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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
五月・六月
6/823

6/1 昼 『ビストロ流星』にて

お昼ですよ☆

 オムライス。

 確か堂島のおじさんが「うろなにはおいしい洋食屋がある」ってメールをくれてた気がする。

 履歴を確認して、間違いなかったらさなえさんに電話して場所を聞こう。

 駅から遠いならタクシーかな?


「君たち、どうしたの?」


 ?!


 インテリ系美人なおねーさんがしゃがんで妹に視線を合わせて尋ねている。


 上目遣い萌えっ

 


 あ。対応しなきゃ。

「えっ、えっと」

「オムライス食べたいの」

 長時間移動で疲れてるんだろう。泣きそうだ。後機嫌もかなり悪い。だからって知らない人にざっくりしすぎだよ。妹よ。

「えっと、妹がオムライスを食べたいって言うから、今さがしてて」

 メールの履歴を。

「オムライス……あっ、じゃあお姉さんがいいお店教えてあげようか」

 いい、のかな?


 地元の人のお薦めならいいかも?


 やさしいおねーさんは振り返ると連れのおじさんに何か確認を取っていた。

 いい女にはもう相手がいるんだなー。

 穏やかそうなおじさんだし、カップルか、夫婦かな?

「じゃあそのへんだから行こっか」

「うんっ」

 妹がうれしそうに頷く。頭の中はオムライス一色なんだろう。

 はっ。

 お礼を言わなくては……

「あ、ありがとうございます」

 気分的にあわてたからどもったよ。へこむー。

 って、妹を捕獲。



 お店は妹にはまず一人で行っちゃいけませんって言いたくなる様な所にあった。

 お店の名前は『流星』

 あれ?

 堂島のおじさんお薦めの店?


 おねーさんが店の奥に声をかけると「いらっしゃい」と雰囲気のいい若い店主が出てきた。

「オムライスを食べさせたいんですけど、おいしいのってできますか?」

 おねーさんがかっこよく挑発する。いいなーまじタイプだなー。

「このビストロ『流星』を舐めてもらっては困りますねー。おまかせくださいませ」

 店主が向こうに行きそうだったのであわてて言葉を添えておく。

「すみません、加熱トマトがダメなんです」

 かっこよく去るトコ邪魔してごめんなさいって気分だ。

 店主のお兄さんはこっちを振り返ってにっこり。


「おまかせください」

 うわぁ。なんか超安心?

 妹よ不満そうに見るな。おいしく食べれるのは二匙目までだろうが。

「アレルギー?」

 っておねーさんに聞かれたので頷く。

 トマトソースは妹の好物だが食べると確実に気分が悪くなるという爆弾がついている。

 昔半日かけて一皿のハッシュドビーフを完食したのを知った時は呆れを通り越して感心させられたものである。

「さぁここに座って」

 テーブル席に促される。

 座るとやっぱり疲れてたのか、すっと力が抜ける。

 おねーさんとだんなさんが並んでるのを見るといい感じだなーって思う。


 妹もそう思ったようだった。

「おじさんとおばさんは恋人同士なの?」

 最近の中学生はダイレクトだなおい。後で説教だ。

「おばっ?!」

 あーやっぱりおねーさんショック受けてる。

 女の人には微妙地雷になるんだよなー。

「お、お姉さんとこの人はそんな関係じゃないわよー」

 あれ? フリー?

 でかした妹。

「じゃあどんな関係?」

 よし! もっといけ!

「この人、実は町長さんなんだよー」



 え!?



「え?!」


 オムライスを持ってきてくれた店主のお兄さんが心境を代弁してくれた。

 いや、驚くよ。

 ぁ、妹よ。オムライスを前にうっとりしすぎだろう?

 静かに手を合わせて一礼。

 あ、おねーさん秋原さんって言うんだ。大人三人で会話をしてる。

 スプーンを握り、オムライスをにらみつける。

 どこにスプーン差すか悩んでるんだろうなー。

 とりあえず、町長だからって付き合っていない。そういう関係じゃないってことにはならないと思うんだけど、なんだろう?

 店主のお兄さんともイイ雰囲気?

 あ、結局真ん中からいくのか。

 卵の黄色、ホワイトソースの白、添えられた人参のグラッセの赤。

 見惚れる気持ちもわかるなぁ。

 そっとスプーンを銜える。

 目がパッチリと開く。

 スプーンを出しておとなしく咀嚼嚥下まで。

 そして一呼吸。


「おいしー!!」


 はい。お行儀はよかったです。

 そんな妹を見て町長さんたち大人三人は優しい笑顔になる。


 ああ。きっとこの町は優しいいい町なんだろうな。


 上に立つ人の、町の店主のふれあった人はまだ少ないけれど。


 そう思った。


 秋原さんタイプだし!(超重要)


 支払い時にもめたし、別れ際に名乗って告ったけど本気にされてないだろうな。


山辺宗一郎やまのそういちろうと言います。今日はありがとうございました。兄妹でうろなに越してきたんですけど、どこに行けば秋原さんに会えますか?」

「町長秘書だから町役場かな」

 町長さんがさらっと教えてくれた。

 そっか秘書さんなんだー。

 秋原さんはわけがわからないって表情をしていた。そそる。

「ありがとうございます」

 町長さんにお礼を言う。

「確かにまだ高1ですが、秋原さんがものすごくタイプです。もし、年下がダメでなければお付き合い、考えてください」





 絶句された。





 よし、まだ続けられる。



「絶対ダメじゃなければ、時々会いに行っていいですか? もっと秋原さんのことが知りたいです」



 そう、町長さんに昼からの仕事があったので答えを聞くことなく別れたのだ。

 オムライスを満喫した妹がなぜか不機嫌だった。

 その後は大通りに出てタクシーを呼んで堂島のうちまで楽をして行った。いや、帰った。


 これからのうろな町での生活。楽しいものになりそうだった。


町長さんと秋原さんに『流星』に連れて行ってもらいました!

学校になれたら町役場に出没しそうですよこいつ。特に夏休み。

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