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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
402/823

2/14 バレンタイン

悪戯仕込み♪

 こっそりとチョコの包みを忍ばせる。

 桃色の花柄の包装紙に赤いリボン。

 千鶴に頼んで合田先輩の机の中へ。

 稲荷山先輩のチョコの包みは赤と白のチェック。リボンは深いグリーン。

 千秋兄が選んだ包装紙はそれぞれカラーが違うし、あえてリボンを歪ませて結んでいたりと細かい。

 因みに中のチョコは市販品のネタチョコだ。

 合格チョコや、恋薬チョコ。木下先生には可愛らしく蛸壺チョコをチョイス。マゾ清水用のものは梅酒チョコ。メッセージカードは『あなたに幸運がありますように』

 因みによく分かってなさそうなバート・ままに書いてもらったのとさーやおばさんに書いてもらった二種類。

 先生方に仕込むのは難しいので、ココはそっと高橋先生(はっしー)に協力を仰いだ。

 はっしーにはちゃんと手作りチョコクッキー渡したよ?

 早朝に稲荷山先輩のクラスに忍び込んだついでに逆チョコを芦屋先輩の机に仕込むのも忘れない。

 直接渡すのはすこーし照れくさい。

 するりと抜け出し涼維の教室に戻る。

 いつものように天音にせびるが貰えない。

 放課後に期待かなー?

 メグにも「いつもありがとー友チョコー」って渡すと微妙な表情で、それでも受け取ってくれた。

 「ハグもいく?」って聞くと「それはいらない」と断られた。


 つれない!


 そして、メグは天音から「いつもご苦労様」と、労りチョコを貰っていた。


 ずりぃ!


 いたずらは仕掛けたけれど、あえてその後の確認はしない。

 他からも貰っていたとしたらたいした影響もない悪戯程度だし、萌ちゃんは合田先輩が他からもらったチョコくらい気にしなさそうだし。

 期待すべきは稲荷山先輩。

 ここだけは展開を見守りたかった気もする。

 あの不幸属性は見てて面白い。

 帰り道想像して笑う俺に涼維が怪訝そうに覗き込んでくる。

「仕込みがうまく働くといいよな」

 うまくいけばいいと思う。でも、軽く悪戯も仕掛けたい。

「あーくーしゅーみー」

「えー。仕込める悪戯なんて限られてんだぜー。あー、そういえば、他からお前はチョコもらえた?」

「クラスの女子からクラスの男子へって言うのをもらった」

「えー。いいなぁー。おっきい意味では天音から貰ってんじゃん。ずりぃ」

「それは理不尽だ!!」

 言い合いながら帰る。

 見覚えのある人影。

 美丘みおか愛菜まな

 天音と同じように周囲に壁を作る少女。

 気にならないわけじゃない。

 それでも俺の中にも優先順位があって。

 家族に害がありそうな美丘に手を差し伸べられない。

 選ばなければならないなら家族を選ぶ。

 選べないのならはじめから切り捨てる。

 本当に守りたいもの。

 この手でつかめるものは限られているから。


 すれ違う。


 そこにいるのはどうしていいのかわからなくなった迷いのある子供。


 ぎゅっと涼維に手を握られる。


 見えた全部に手を差し伸べるのは不可能で、鎮兄が迷うし、千秋兄がイラつく。


 振り返りたい。

 気になるから。


「愛菜! 誰かにチョコあげたの? 暇ならうち来る? 旧水族館は入場料百円。税込みよ!」

 芹香の声に笑いそうだ。

 それでも聞こえない振りをして歩みを進める。

 どんなチョコがもらえるか、ホワイトデーの返しをどうするかと涼維と話込むので夢中なふうを装って。

 呆れた、困ったような涼維の表情に苦笑を返す。

 だってやっぱり、気になるんだよ。

「ウチにいたら、鎮兄と空ねぇにちょっかいはかけられないだろ?」

 小声で囁き、ふと思い浮かんだことを口にしてみる。

「賀川のにーちゃん、ホワイトデーのお返しくれると思う?」

「雪姫さんに? そりゃするんじゃないの? 手渡してくれたの雪姫さんだもんね」


『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 』より

合田君・鹿島萌ちゃん清水先生・木下先生・高橋先生を

芦屋先輩・稲荷山先輩を『人間どもに不幸を!』から

豊栄巡君を『うろな町のうろんな人びと』より

青空空ちゃんを『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より

雪姫ちゃん賀川さんを『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』から話題等でお借りしております

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