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7/8 朝。回想

砂浜で子供が泣いている。


「シズ。暗いから帰るぞ」

小さな子供を抱いた男が声を掛ける。

「シズじゃないもん。千秋だもん」

子供が反論し、男が苦笑を漏らす。

「帰りたい?」

「大阪の方がばあちゃんいるし、さーやママもちょこちょこ帰ってくるじゃん。ばあちゃんいないし、さーやママ一回来ただけでうろなに来ないじゃん」

「でも、うろなはいいとこだぞ。海もきれいだし、山や森もあっていっぱい遊べる。友達も作らないとな」

「シズと千秋。隆維涼維がいれば十分だよ。友達なんてできるなんて思えないから!!」

子供は立ち上がって大きな声で不満をぶつける。


抱かれていた子供がぐずりはじめる。


「嫌い! こんな町大っ嫌いだ!!」


「ま、まて! しずめ! 波際を走るな!」

走り出す少年。したうちする男。泣き出す子供。いや幼児。




「あのあと、どうなったんだっけ?」


「①波に浚われあわやというところを海の妖怪に救われる」

「もしくはあみ姉ちゃんに拾われる。その後大泣き」

「②巡回のおまわりさんに補導されてうちの父さん注意されて恥ずかしい?」

「③漁師のおっちゃんに止められて注意。もちろん、大泣き」

「④若き日の天狗仮面にたしなめられ大泣き」


「待て、隆維、涼維。どれを選んでも黒歴史だが、全部に大泣きがついてるのは何でだ?」

「大泣きしたのはホントだからだろ?」

千秋が突っ込む。

むぅ。

「覚えてない」

「僕も大泣きしたことがあるって言うのしか覚えてないよ。別件でおじさんに拳骨とかもらってたからなー」

ああ。あれか。

「うろなの神社仏閣回って願掛け。だっけ?」

「山犬寺とか澄玉神社とかねーまわった。まわった」

「千秋兄。何で願掛けで拳骨?」

涼維が不思議そうに訊ねてくる。

まぁ普通そうか?


「『さーやママの仕事がはやく失敗して一緒に過ごせるようになりますように』仕事で帰ってこれないなら仕事がなくなれば帰ってくるだろ?」

うん。

それをきいた時、「なんてナイスアイディア。ちあきすげぇ」って思ったんだけど、おじさんは怒ったっポイ。

あ。

隆維と涼維がひいてる。


「神様によくないお願いしちゃダメなんだよ」

セリがハムエッグを食べながら言う。

「そう、そう怒られた。罰代わりに仕事がうまくいって帰ってこなくなるかもな。って伯父さんに言われた」

「そして、さーやおばさんはカードだけの人になったんだね」

「バレンタインカードとかクリスマスカードとかバースディカードとか、年賀状とかくれるよね」



ちびども!



「おばさんってなにしてるの?」


「さぁ? 向いてないから脱落したら帰ってくるだろっておじさんは言ってたけどな」

「それから6年?」


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