僕は僕。だけど
11/30 相手を知る一歩の続きっぽい。
宗一郎 (シアン)の思考。
そう。
僕もシアンもノワールもイベント時に基本使ってた名前レニーだって結局は僕だ。
わかってはいる。
心配そうに見てくる先輩はこのポイントに気がついているだろうか?
僕が反応してしまったポイント。
僕は役に入る時、完璧を求めたい。
より精度、完成度の高さを。
作り上げたいのは別の自分。
大叔父に連れて行ってもらったコスプレイベント。
魔女っ子コスは気持ち恥ずかしかったけど、凝った衣装と決め台詞とポーズでみんなが褒めてくれた。
そこにいるのは知らない人たち。
僕の名前なんか知らない人たち。
それでも人が楽しそうにしてくれるのは嬉しかった。
僕にもできるという発見がすごく嬉しかった。
『レニー』にはできるけど、『僕』にはできなかった。
できるかなと思ったけど、うまくいかなくて動けなくなるばかりで。
兄さんに慰められる。
『何もできなくていいんだよ』
『僕』にはそんな兄の言葉は跳ね返せない。
でも、ノワールなら気にしないだろう。
シアンなら笑い飛ばすだろう。
レニーなら、どうするだろう?
そう考える僕がいる。
『別』なのだ。
僕であって僕ではないのだ。
僕がなりたくてなれない。
一歩進めぬ理想のひとつなんだ。
だから、わかっていても認めたくはないんだ。
認めてしまえば、すべてが崩れそうで。
動けなくなりそうで竦む。
『僕』は、うまく進むことなんかできないのだから。
だからね、先輩、僕は先輩の捉えてる角度の違いを指摘しません。
気がつかないでください。
見ないでください。
もう少し、僕が僕として演じるものが本物になるまで。
ここは知らない町。
いるのは、知らない人たち。
何もできず、立ち止まっているばかりの僕はいない場所。
だからこそ理想を映すのがノワールであり、シアンならば、もっと彼らを知り彼らに近づきたいんだと思う。
「そういっちゃんはさ、そういっちゃんなんだからそういっちゃんのままでいいんだと思うぞ?」
白い手袋に包まれた手がシアンの伏せ気味の猫耳についているスティック状の飾りをいじる。
「むりに酷く振舞う必要なんかないんだからさ」
「無理なんかしてないですー」
そう、少し忘れてただけだから。
ココでは僕がどれを演じても僕であるということが理解されている。
それが意味するポイントを少し、忘れてただけだから。
大丈夫。
進めない、動けない僕は僕にいらない。




