2/14 バレンタイン3
夜の部。
中学時代日生の双子は年齢の割に大人っぽかった。
そして自然な動きで女子に優しい。
つまり、それなりにもててた。
弟の方はラブレターをもらって、にっこり笑って「夏のコンテスト参加? 嬉しいな」と断り、兄の方は応答なしだったよねぇ。バレンタインも同様で。という話をミホにすると微妙な表情になった。
「シズちゃん宛はねぇ。シズちゃんまず見てないからなぁ」
「興味なくて?」
「ううん。手にする前に千秋と健で隠蔽かなぁ」
「え?」
なぜこんな話題になったかというと、日生さんがここにいるからだ。
「ぜひ聞きたい。ちーちゃんとしーちゃんのうろな生活!」
「任せて! 編入してきたその日からの付き合いよ!」
妙なところで張り合う二人だ。
まずミホが(ミホって呼ばなきゃ返事しないって強要された)当初のことを語る。
というか、外人呼びに実の親(当時あの家の大人は下の双子のお父さんだけだった)と住んでないことをつついたり、常識の差異を鼻で笑ったり、体操着や筆箱隠したりはイジメだから!
反応がほとんど返ってこないからついエスカレートしたとケロリと悪びれることなく言う。
ひどい……。
「シズちゃん、弟のこと以外だと基本スルーだからムカついてさー。ほらァ、取るに足らない。ってバカにされてる気分になってつい熱くなっちゃったんだよねー」
「隆維達の方がそういう立ち回りはうまそうだけどなー」
「うん。それはそうだったよ。千秋は健と喧嘩友達になってたし。今は結構大人しいけどねー。中学からだよ? 大人しくなったの。元々、猫かぶるのは上手だったけどねー」
さらりと身内なはずの日生さんも流す。
ふと、僕を見て困ったように笑う。
「こーゆー話苦手? ミホがやったくらいならマァ軽いもんだし、あの二人が歯牙にも掛けない程度だったみたいだし、大丈夫だよ?」
「え? るぅちゃん苦手だった? ごめーん」
「遠巻きに接してこられるより、ちーちゃんにはわかりやすかったろうし、しーちゃんは多分、一生、いじめられてたことに気がつかないと思う」
「え?」
「周りがいじめって見做しても当事者たちにとって違う事もあるんだよねぇ。どっちかって言うと気付いてもらえないミホがいじめられてるんじゃとかも思っちゃう」
くるりとミホが悲しげなポーズを作るが長続きはしない。ミホはどこまでも軽く、日生さんもさらりと流す。日生さんはさらさら流しすぎだと思うの。
「ミホは間違いなくいじめっ子だったと思うよ。つまり、中学から二人ともイメチェンしたんだ?」
決め付けつつ、会話の続きを促す。
ミホも引っ掛かりなどないとばかりに会話を続ける。
もう少し、引っかかろうよ! 疑問を持とうよ! ミホ。
「そうだよー。千秋ったらほとんど商店街の友達とばっか過ごしてさー。つまんないったら。でも、健と組んでシズちゃんにラブレターとかは気づかせなかったなー。もらってたかどうかは知らないけどね」
「ふぅん」
「ミホももちろん、協力したしね!」
ミホ、そこ自慢するトコじゃないから!
「よーしできたー」
ミホが嬉しげにラッピングされた箱を掲げる。
クラスの男性諸君と男性職員への女子よりのバレンタインチョコだ。
男子の反応は二つに分かれる。
嬉しげなモノといやそうなものだ。
そしてミホが言い放つ。
「最低三倍返しでよろしく!!」
「そんなチョコいらんわ!」
うん。そうだよね。
「頑張るねー。きゃほー。女子高生からチョコもらったー♪」
ああ。嬉しそうだよね。
「あ、僕はお返しとかいいから……」
ぽつっというと、ミホに後ろから抱きつかれる。
「抜け駆けは、ダメだぞ」
吉川さんもにっこりとミホを肯定した。
「受け取り拒否は不可ですからねぇ」
うふふと笑う吉川さんが津田さんを誘って中身のチョコを選んで買ってきたのだ。(予算はみんなで出し合った)
だからなのか、拒否るという広前君を見るオーラが黒い気がして怖い。
広前君以外はチョコを嬉しげに、もしくは神妙に受け取った。
バレンタインってこんな儀式だった?
『ユーザーネームを入力して下さい。』よりちらりと津田舞さんお借りしました。




