし。
年上の方がいいのか?
年齢差はどうしようもないぞ!?
そんなことを考えながら走っているとようやく橋のそばで天音に追いついた。
というか、天音が止まっていた。
横には見かけない車。ナンバープレートも見かけないものだ。
「天音!」
あ。この車、若葉マークだ。
「ぉ。友達? 天音」
淡い色合いの髪、気さくに天音と呼ぶ兄ちゃん。
むかつく。
「一応」
「じゃあ乗る? 送っていくよ?」
乗せてもらって後悔した。
堂島の玄関でぐったり。
「大丈夫? 隆維」
「……吐きそう」
「志狼ちゃん、本気で免許ちゃんととれたの?」
「問題なく!」
「休んでて。三春んとこいって来るから」
「行く」
俺も行く。
さなえさんがお茶を出してくれる。
「お二人ともシャワー浴びて着替えなさい。風邪を引きますよ」
「隆維はこっちなー。服ぐらい貸してやるから安心しろー」
「あー。公じゃん。こっちもう来てたんだ」
「おう。夕べ遅くにねー」
「ところでさ、あの酔える安全運転は?」
まだ気もちわりぃ。
「ああ。三春叔父さんの弟。出の兄貴。俺達の叔父さん。ちなみに三春叔父さんと志狼おじさんはかーなーり仲が悪い」
「へ?」
「どんな毒が出てきても驚かないよーに」
シャワーを浴びたあと借りた甚平で食事に参加。
テーブルの一角は無言で怖かったとだけ言っとく。
「三春叔父さん、北おじさんに聞いたんだけど」
「ん?」
「そろそろアトリエのブツ整理するって」
ブツ?
「うん。そろそろ邪魔だからね」
「整理する前にまた気に入ったのあったらもらってイイ?」
三春兄ちゃんが首を傾げつつ。
「ああ。好きにしたらいいよ?」
「ありがとう!」
あ。笑顔がかわいい。
「困らせる奴とはつき合わせる気ないからな」
公志郎がぽつっと天音に届かない声で呟いた。
敷地にあるプレハブはなれ。
無造作に置かれた絵の数々。
「よくわからないけど、すごくねぇ?」
あ。西の山の栃の木だ。
お。こっちは旧水族館じゃん。
「あ。賀川さんの彼女だ」
「めったに人物絵は描かないけど、現実にいる人物を描いているんなら勝手にその絵を売るってなんかイヤだから回収」
「ぇ? 勝手にいいのか?」
「三春叔父さんは描きあがった絵に一切執着しないよ。知り合いの画商の人が買い取りにこなければ邪魔だからって捨てちゃう」
絵を調べって置き直しながら天音が疲れた息を吐く。
「欲しいのあったら持っていっても気がつかないと思うよ?」
「変わってるなって思ってたけど、北のおっさんも三春にーちゃんもマジ変わってる」
「そうかもね。あのおねーさんの連絡先知ってる?」
「知らない。三春にーちゃんが知ってる……期待できないのか?」
静かに頷く天音。
「んー。梅原先生か清水先生なら知ってる気がするから会ったら聞いとくよ。置き場に困るならウチで預かるし」
帰りに荷物を預かり、誰の策略か志狼にーちゃんの車で自宅まで送られた。
死ぬかと思った。
置き去り気味ですが雪姫ちゃん、梅原先生、清水先生借りてます




